二つ目の夢を叶えるために緑豊かな場所に移転した - ラ・フーガス - ブランスリー電子版


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お店拝見/2022年11月号

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二つ目の夢を叶えるために緑豊かな場所に移転した - ラ・フーガス
店主の仁礼正男さん
仏アルザス地方の伝統的家屋をイメージした「ラ・フーガス」の外観。店前と隣の土地に駐車場がある
入り口から見た店内の様子。左奥にカフェスペースがある
イベントでよく売れる「ゴーダチーズブレッド」(税込756円)の断面
地元産のアスパラ、ベーコン、チーズなどが入った「アスパラブリオッシュ」(税込280円)
生の無花果を使用した「いちぢくのガレット」(税込280円)
テイクアウト専門の店からカフェ併設店へ

 東京・あきる野市、多摩川支流の平井川沿いにある緑豊かな遊歩道が眼下に広がる場所の一角に、仏アルザス地方の伝統的家屋をイメージした外観のベーカリー「ラ・フーガス」はある。
 店主の仁礼正男さんは1994年、東京・梅丘の商店街に初めて自分の店を構えた。梅丘では13年間営業し2007年、現在の地に移転。それから15年が経とうとしている。
 「自分の店を持ち経営が成り立つようになったことで、まず最初の夢を叶えることができました。そして次に抱いた夢を叶えるために、今の場所に移転したんです。郊外に自宅兼店舗を構え、売るだけでなくその場で食べてもらえるようなカフェを作りたいという夢です。移転後は宣伝などはせず、少しずつ、お客様を増やしていけたかなというのが実感ですね」(仁礼さん)
 アクセスは最寄り駅からバスと徒歩で10分ほどで、車で来店する客がほとんどだ。駐車場は開業当初店前の4台分だったが、現在は同店隣の土地に新たに9台分増設している。
 「郊外でかつ主要な道路にも面していないので、商売をやるにはリスクのある場所です。ですが、今は遠くからでも車で来てくれる方が多くいらっしゃいます。移転前のときのような、半径数百メートルといった商圏範囲などは意識する必要がないですね」(仁礼さん)
 店舗の造りは、入口から入るとまず約50種類のパンが並ぶ売り場、その奥に15席のカフェスペース、さらに奥に丸テーブルが4台置かれたテラス席となっている。
 売り場とカフェの様子は、コロナ禍前からいくつか変化したことがある。売り場は、ショーケースに並ぶ商品以外はセルフサービスで客がトングでトレーにのせていたが、現在はすべてスタッフが客の注文を受けて用意するようになった。衛生面を気にする客がいることを受けての変更だ。カフェは、感染リスクの低いテラス席はそのままだが、店内席については席数をコロナ禍前の3分の2程度に減らしている。
 「緊急事態宣言が出ていたときも、カフェは休むことなく使っていただけるようにしていました。そのとき店内の席数は半分に減らして間隔を十分に空けるようにしていました。テラス席は、夏の暑い時でも利用される方が多くいましたね」(仁礼さん)
 13年間テイクアウト専門で営業してきた仁礼さんにとって、カフェを併設した同店の営業は、それまでと異なる大変さがあるという。
 「サービスの根本的な違いがあります。例えば、販売でお客様が目の前に行列を作るのと、カフェでお客様にお待ちいただくのとでは、感じるプレッシャーが違うんですよね。でも、顔見知りの方が増え、会話もでき、お客様との関わりがより密接になったことはよかったなと思います」(仁礼さん)

