徹底取材! - 販促の秘策、第2弾 - ブランスリー電子版


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特集/2002年3月号

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徹底取材! - 販促の秘策、第2弾

「販売促進」のテーマで、ベーカリー2軒を取材した。
1軒のオーナーは「お客様を喜ばせようという気持ちがあって、初めて販促が成り立つ」といい、もう1軒のオーナーは「お客様に情報を提供したい、自分の思いを伝えたい」と話す。
2軒とも販促について、様々な方策を実施しているが、
「目的意識がはっきりしていて、初めて販促の様々な方策が実を結ぶ」という認識で一致している。



顧客を喜ばせたい気持ちがあって、初めて販促が成り立つ - パン工房クーロンヌ

パン工房クーロンヌ新守谷店の店内


スタッフは、子供にも臨機応変に対応する。


顧客は自由にコーヒーを入れて飲むことができる。


コーヒーサーバー後方の壁面には、「クーロンヌからのお知らせ」と題して、パン教室の様子を紹介する写真や、「返金制度」「お叱りハガキのお願い」などの告知が掲げられている。
「お客様を喜ばせようという気持ちがあって、初めて販促が成り立ちます」
茨城県などにリテールベーカリー3店舗を展開するパン工房クーロンヌの田島耕太社長はこう話す。
「なぜ食パンを1日何回にも分けて焼成するのか、なぜ10時ではなく、6時半にオープンするのか、などについて自分の中にしっかりとした理由がなければ、『販促』といくら言ってみたところで『本当の販促』にはなりません」
3店舗のうち、新守谷店(茨城県北相馬郡)は特に繁盛店で、土日の売上は60万円を越えるという。

パン1個を顧客の家に届ける
焼き上がったパンを、販売スタッフが製造スペースから売り場に運んでくるときには、「焼き上がりました」と店内の客に声をかける。
「混雑時に天板を高く持ち上げて運んだのでは、お客様にパンが見えません。どうしても低い位置に天板をキープできないときは、一度お客様に『焼き上がりました』と声をかけてパンを見せてから運ぶというような工夫が必要です。そういうことが自然にできるかどうかは、各スタッフが『お客様を喜ばせたい』と本気で思っているかどうかで決まるんです」と田島社長はいう。
同ベーカリーでは、1日何回にも分けて焼成するパンが多いので、来店時に顧客がほしいパンが、一時的に品切れになることもある。顧客が、焼き上がるまで待てない場合は、焼き上がってから、スタッフが車で顧客の家まで届けることもある。
田島社長は、このことを後から知った。
「パン1個のためにそんな手間をかけることについて「NO」という経営者もいるのでしょうが、私は店長の判断を誉めてやりました」と嬉しそうに話す。

味が好みに合わなければ、返金する
コーヒーサーバーを置いて、顧客にコーヒーを無料で提供しているのも、「顧客を喜ばせたい」との思いからだ。
「パンの焼き上がりを待っている間、奥様がパンを選ぶのを旦那さんが待っている間、コーヒーがあれば退屈しないだろうと考えました」と田島社長。
コーヒーサーバー後方の壁には、「クーロンヌからのお知らせ」と題した掲示板がある。同ベーカリーが年に数回催すパン教室の様子を紹介する写真や、「返金制度」「お叱りハガキのお願い」などの告知が掲げられている。
「返金制度」は、顧客が同ベーカリーのパンを購入して、満足できなかった場合、理由を問わず、返金または別の商品と交換する、というものだ。
田島社長は、「試食は積極的に提供しているのですが、新しい商品を試食せずに購入したお客様で、『味が好みに合わなかった』という人についても、返金もしくはほかの商品と交換するようにしています」と話す。
「お叱りハガキ」は、3カ月に1回、実施している。期間は1週間。
その間来店したすべての顧客に、「お叱りのことば」を書いてもらうためのはがきを渡す。
田島社長によると、渡したはがきの10%程度が戻ってくるという。ほとんどが、「お褒めの言葉」だそうだ。しかし、要望や苦情もある。
要望や苦情は、多い少ないに関らず、できることはすぐに改善する。
「駐車場の入り口が狭くて、車の出入りがしづらいという指摘がありました。それまで借りていた駐車場の隣の土地が空いたので購入し、入り口が広い駐車場を作りました」。

