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連載/2023年2月号 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
ブリオッシュ生地からパネトーネを作る話からいろいろ考えてみました - 普通のパン屋さんが普通に頑張れば繁盛出来る話(68) | |
リテールベーカリーは、客にパンを選ぶ楽しさを提供しようとして、品揃えを可能な限り多くしようとするケースが多いように思いますが、最近は、製造効率を考えて、品揃えを絞り込むベーカリーも少なくないようです。
品揃えを増やしたいという思いと、製造効率を上げて、製造コストを下げたいという思いをうまく折り合わせようと日々努力されている方も多いのではないでしょうか。 先日、ある製パン講習会で、ブリオッシュ生地を使った様々な製品を紹介していました。その中にパネトーネが含まれていて、講習会の講師の方は、「うちはブリオッシュ生地でパネトーネも作ります」と説明していました。生地の配合にも工夫がされていて、りんご酢やヨーグルトも配合されていました。 オーソドックスなブリオッシュでも、王道のパネトーネでもないのかも知れませんが、「ブリオッシュとパネトーネの兼用の生地でなくてはならない」という制約の中での試行錯誤が、一皮剥けた進化系のブリオッシュやパネトーネを生み出すのかも知れないと、妙に感じ入ったことを覚えています。 「他では手に入らない唯一無二のパンを開発することがリテールベーカリーの本分だ」とよく言いますが、二つの違う種類のパンを同じ一つの生地から作れるようにしようと努力することは、「他では手に入らない唯一無二のパン」を開発することに役立つのではないかと思いました。 例えば、ブリオッシュの生地と菓子パンの生地を統一させ、その生地から様々なブリオッシュの製品を作り、様々な菓子パンの製品を作るためには、通常はブリオッシュ生地には配合しない材料を入れ、通常は菓子パン生地には配合しない材料を入れる必要があるかも知れません。 はたからは、おかしなことをしているように見えるかも知れませんが、それが突破口になって、一皮剥けた画期的なブリオッシュの製品ができるかも知れないし、誰も思いつかなかったような魅力的な菓子パンが出来るかも知れません。 多くのリテールベーカリーを取材していると、ベーカリーならどこでも作っているような、例えば、食パンやあんパン、クロワッサンなどの定番中の定番の製品が、「他とは違う」と感じることがあります。奇をてらって他とは違うのではなく、真面目に真正面から他とは違うのです。 定番商品は誰もが知るものですから、それらが他と違うと、客の脳裏に深い爪痕を残します。私がこれまでベーカリーを取材してきた経験から思うのは、繁盛ぶりが同業者から羨ましがられるようなベーカリーには、パン屋の定番商品のいくつかに、「他では手に入らない唯一無二のもの」があるということです。 ベーカリーならどこでもやっているようなド定番の製品を、他では手に入らない唯一無二の製品にするのはかなり難しいことですが、二つの違う種類のパンを同じ一つの生地から作れるようにしようと努力することは、それを実現するための一つの方法論にならないでしょうか。 前述のように、ブリオッシュと菓子パンの兼用生地を真面目に作ろうとすれば、ブリオッシュの長い歴史からくる伝統と菓子パンという日本特有のパンの歴史をしっかりと受け止めなければなりませんので、安易に奇をてらったようなアイデアが入り込む余地はありません。そんな中で、「効率化せよ」という現実に根ざしたひっ迫した要求は、ブリオッシュと菓子パンの厳格な伝統の束縛から、あなたの感性を正しい方向に解き放してくれるに違いありません。 講習会で聞いたブリオッシュ生地からパネトーネを作るという話から、とんだ思考実験に発展してしまいましたが、世の中の進化は、様々な思考実験からもたらされることが多いことは、これまでの人類の歴史をみれば明らかです。(RO) |



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