生まれ変わる - ファミーユ - ブランスリー電子版


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お店拝見/2002年5月号

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生まれ変わる - ファミーユ

ファミーユの外観
東京・千代田区のオフィス街。富国生命ビル地下2階。レストランなどが入店する飲食街。天然酵母パンの店・ファミーユはこんな場所にある。午前11時半から午後1時頃までに1日の売上の大半をさばく。パンの製造作業は昼時の焼き上がりを目指して進められる。

住所 東京都千代田区内幸町2‐2‐2富国生命ビル地下2階
電話 03-3508-8901
営業時間 午後8時~午後7時
定休日 土日・祭日



昼時に売上の大半をさばく。徹底した差別化が不可欠

販促に力を入れる田舎パン


白玉とあんが入ったよもぎあんぱん


地下2階の通路に面して平台が設置され、主にハード系のパンが並ぶ。


スタッフ3人の意気もぴったり(左が伊藤幸男さん、中央が緑川由香さん)
飲食街の通路に向かって大きく開放された間口の部分に、顧客が出入りする部分を空けて、平台が置かれている。通路から平台に手が届く形だ。人気の「田舎パン」(380円)、「ライ麦パン」(200円、レシピを20ページに掲載)、「栗ごまパン」(200円、レシピを20ページに掲載)などが並び、通路を通る人たちに微笑んでいる。
入店して左手と奥の壁面には、パンが所狭しと並ぶ陳列棚があり、「よもぎあんぱん」(150円)、「アーモンドクーヘン」(レシピを21ページに掲載)、「ナン」(カレー180円ほか、レシピを21ページに掲載)などが並ぶ。
生地は前日の夕方仕込んで12時間発酵させる。翌朝5時から作業開始。じっくりと発酵させた10数種類の生地から、様々なパンを作っていく。お昼時にいかに商品を揃えるかが勝負だ。
11時半ごろからの1時間は、戦場のようだという。製造を担当するファミーユ責任者の伊藤幸男さん、同じく製造を担当する店長の緑川由香さん、販売スタッフの女性の3人は大忙し。伊藤さんと緑川さんはパンを作りながらレジにも走る。
パンはほぼすべてホシノ丹沢酵母で発酵させる。「競争が激しい地下の食品街で生き残っていくには、徹底した差別化が不可欠」と考えた結果だ。
伊藤さんは、冷凍生地を焼成するべークオフベーカリーだったファミーユを、粉から作るスクラッチベーカリーに切り替えるべく、昨年3月にファミーユの責任者に就任した。以来、紆余曲折があった。



コンビニの進出で売上が激減。天然酵母パンに活路を見出す

店内の陳列棚には多くのパンが並ぶ


有機野菜をはさんだ「有機野菜サンド」


メロンパン(130円)も人気だ。


ジャムなどの陳列のしかたにも一工夫
ファミーユは、ハウスクリーニングなどを手掛ける会社が経営母体。冷凍生地を焼成して出すべークオフベーカリーを営んでいたが、およそ1年前、スクラッチベーカリーとして再スタートを切った。伊藤さんが運営を任されることになった。伊藤さんはそれまで、ある自然食系のスーパーのベーカリーでパンを作っていた。
伊藤さんと同じ時期に、あるリテールチェーンでアルバイトをしていた緑川さんも入店した。
伊藤さんの中には、ゆくゆくは天然酵母パンに切り替えていきたいという思いがあった。
伊藤さんはそれまで培ってきたノウハウを思う存分発揮した。3カ月間で売上が、かなり伸びた。
しかし、同じビル内に大手コンビニが進出して、事情は一変した。急激に売上が落ちたのだ。伊藤さんが引き継ぐ前より低いレベルになった。
オーナーとの話し合いが続いた。撤退の選択肢が現実味を帯びたこともあった。
「徹底的に差別化を図るしかない」。伊藤さんはこう思った。
天然酵母のパンに活路を見出すことになった。それまでも少しずつ天然酵母のパンを作り始めていたが、さらに力を入れることになった。
伊藤さんは「お客様のニーズを注意深く探りながら、天然酵母のパンを商品化していきました。かなりの手応えを感じたので、イーストのパンからの切り替えのペースをどんどん加速させました」と振り返る。
今年1月、内装を一新させ、リニューアルオープンした。