個々対応の重要性
田島社長は個々対応の重要性を強調する。
「お客様1人ひとりについて、求めているのはスピードなのか、質なのか、などを見極めなくてはなりません。子供さんと年配者では当然接客の仕方も違ってくるわけです。同じ年代の人でも、例えば、『カレーパンはいつ焼き上がるのですか』と聞ける人もいれば、黙って違うパンを買う人もいます」
パン工房クーロンヌが目指しているのは「個々のお客様にとって、いき過ぎず行き届いたサービス」なのだ。



自分の思いを顧客に伝えたい。木材とレンガが基調の内装 - ルヴァン

入店すると正面にパンが並ぶ木製の棚がある。


陳列棚とレジの後方に、周りにレンガを積み上げたオーブンがある。


入店して正面の壁には常連客から届いたお礼の絵葉書などが貼ってある。


スタッフのスナップ写真もある。


正面の壁上方には、甲田社長が収集したり友人からもらったりした雑貨などが飾られている。


甲田社長が描いた水彩画も飾られている。


甲田幹夫社長
「パリのポワラーヌを参考にして店構えや店内をデザインしました」
東京・渋谷区のベーカリー、ルヴァンの甲田幹夫社長はこう話す。
店内は、木材とレンガを基調にした素朴で温か味のある内装。甲田社長が集めた雑貨などや同社長が描いた水彩画などがさり気なく飾られている。
全粒粉などから起こした独自のルヴァン種は、もう長い間継ぎ続けている。基本的に小麦粉、塩、ルヴァン種、水を使い、昔ながらの製法でパンを作る。
大量生産、大量消費に疑問を持ち、パン作りを通して、循環型社会の実現に少しでも役に立てればと、独自の哲学でベーカリーを経営する。そんな甲田社長にとって、ポワラーヌはいい手本だった。

レンガのオーブンが客の目に入ってくる
ルヴァンに入店すると、正面に木製の陳列棚があり、カンパーニュなどのハード系のパンなどが並んでいる。「1グラム1円」などの量り売り。右手がレジになっていて、対面販売。
甲田社長は、「正面の陳列棚の後ろに販売スタッフが通れる通路がないので、不便なのですが、それよりもお客様にとっての見やすさを優先しました」と話す。
レジの後方に外壁にレンガを積み上げたオーブンがある。正面の陳列棚に向かって右斜め方向にパンの窯入れ・窯出しの様子が見える配置だ。

廃屋の柱を利用、パンの水彩画も
正面の陳列棚の後ろの壁面には、甲田社長が、旅行先で購入したり友人からもらったりした雑貨などが所狭しと飾られている。
例えば、動物などの形のくぼみが入った長い板。これは、クッキーなどの型として使われていたものだという。「くぼみのところに、小麦粉らしきものがまだついていますよ」と甲田社長は説明してくれた。
廃屋を解体した際に出る柱などもうまく利用し、長い年月を経た重厚感を演出している。店内には中古の備品も多い。「誰かが使ったものを再利用できたらいい」との考えからだ。
誰がパンを作っているかを顧客にわかってもらいたいという思いも強い。
正面の壁には、ルヴァンのスタッフのスナップ写真がセンスよく貼られている。
顧客からもらったお礼の絵はがきなども貼られている。
甲田社長が描いた、パンなどの水彩画もさり気なく飾られていて、店内の雰囲気を盛り上げている。
こうした店内の飾りつけには、「お客様に情報を提供したい、自分の思いを伝えたい」という願いが込められている。「店と客という関係ではなく、人間同士の付き合いがしたい」という甲田社長の思いが、独特の温かみを出している。
ルヴァンのパンは多くがグラムいくらの量り売り。必要な量だけスライスしてくれる。試食を提供しやすいという利点もあるそうだ。
「使っている材料など、パンについてできるだけ多くの情報をお客様に親しみを込めて提供したいと思っています」





原価計算女王
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