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ブランスリー新聞/2001年11月号 |
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オーナーの心構え、製パンの知恵を伝える - ブロートハイムの明石氏が講演 | |
勘所を敏感に感じ取る知恵
人の育て方については「これがいい」という決まった方法はない。手取り足取りが多すぎてマイナスになっている面があるとも思う。ベーカリーの仕事は、言葉や数字で表せない事柄が多くを占めるので、感覚で覚えるしかない。一度感覚で覚えたものを、本を紐解いて改めて確認する、というのが本筋だと思う。 パン作りの勘所を敏感に感じ取る知恵を受け継いでもらわなくてはならない。例えばパンチするタイミングについて、「どうして今じゃないんですか」とスタッフから聞かれたら、私は「生地がまだ早いって言っているじゃないか」と答える。 ただ、なんでもかんでも感覚で、ということではない。基礎データをきちんととることも大切だ。あるパン職人はいつも夜寝る前に、「明日はもっといいパンを作ろう」と思う、という話を聞いたが、この深い思いが大事だ。 スタッフと価値観を共有する スタッフに対しては、自分の店のコンセプトをはっきりと言葉で伝えるようにしている。一緒に仕事をする上で、価値観を共有することが最も大切だからだ。さらに、プロとしてここまではやってほしい、と具体的にはっきりと言うようにしている。 スタッフだけではなく、お客様にも同じ価値観を持ってもらえれば理想的なのだが、必ずしもそうはいかないので、せめてスタッフには同じ価値観を持ってもらう方向で、努力している。 スタッフに対して、働く場を与えて放っておくというのではなく、きちんと説明してフォローすべきだ。技術を習得する近道はない、とはっきり言うべきだ。一歩一歩着実にやっていくのが最も早い方法だということをわかってもらいたい。 教えることは自分が勉強することでもある。教えながら、相手の失敗を見て、学ぶことも多い。 食パンをスライスして、お客様に手渡して初めて仕事が完了する。誰が作ったかがわかるように木で作ったスタンプが押してあるパンがあると聞いたことがある。これは、自分の仕事に最後まで責任を持たせるということだろう。 経営者として、たとえ自分ひとりになってもやり遂げる、という気概があって、初めてスタッフを育てられる。 パンをたくさん作らせてあげたい ベーカリーの製造スタッフに対するあるアンケート調査で、「残業はいとわないから、もっとパンを作らせてほしい」という声が多かったという。1年間天板を洗い続けただけとか、クリームの封を切って絞り続けただけ、というのではやりきれないに違いない。将来のパン業界を担う若いスタッフをあずかる我々としては、そうしたことを真剣に考えるべきだ。 短い時間で最大のもてなし 販売も大切だ。お客様をもてなすという姿勢がなくてはならない。ホスピタリティーということだ。私はスタッフに、「自分の親のお客さんが来た時の気持ちで、お客様に接しなさい」と言っている。 とはいっても、意味のないもてなしはしない。パンを1つ買ったお客様には、小さな紙袋に入れて渡す。近くに図書館があるので、本を抱えたお客様がよく来るが、そうした場合は、買ったパンは少なくても、本を入れるために、大きな袋を渡す。無駄は排除したい。 ホテルなどと違って、ベーカリーはお客様の滞留時間が短い。その短い時間でいかにしてもてなすかを考えなくてはならない。 あるベーカリーの社長は「ウチの店のコンセプトは、自分の家の近くにあったらいいなと思う店だ」といっていた。その社長は、自分が休みの日には、自分の店に客として行く、と聞いている。大切なことだと思う。 個性ある商品を! トヨタ自動車で、トヨタらしくない車を作る部署を作ったという。パンも10人全員がおいしいという商品はありえないだろうし、ある意味でつまらない。5~6人がおいしいといってくれればいい。3~4人がすごくおいしいといってくれればもっといい。ウチで作っているライ麦パンは、多くは売れないが、熱烈な支持者がいる。 |




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