日本のフランス流 - ポール - ブランスリー電子版


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お店拝見/2003年4月号

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日本のフランス流 - ポール

一昨年12月に日本に上陸したポール。およそ1年4カ月経った現在の店舗数は7店。上陸当初に比べて、売れ筋も変化してきた。「限られた食通の人たちだけではなく、より多くの人に親しんでもらおうと、試行錯誤を繰り返している。フランス流を貫きつつ、いかにして日本の食習慣と融合させるのか・・・。その秘策は?

住所 東京都千代田区丸の内1-11パシフィックセンチュリープレイス丸の内
電話 03-5208-8418
営業時間 午前8時~午後10時
定休日 無休



老舗ポールを日本で展開。フランスの食スタイルを提案

PUALといえば、「フルート・アンシェンヌ」


黒ケシの実をまぶして焼き上げた「フルート・パヴォ」。


フルート・アンシェンヌに生ハム、トマトなどをはさんだ「ジャンボンクリュ」(300円)
「日本には日本の食習慣がある。フランスの味をそのままの形で日本に伝えると同時に、ゆくゆくは日本からフランスに向けて発信できるパンも開発したい」
フランスの有名ベーカリー、PAUL(ポール)を日本でFC展開するレアールパスコベーカリーズの吉田博明PAUL事業本部営業部長はこう話す。
PAULは、1889年、フランス北部の町リールで創業した老舗。19世紀の原点に立ち返って、「カン・レミ種」と呼ばれるやわらかな冬小麦を契約栽培し、独自の小麦粉を開発、伝統的な製法で作るパンの独特のもちもち感などが人気を集め、最近の10年間で急成長した。現在ではフランスで250店以上を展開するほか、スペイン、オランダなどでも店舗展開している。
PAULの日本での1号店である八重洲店。商業施設とオフィスの複合高層ビル、Pacific Century Place Maruniuchi1階にあり、ダークでシックな外装が印象的。内装もテラコッタのタイルやレンガなどを使い、ヨーロッパの伝統と懐かしさを演出している。天井が高くゆったりとした空間。入店して右側がテイクアウトのコーナー。左側がサロン・ド・テだ。
テイクアウトのコーナーには、バゲットのフルート・アンシェンヌ(200円)、黒ケシの実をまぶして焼き上げた「フルート・パヴォ」(250円)、グリーンレーズンやカレンツなど4種類のレーズンを練り込んだ「アンシェン・ポール4レザン」(ホール450円、ハーフカット225円)、6種類の穀物と3種類の種子を練り込んだ「パン・オ・6セレア・ロン」(ホール350円、ハーフカット175円)などのハースブレッドが所狭しと並んでいる。
「フランスでも独特の存在のポールの特徴あるパンを、そのままの形で日本の消費者に提案し、普及させるのが第一の目標です」と吉田部長はいう。さらに「お客様がPAULのパンを家に持って返ったときにどうやって食べてもらうかが問題です」。
併設されたサロン・ド・テは、ポールのパンの食べ方を提案するひとつの手段だ。チーズ入りオムレツの「オムレットフロマージュ」(850円)やチーズ、しめじ、ハムなどが入った「オムレットコンプレ」(900円)などの軽食をPAULのパンと共に供し、フランスの食スタイルを提案している。
フルート・アンシェンヌなどに生ハムなどをはさんだテイクアウトのサンドイッチ類も、PAULのパンに親しんでもらうための有効な手段だ。昼の時間帯には特によく売れ、人気を集めている。



