アメリカにおけるインターネット小売業、リテールベーカリーの取り組み - 海外情報(27) / - ブランスリー電子版


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海外情報/2003年4月号

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アメリカにおけるインターネット小売業、リテールベーカリーの取り組み - 海外情報(27)


高橋秀尚 株式会社パンワールド代表取締役、海外情報研究会主宰

情報競争を先んずるもの世界を制す
アメリカの小売業におけるIT化の波は予想以上に国民生活の中に広がっている。日本においても同様で、総人口の54%にあたる6942万人が何らかの目的でインターネットを利用していることが先日ニュースとして報道された。その目的は情報入手に加えてe‐コマースと呼ばれるインターネット経由の物品売買であろう。アメリカにおいても小売業界におけるIT革命は急速に進歩し、販売促進、物流コスト軽減など、あらゆる用途に使われている。その代表例は世界最大の小売業Wal・Mart(ウォルマート)社であると言われている。この会社のCEO(会長職と訳されるが実質的に社長)は毎日マイカーを自分で運転して出社するというエピソードに代表されるほど余計な出費を抑えることをモットーとするケチな会社という印象を与える。筆者が日頃付き合っている同社の幹部連中も社用で出張するときはエコノミー級の飛行機で移動し、宿泊はモーテルという具合である。
ところがIT化に使う金額は他社を抜いて膨大なもので、一説によれば彼らの情報処理能力はアメリカの国防省にも匹敵するという。アメリカでも田舎と思われるアーカンソー州の地方都市ベントンビルに本社を置くこの企業の二面性を知る一例としてご紹介したが、今の世の中で情報競争を先んずるもの世界を制すというのが今回の話しのテーマである。

米リテール、ネット利用まだ少ないが…
さてアメリカにおいても大企業は別として、ロードサイド・ストアと呼ばれる個人経営に近いリテールベーカリーにおいては、インターネットの利用度はどの程度なのだろうか? 実はアメリカのリテールベーカリーのオーナーを主力会員とする団体であるRBAもこのような調査をしたことはない。そこで3月の初めにインターネット網を通じて「情報収集、販売促進、商品のネット販売をしている店、企業の実態調査」なるものを実施することになった。筆者もRBAのインターネット部メンバーであるから、その調査結果を知ることができたので、読者にお知らせしたい。
RBAに加入しているリテールベーカリーという限定条件はあるものの、その普及率は極めて低く、おそらく5%前後かと思われる。しかしながら、スーパーマーケット業界におけるインターネット販売の普及率は日ごとに増加しており、伸び率は目覚しい。おそらくリテールの経営者はその必要性を認識しているものの、スタートさせることの億劫さ、費用の捻出、そして何より発想の転換に抵抗を感じているのではなかろうか? これは日本でも同じことが言えるのではないかと思う。
アメリカにもリテールベーカリー用のインターネットを立ち上げる事をビジネスとする会社があり、業界紙などで宣伝している。また展示会にも出展していて、展示には人だかりもできているので、リテールベーカーの関心度も高いと思われる。今なお普及途上にあり、数年後にはかなりの増加が期待されよう。



ライフスタイルを変えるインターネット、目的はあくまで販売促進

ライフスタイルの変化とインターネット
ところでインターネットの登場と普及は時代の技術革新があってこそ実現したのだろうが、同時に消費者の生活スタイルの変化も見逃せない。その裏づけとなる資料を入手したので、概要をご紹介しよう。インターネット経由の小売業態をアメリカでは別名e―コマースと呼ぶが、その実態を消費者のさまざまなライフスタイルを視野に入れて調査をしているのが注目される。(以下ecと略)。
ます、ecを利用する理由であるが…。
○特定の(自分が好きな)商品が選べる…………………54%
○各社から発売されている商品の特性、価格などが比較できる……………………22%
○店舗に出かけることなく商品を見つけるための手段として………………………11%
○自分中心で主体性を持って買い物ができる…………8%
○オークションで買い物ができる………………………5%
という結果が出ている。
換言すれば消費者が主体となって商品選択ができるという利点を買われたということであろう。ただし実際に筆者がアメリカに出かけて知人にecを利用する理由を聞いた結果では「店舗における通常の買い物では州税(5~15%)がかかるが、ほとんどのecでは不要」、「夜間に買い物に出かけるのは治安が悪いので怖い」という返事まであった。この州税不要というのも最近は課税の動きがあるので今後どうなるのか不明ではある。しかしながら夜間外出が怖いというのはいかにもアメリカらしい。ちなみに夜間にスーパーマーケットに出かけると拳銃を持った警備員がいて驚かされる。