長年課題になっていたロス対策が解決

 カフェのメニューは、各時間帯限定で注文できるモーニングセットとランチセットのほか、各種ドリンクがあり、売り場で購入したパンもワンドリンク制で食べることができる。
 「通勤途中に寄れるような場所ではないので、モーニングよりランチが圧倒的に人気です。当店は土日ほかの休みの日には、平日の倍近くお客様がいらっしゃるのですが、ランチセットは満席で2回転位します」(仁礼さん)
 ランチセットは2種類の選べるスープ、マリネ、ドリンク、デザート、パン盛り合わせという内容。パン盛り合わせは5種類のスライスされたパンで、おかわりができる。
 「パンは、フランスパンなら焼きたて、日持ちするカンパーニュやライ麦パンは焼いた翌日のものというように、食べ頃のタイミングでお出しできるので、『ランチのパンがおいしい』と、お客様からも好評です。また、当店のお勧めとして、その時々のテイクアウトのパンの売れ行きを見てお出しできるのでロス対策にもなっています」(仁礼さん)
 ロス対策はほかに、3年前から新たに始めたことがある。パンの廃棄を減らす目的で売れ残りのパンを扱うパン専門通販サイトでの販売だ。
 「ロスはどこのベーカリーでも共通の悩みだと思いながら、ずっとどうにかできないかと考えていました。独自でロスパンの通販を始めようかとした矢先に、今回登録した専門サイトを知り、登録しました。同サイトができて割とすぐでしたね。知り合いのベーカリーにも勧めました」(仁礼さん)



ヤギのホエーを使用した「パン・ド・ミ・プルミエール」の断面
左は「ヴィエノワ サンド」(税込399円)などのサンドイッチなどが並ぶ冷蔵ショーケース、右は「ノア・カレンズ」(税込1296円)などが並ぶ平台
売り場奥にあるカフェとテラス席。緑豊かな景色が広がる
イベント出店を機に来客数が増加

 移転して約8年後の今から7~8年前、全国各地のベーカリーが出店する「世田谷パン祭り」などのパンのイベントに、同店も出店するようになった。それまでは誘われても断り続けていたという。パンの製造のほとんどは仁礼さんが一人で行っているため、通常営業以外のことは考えられなかった。
 「気持ちに余裕が持てるようになって、考え方が変わってきたんだと思います。当店のパンを知ってもらうために、店でただ待っているだけでなく、外に出ていきたいと思うようになったんですね」(仁礼さん)
 各地でイベント開催が集中する春と秋の時期は、ひと月に2回ほど出店。イベント期間中店舗は休業にせず、出店場所には販売スタッフが向かう。
 「普段より皆の負担が増えてしまいますが、出店先から戻ってきたスタッフの様子を見ると、他店と交流できたり、完売できた達成感を味わえたり、いい刺激になっているように感じましたね。また、イベント出店を始めてから、当店の来客数が確実に増えてきました」(仁礼さん)
 コロナ禍になってからは、それまで出店していたイベントの開催中止が相次ぎ、現在は月に一度行われる地域のマルシェへの出店のみとなっている。
 「最近は再開するイベントも増えてきましたが、コロナ禍で当店の来客数が増えて忙しくなり、しばらく出店できない状況が続きそうです。唯一出店できている地域のマルシェでは、ヤギ農家さんと知り合い、チーズ製造の副産物であるホエーを直接届けてもらうようになりました。食パンに使うとよりしっとり仕上がるんです。こうした地域の横の繋がりが増えていくと、それと同時に楽しみが増していくことを実感しています」(仁礼さん)

SHOP DATA
店名:ラ・フーガス
住所:〒197‐0802 東京都あきる野市草花3492-183
電話:042‐569‐6369
営業時間:午前8時30分~午後6時
定休日:火曜(月曜に月1回不定休)
品揃え:約50品目
スタッフ:製造常時1人、製造補助常時2人、販売・カフェ常時2~3人
店舗面積:厨房約10坪、売り場約12坪、カフェ約8坪
日商:平日約10~12万円、土日祝約20~24万円



この記事の読みどころ

●東京・梅が丘で13年間培ったパン屋のリテラシーが、移転先の同あきる野市のカフェ併設店で、地域の新たなパン食文化を創造した。
●車で来られる範囲の人達の憩いの場になっている。
●「世田谷パン祭り」などのイベントへの出店を始めてから、来客数が確実に増えた。





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