ヴィエノワズリーの強化目指す。普通の人たちに食べてほしい

19世紀のフランスを感じさせるPAUL八重洲店の店内


人気のクロワッサン


パイ生地の上にりんごをトッピングして焼き上げた「アングレーズ・ポンム」
1号店である八重洲店のオープンは2001年12月。当初は目新しさも手伝って、ハースブレッドの売れ行きが好調だった。しかし、売れ筋は徐々にヴィエノワズリー系にシフトしてきているという。
吉田部長は「フランスでは、PAULのパンの7割はハード系です。パンが主食の国ですから。しかし、日本の食習慣はフランスとは違います」ともいう。
ひとつの方法論として、ヴィエノワズリー類のバラエティーを強化することを視野に入れているという。
「フランスでは、甘いパンの需要があまりないので、種類も少ないようです」(吉田部長)。
日本の菓子パンを導入するというのではない。「フランス人にも受け入れてもらえる、日本生まれのヴィエノワズリー」を作り出したいというのだ。
「一部の食通の人たちだけではなく、もっと普通の人たちにも食べてほしい」との強い思いもある。「間口を広げないと」と吉田さんは何回も口にした。ヴィエノワズリー類の強化は、フランス流を貫きつつも、幅広い属性の人たちから支持を得るための、有力な選択肢のひとつとして浮上しているのだ。
PAULは、八重洲店、六本木店、四谷店、東京駅名店街店など現在日本に7店舗ある。敷島製パンの子会社のレアールパスコベーカリーズ(本社=東京・目黒区)が、フランチャイジーの形で展開している。
小麦粉をはじめ主要な原料はフランスから輸入、その他の材料もフランス本国で使用しているものとほぼ同じものを使用。ハース系のパンは、各店の厨房で、スクラッチ製法で作る。クロワッサンやデニッシュなどのヴィエノワズリー類は、フランスから成形冷凍などの形で生地を輸入して、各店舗で加工、焼成している。
各店の幹部は、フランスでの1カ月の研修を受け、PAUL流のパン作りを徹底的に叩き込まれる。オープン前には、フランスから派遣された担当者が、パンの品質などについて厳しいチェックを行う。
八重洲店は、店舗面積がおよそ50坪。そのうちの約半分は42席のサロン・ド・テが占める。テイクアウトのコーナーはおよそ10坪で、対面販売。パンの製造スペースはおよそ15坪だ。
パンの製造スタッフは店長を含めて4人。このほかサンドイッチなどの担当が数人。レストランのホールスタッフとパンの販売担当が常時6~7人の体勢だ。



フレンチスタイルの食事を提供


サロン・ド・テ
PAULには、ほとんどの店舗に食事をするスペースがある。八重洲店は席数が42と多く、ゆったりとした空間だ。ハムやチーズなどをサンドした「アンシェンミックステ」(750円)やハーブチキンなどをサンドした「アンシェンブーレ」(同)などのサンドイッチや、チーズ入りオムレツの「オムレットフロマージュ」(850円)などの軽食を出し、フレンチスタイルの食事を提供している。

ドライフルーツやくるみが入ったハースブレッドが人気

アンシェン・ポール4レザン


パン・オ・6セレア・ロン
アンシェン・ポール4レザン
通常のカリフォルニア・レースンのほか、グリーンレーズン、カレンツ、サルタナレーズンの合計4種類のレーズンを練り込んだハースブレッド。ホールが450円で、ハーフカットが225円。販売スタッフのひとりは「硬焼きのパンでは、ドライフルーツやくるみなどが入ったものに人気が集まっています」と教えてくれた。

パン・オ・6セレア・ロン
大麦、オーツ麦、粗挽きセモリナ、とうもろこしの粉、アマニなど6種類の穀物などが入ったハースブレッド。ホールが350円で、ハーフカットが175円。アンシェン・ポール4レザンと並んで、人気のあるハースブレッドだそうだ。

ヴィエノワズリーを強化していきたい


ヴィエノワズリー類
ヴィエノワズリー類は、フランスのポールが作った生地を冷凍の状態で日本に輸入して使用している。実はフランスのPAULも、ヴィエノワズリー類については、冷凍の状態で生地を各店に配送しているので、「本国とまったく同じ味」(レアールパスコベーカリーズの吉田営業部長)なのだそう。
今後は、こうした生地を使って、日本のPAUL独自の製品も開発していきたいという。

パンはすべて対面で販売
パンはすべて対面で販売する。ショーケースの上のハースブレッドは、薪を組むように積み上げられている。ガラス戸の向こう側がパンの製造スペース。

原価計算女王
原価計算女王
フレンチスタイルのサンドイッチも人気


サンドイッチのショーケース
フルート・アンシェンヌやブリオッシュなどで、生ハムやトマトなどを挟んだサンドイッチも人気だ。パンも具材も、フランスのPAULで使っているものとほぼ同じものを使用している。
ケースの上に陳列されているのは、フルート・アンシェンヌ㊧とフルート・パヴォ。

八重洲店店長の山本賢治さん
八重洲店店長の山本賢治さんは「八重洲店は、他の店舗に比べて、来店するお客様の幅が広いのが特徴です。その分、どんな人たちにどんな商品やサービスを提供していったらいいのかを探りやすいわけです。日本でのPAULのあり方について深く考えていきたいですね」と話す。


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