商売のベースに環境問題。「お客様を啓蒙していきたい」

「巻き返せた、と本当に実感できるようになったのは、リニューアルオープンしてからですね」と伊藤さんはしみじみと語る。
「それまでの平均的なベーカリーから脱却して、特色のある品揃えというか、ウチの色はこれだ、というものが出てきたように思います。でもそうなるともうへたな商品は作れません」
伊藤さんは、「これからの商売はベーカリーに限らず、環境問題を無視しては成り立たないと思います。そうした大きな流れの中で、おいしくて安全なパンを作っていきたいと思うんです」という。
ファミーユの陳列棚には、「有機野菜サンド」(250円)や、有機栽培のブルーベリーをトッピングした「ブルーベリーデニッシュ」など安全性にこだわった製品が数多く並んでいる。
伊藤さんはさらに「賢いお客様を作っていくというか、お客様を啓蒙していくことが大事だと思うんです」ともいう。ファミーユでは、マイバッグを持参した顧客に対して、ポイントカードのポイントを2倍つける、などといったサービスを実施して、顧客に環境問題などへの意識を高めてもらう努力をしている。

ファミーユは、地下鉄都営三田線・内幸町駅下車徒歩2分。富国生命ビル地下2階の飲食店街にある。売り場面積はおよそ12坪、製造スペースがおよそ5坪。
製造は伊藤さんと、緑川さんの2人が担当。販売スタッフは女性1人。午前11時半からの1時間ほどに来店客が集中し、この間で1日の売上のかなりの部分を稼ぐ。この時間帯は、伊藤さんも緑川さんも販売に大忙しだ。
顧客には、同じビル内に勤務するOLが多いが、「最近では近隣のビルからも来店するようになった」(緑川さん)という。
土日、祭日は休業日。ウィークデイにすべてをかける。



独特の食感のライ麦パン
ライ麦パン
ライ麦粉を50%配合したパン。慣れない人でも比較的食べやすい。ライ麦粉はミキシング前に熱湯処理する。
【配合%】
ハルユタカ(内麦粉) 50
ミッテル(ライ麦粉) 50
砂糖
1・5
ホシノ丹沢酵母食パン種
60

【工程】
ミキシング L1分ML4分、
捏ね上げ温度 22度C、
発酵 22度C12時間、
分割 200グラム、
ベンチタイム 30分、
成形 ナマコ形、
ホイロ 35度C80%30分、
焼成 上火210度C下火180度C20分(スチーム注入)

※ミキシング前に水の配合量の半分を沸騰させ、ライ麦粉(全量)を浸して冷めるまでおく。

栗と黒ごまがよく合う
栗ごまパン
栗と黒ごまが入った直焼きのパン。栗と黒ごまがよく合う。
【配合%】
ハルユタカ(内麦粉) 100
砂糖
1・5
黒ごま(炒ったもの) 15
ホシノ丹沢酵母食パン種
53

【工程】
ミキシング L1分ML4分、
捏ね上げ温度 22度C、
発酵 22度C12時間、
分割 100グラム、
ベンチタイム 30分、
成形 生地を楕円形にのばして、栗のシロップ煮をちらし、ナマコ形にロールする。
ホイロ 35度C80%50分~1時間、
焼成 上火210度C下火180度C15分(スチーム注入)

原価計算女王
原価計算女王
天板に敷き詰めて焼成、カットして販売
アーモンドクーヘン
天板に生地を敷き詰め、アーモンドなどをトッピングして焼き上げる。適当な大きさにカットして販売。
【配合%】
ハルユタカ(内麦粉) 100
砂糖
1・5
バター
ホシノ丹沢酵母
54

【工程】
ミキシング L1分ML3分、
捏ね上げ温度 22度C、
発酵 22度C12時間、
大分割 800グラム、
折り込み 3つ折り4回、折込バター対生地10%、
成形 (1)バターを折り込んだ生地を最終的に32センチ×50センチにのばす
(2)[1]の生地を天板に敷き詰めて、対粉重量比で10%のバターを塗り広げる
(3)[2]に▼アーモンドのトッピングを全体にちらす
(4)[3]の上に対粉重量比で12%のグラニュー糖をふる。
ホイロ 35度C80%20~30分、
焼成 上火215度C下火180度C16分

▼アーモンドのトッピング
【配合%】
アーモンドスライス 10
14

【作り方】
混ぜ合わせる

カレーをつける必要はありません。


ナン(カレー)
内麦粉100%の生地をナンの形に成形する。中にはカレーフィリングが入っている。
【配合%】
ハルユタカ(内麦粉) 100
ホシノ丹沢酵母食パン種
砂糖
1・5
57

【工程】
ミキシング L1分ML5分、
捏ね上げ温度 22度C、
発酵 22度C12時間、
分割 80グラム、
ベンチタイム 30分、
成形 (1)生地をのばして、40グラムのカレーフィリングをのせ、2つ折りにする
(2)[1]を長めの楕円形に薄くのばす。
ホイロ 35度C80%30分、
焼成 上火210度C下火190度C9~10分

※ホイロ後、チーズをトッピングする。


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