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あの日あの時/2022年12月号 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
2000年、IT時代幕開けの時にパン業界は何を見据えていたか
極度にIT化が進んだ社会で
左ページは、今から22年前の2000年7月20日発行のブランスリー8月号(創刊号)に掲載された記事です。当時のパンに関係するホームページをピックアップして紹介したものですが、あの頃は、インターネットが普及し始めた時期で、その後に到来するIT社会の黎明期でした。パソコン普及のトリガーとなった1995年のWindows95の発売から5年がたった時期でした。 それまでは、情報を世の中に発信出来るのは、出版社や新聞社、テレビ局などでプロとして情報に関わる人たちだけでしたが、インターネットが登場したことにより、会社員であろうが、主婦であろうが、学生であろうが、悠々自適のシルバー族であろうが、誰でも自由に情報発信ができるようになったのでした。 ただ、そうはいっても、素人がいざ自分の言いたいことを世の中に伝えようと思い立っても、そのためには自分でホームページを立ち上げなくてはならないなど、それなりの知識と技術は必要でした。 左ページの記事に出てくる東京・巣鴨のベーカリー、個性パン創造アルルの当時のオーナー、林春二さんは、私も何回か取材したことがありますが、当時から新しい物好きで、パソコンについての知識もあったため、早くから自分の店のホームページを立ち上げ、ベーカリーが運営するホームページとしては、先駆者的な存在でした。 一方で、自分でホームページを用意できない人にとっては、自ら情報発信をするのは、まだ難しい面がありました。そんな中で当時多くの人が利用していたのが、「Yahooジオシティー」というオンラインでのホームページ無料作成サービスでした。 左ページの「ドイツパン職人修業の道」と題したホームページは、その「Yahooジオシティー」を使って運営されていました。ドイツのパンマイスターに弟子入りして厳しい修業の日々を送ることになった主婦のみちえさんの奮闘ぶりをエッセイ風に綴ったものですが、当時パン職人が情報発信するホームページが少なかったこともあり、人気のホームページとなっていました。 左ページの記事では、当時まだスタートしたばかりのインターネットショッピングモールの楽天市場のホームページも紹介しています。今でこそ、多くのベーカリーが当たり前のようにネット通販を行っていますが、当時は個人でネットショップのシステムを作るのは難しい時代でした。そんな中で楽天市場は、誰でも安く簡単にネットショップが始められるという謳い文句で、参加ショップを増やしていきました。安いといっても毎月5万円の費用が掛かっていましたから、今考えると決して安くはないような気もしますが。 多くの人に向かっての情報発信が人類史上初めて、すべての人に解禁されたのがこの時期だったわけですが、それから22年たった今、世の中の情報化の進展具合には脅威的なものがあります。 特権を持った一部の人たちが解釈した情報で回っていた世の中が、SNSが極度に普及したことにより、社会の構成員すべてによって解釈され発信された情報が大きな影響を及ぼす世の中に変わりました。 ベーカリーの世界でも、テレビや雑誌に取り上げてもらわなくても、ベーカリー自らが直接消費者に向かって語り掛けられるようになりました。テレビの影響力は今でもかなり大きなものがありますが、全員が取り上げてもらえるものではなく、ましてや自分が思うタイミングでは取り上げてくれません。 フェイスブック、インスタグラム、ツイッターなど、数多くの情報発信ツールが、すべての人に無料で用意されている今の状況では、それらを自らの血とし肉としていかない限り、一部のまれな例外を除いては、ベーカリー運営を含むあらゆる経済活動において、負け組となってしまうことは明らかです。 ITのツールを無視し続けるということは、例えて言うなら、新幹線や飛行機というツールが万人に用意されているのにも関わらず、江戸時代さながらに、徒歩で東京から大阪まで移動することに何の疑問も持たないのと同じことです。 |

ブランスリー2000年8月号掲載記事 もうこんなにある!パンのホームページ徹底調査! | |
マイスターに飛び込みで弟子入り!その奮闘記をエッセイ風に綴る
【ドイツパン職人修業の道】「ドイツで本当においしいと思うのがパンだったから」という理由で、パンのマイスターに弟子入り。厳しい修業の日々を送ることになった主婦のみちえさんの奮闘ぶりをエッセイ風に綴ったのが、「ドイツパン職人修業の道」。 当初、カルチャースクール程度を考えていたみちえさんだが、マイスター制度の壁にはばまれ、それならばと同制度のもとでの資格取得を決意。25キログラムもの小麦粉をふらつきながらかつぎあげ、ようやく弟子入りを認められる。しかし、その後も様々な困難が彼女を襲う。 逆境にありながら、情熱を持ち続け、常に新鮮な視点で物事を見据えていくみちえさん。素直な筆致の中に、彼女の発見や驚き、そして感動が溢れている。これからパン造りをしようとしている人たちにも、また既にプロとして活躍している人たちにも大いに参考になるホームページ(HP)だろう。 パン造りにかける情熱がひしひしと伝わってくるHP! 【個性パン創造アルル】「パン屋の親父が仕事の合間に作った」というのが、東京・巣鴨に店舗を構えるベーカリー『個性パン創造アルル』のホームページ(HP)。 天然酵母や自然塩など食材を徹底的に厳選するのが同店のこだわり。 HPにもそうしたナチュラルでヘルシーな姿勢を反映した商品が数多く紹介されている。 中には「天然酵母もイーストも使わず、粉と塩と水だけで造った古代パン」や「水を使わずワインで造ったワインブレッド」などユニークなパンも紹介されている。 また、動画を使ってパンの焼き上がりを見せてくれるコーナーもあり、ご主人のパン造りにかける情熱がひしひしと伝わってくるHPである。 35万点の商品を扱い、1日のアクセス数は、300万! 【楽天市場】3500店舗を抱える巨大ショッピングモール。そこで取り扱われる商品は、自動車、家電製品、家具、食品など約35万点に及ぶ(7月3日調べ)。およそここで揃わない品物はないと言えるほどの充実ぶりだ。中には、「猿回しの出張サービス」といった一風変わった商品もある。まぎれもなく日本最大級のこのショッピングモール、実はインターネットの中に存在する。 『楽天市場』は1997年の開業以来、着実にその規模を拡大し続け、今や1日の閲覧数約300万にまで成長したホームページ(HP)である。 インターネットの特徴は、何といっても時間や場所といった制約を受けない点だ。ユーザーは自分の都合にあわせショッピングを楽しむことができるし、企業や経営者は、低いコストで新たな販路を開拓できる。 クレジットカードや宅配便を利用すれば、金や品物の流れもスムーズだ。 現在「楽天市場」で11軒のパン店が営業中である。 |


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