インターネットの目的はさまざま
さて小売業サイドから見たインターネットの利用目的は何であろうか?(複数回答)
○e‐メール……………93%
○市場調査……………73%
○顧客サービス…………68%
○社員教育……………57%
○情報管理……………52%
○商品販売……………50%
○発注管理……………37%
○他社のホームページ検索……………………………35%
○労務管理……………33%
○商品配送管理………27%
この調査結果からインターネットは幅広い目的のために使われていることがわかる。
さてアメリカの消費者のインターネット普及率は58%、また仕事で毎日利用しているワークフォース(勤労者)は51%に及ぶ。さらに家庭のみでの使用は65%、仕事のみで10%、両方では25%だ。1年前の同じ調査と比較すると家庭および仕事のための使用率が増えているのが注目される。
さらに1日の時間帯ごとのインターネット利用率は次の通り。
○自宅で
7~10時………………22%
10~12時……………14%
12~14時……………14%
14~17時……………27%
17~22時……………15%
22~24時………………8%
○勤務先で
7~10時………………16%
10~12時……………15%
12~14時……………15%
14~17時……………21%
17~22時……………12%
22~24時……………21%
この結果から想像できるのは、自宅で家事仕事が一段落した主婦が暇を見つけてインターネットを利用してショッピングをするシーンであるが、勤務先での利用時間帯は予想したものと異なるものであった。

インターネットは生活をどう変えたか?
さて最も注目されるのは次の調査結果である。
設問「自分が買いたいと思う商品の情報で最も確実な入手方法は何か?」
○インターネットで調べる………………………………35%
○新聞で調べる…………25%
○特定の雑誌で調べる…21%
○ラジオ放送を聞く…12%
○テレビを見る…………7%
インターネットに対する信頼度が高いのが注目される一方で、日本でも最近お馴染みになったテレビの通販に対する信頼度が低いのが意外であった。
ついでに「インターネット普及が自分の生活にどのように影響しているか?」という設問に対する回答結果は次の通り(複数回答)。
○生活全般に対する何らかの変化……………………73%
○仕事中に外出しなくてもインターネットで用事が足せる…………………………36%
○電話をかける回数が減った…………………………29%
○雑誌を読む回数が減った……………………………25%
○新聞を読む回数が減った……………………………25%
○本を読む回数が減った………………………………24%
○会社の仲間と過ごす時間が減った…………………20%
(注)帰宅時間が早くなったという意味か?
○テレビを見る時間が減った…………………………18%
○ラジオを聞く時間が減った…………………………15%
○休憩、昼食時間が減った……………………………1%
おそらくこの調査の対象になったのは事務職の独身男性というようなイメージを持つが、いかにもインターネット中心の生活をしている様子が伺える。またアメリカのみならず日本でも同じ調査結果が出るのではないかと思うと極めて興味が持たれる。

スーパーが忙しい日はネットショッピング少ない
さてecに話題を戻すが、インターネット利用での買い物は家庭でか、職場でか? 答えは家庭(在宅時)でが36%、職場でが60%、その他が4%。時間帯は7~10時が21%、10~12時が32%、12~14時が12%、14~17時が14%、17~22時が8%、22~24時が13%。ピーク時間帯は午前11時前後である。
また曜日別の利用率は次の通り(多い順に)。
○水曜日………………19%
○火曜日………………18%
○木曜日………………16%
○金曜日………………15%
○月曜日………………15%
○土曜日………………10%
○日曜日………………7%
この資料で奇妙なことに気がついた。インターネットでの買い物とスーパーマーケットに出かけて買い物をする曜日がほぼ反比例しているのである。つまりSMの来店客が最も少ない曜日である火、水、木曜日にはecの買い物率が高いのだ。反対にSMが忙しい週末にはecショッピング率は低い。これは新発見だが日本でもecが普及する傾向にあるとすれば小売店での販促計画もこのデータは参考になるだろう。
さてec利用者の性別構成は男性が56%、女性が44%。年齢別比率は次の通り。
○18~24歳…………11%
○25~34歳…………24%
○35~44歳…………30%
○45~54歳…………26%
○55~64歳……………8%
○65歳以上……………1%
つまりecの最多ユーザーは35~44歳層で、おそらく十分な収入があり商品購買意欲が高い、いわばecの最も重要な顧客層であることが窺い知れる。
これは商品開発・販売促進を考える上で参考になろう。

リテールベーカリーのホームページ
それで文頭で触れたアメリカのリテールベーカリーにおけるインターネットの導入例を実際の画面でご紹介したい。実は筆者の求めに応じてリテールのオーナーが送ってくれた約30のアドレスを開いてみたが、正直な感想として例えば食品メーカーやSMチェーンのそれと比較すると総じて垢抜けしていない、素人っぽい、という印象を持った。
その反面で彼らの正直さ、真面目さが伝わってくる思いがした。
適度の色気と資料・説明がミックスされて、読んでいて楽しく購買意欲が沸いてくるページもあった。
まとめとしてリテールベーカリーのecを念頭に置いたインターネットの必須条件をまとめておこう。
(1)目的はあくまで販売促進。店頭販売にせよ、通信販売にせよ、目標はひたすら販促である。
(2)常に新しい資料、情報にリバイスする。特に商品価格、在庫の有無、店舗所在地案内などに誤り、古いものがあってはならない。
(3)文字、色合い、デザインは見やすく、美しく、魅力的に。店の顔とも言えるのだから適度なセンスが求められる。
(4)もし商品の写真を入れるのであれば、適度に大きいサイズにする。
(5)また写真の色合いはベーカリー商品の命であるので、特に茶色系には注意。適度なタイミングでの内容・画面の更新、入れ替えが必要。常に季節感、イベント性、躍動感を取り入れよう。


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