フルーツサンドってどうですか? - ブランスリー電子版


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特集/2021年10月号

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フルーツサンドってどうですか?




果物は老舗仲卸が厳選。本物志向が強い銀座界隈で好評 - ギンザフルーツブーン バイウツワ
4月から東京・銀座の「有楽町イトシア」内にリニューアルオープンしたフルーツサンド専門店「ギンザフルーツブーン バイウツワ(GINZA FRUIT BOON by Utsuwa)」
店内売り場の様子。鮮やかな断面のフルーツサンドが並ぶ
4種類のフルーツが1個で味わえる「フルーツミックスサンド」(税込745円)
蜂蜜を思わせるような大きなハニーグローパインを入れた「ハニーグローパインサンド」(税込723円)
高糖度で酸味の少ないシャインマスカットとナガノパープルを一度に味わえる「ぶどうミックス」(価格は時価)
甘酸っぱいイチゴと甘いバナナのコラボ「ストロベリーバナナサンド」(税込745円)
●コロナ禍で高級フルーツのロスが増えていることを知り、少しでも消費の力になりたいと考えた●一般に言われる旬の時期よりやや遅い、果物が最も熟した時期を見極める●使用するクリームは、パティシエが開発●使用する食パンは、300店以上のベーカリーを食べ歩いて、フルーツに最も合うものを厳選

行き先のない高級フルーツの引受先に

 昨年9月にオープンしたフルーツサンド専門店の「ギンザフルーツブーン バイウツワ(GINZA FRUIT BOON by Utsuwa)」は、コロナ禍で需要が減りロスになる寸前だった高級フルーツを使って、味や品質に徹底的にこだわったフルーツサンドを開発。老舗仲卸が目利きした旬のフルーツを取り入れた高級サンドを、本物志向の大人が集まる東京・銀座の街で販売し好評を得ている。
 同店を運営するのは、300年以上前の江戸時代に油問屋として創業し、現在はガソリンスタンド運営事業(SS事業)などを主力業務とする会社、大器(東京・港区)だ。
 「全くの異業種からの参入のように思われるかも知れませんが、実はSS事業の方で築き上げた老舗仲卸同士のつながりがあり、その中で、高級フルーツがロス寸前の状態になっているという話を聞いたことが始まりです」と話すのは同社の広報スタッフである秋山さんだ。
 実は同社は2年前の2019年から小規模ながら飲食事業も開始、東京・三田でスペシャルティコーヒーの専門店や沖縄でバナナジュース専門店を運営していた。
 「飲食事業の経験があったので、高級フルーツのロスについての話を聞いて、何らかの力になりたいと考えたのです。そこで仲卸仲間から仕入れた高級フルーツを使った店を立ち上げることとなりました」(秋山さん)
 現在、同店では常時10~13種類のフルーツサンドを販売。今年2月にそれまで「東急プラザ銀座」にあった店舗を契約満了のため閉め、4月に同じ銀座にある「有楽町イトシア」に移転し、リニューアルオープンしたが、周囲にはメディア関係者が出入りするビルも多いことから、楽屋への差し入れなど主にギフト需要で購入する客が目立つという。
 人気商品として安定して伸びているのは、ストロベリー、バナナ、ネーブルオレンジ、キウイなど4種類のフルーツが1個で味わえる「フルーツミックスサンド」(税込745円)や、蜂蜜を思わせるような大きなハニーグローパインを入れた「ハニーグローパインサンド」(税込723円)など。また秋季の限定商品として「シャインマスカット」(価格は時価)や「ナガノパープル」(税込972円)、「ぶどうミックス」(価格は時価)なども販売している。

季節に合わせて産地、品種を厳選

 同店がオープンした時期と前後して、フルーツサンドがSNS上で断面が映えるスイーツとして話題を集め、フルーツサンドの専門店も増えてきたが、同店は20代からシニア層まで幅広い年齢の消費者に向けて「本物志向」を訴求。味に徹底的にこだわった戦略を進めている。
 「まず果物は、江戸時代から300年続く、青果の老舗仲卸の厳しい目利きにより厳選したものを使用しています。季節に合わせてベストな産地、ベストな品種を揃えました。ただ実は、旬の果物といっても、本当に熟成しているのを見極めるのは想像以上に難しいんです」(秋山さん)
 同店は旬の初物にはこだわらず、最も熟成している状態の旬の果物をその都度厳選して使用しているが、同じ果物でも、品種ごとに最も熟成している状態の時期は異なるため、その時期を厳しく見極めるのはかなり難しいという。
 「老舗の仲卸の方と一緒に日々果物を厳選しています。スーパーの果物などは、消費者が食べるタイミングを考え、果物が熟成し過ぎて悪くなってからでは出せないので、旬の時期より早く出す事が多いのですが、そうなると、まだ青かったり硬かったりする状態の果物が売り場に並ぶ事になります。コストを抑え大量に売る事を考えるとこういった事が起きてしまうのですが、当店ではそこを変え、手間はかかっても本当に完熟している状態の果物だけを使用するようにしているんです」(秋山さん)
 果物の熟成度を厳しく見極めて選んでいると、完成品であるフルーツサンドは高額になってしまうが、自宅用に限らず手土産・ギフト用として使える高級フルーツサンドとして訴求する事で、一定の需要を取り込んでいるのだという。



エクアドル産バナナとチョコクッキーを組み合わせた「バナナチョコクッキーサンド」(637円)
果物から、生クリーム、食パンまで全てにおいて熟練された技を結集させたフルーツサンド
ギフト需要を想定し、鮮やかなデザインの三角形のギフトボックスも販売
「ギンザフルーツブーン」のインスタグラム
熟練技を結集し、計算し尽くした味

 旬の果物に加え、外せないのが、同店のメニュー監修者であるトップパティシエの職人技を引き出して開発された生クリームだ。
 「当店が使用している生クリームは、各メニューにより使い分ける形で3種類ほど用意しています」(秋山さん)
 一つ目は標準的な優しい甘みのクリーム。2つ目は程よい酸味が含まれたマスカルポーネ入りのもの。そして三つ目は大人向けの味わいでアマレットリキュールとクリームチーズを使用したクリームだ。
 「いずれの生クリームもパティシエが研究を重ねて作り上げたもので、フルーツの甘みを引き出しながら、生クリーム特有のミルク感もさりげなく味わえるように作られています」(秋山さん)
 同店の生クリームはサンドイッチの中にぎっしりと挟み入れているので、手に持った時、ずっしりした重みを感じる。それでも甘さ控えめで軽やかなので、まるでケーキのような感覚でペロっと食べてしまえるのだという。
 また食パンも、スタッフが手分けして300軒以上のベーカリーを食べ歩き、フルーツやクリームとの一体感を損なわない口溶けの良い熟成したパンを採用。
 「パンは果実やクリームを上品に引き立てるまとめ役になっていて、口の中で果実やクリームと一緒に消えていくような心地よい食感のものを選んでいます」(秋山さん)
 果物から、生クリーム、食パンまで全てにおいて熟練の技を結集する事で、本物志向の大人のフルーツサンドを生み出す事を可能にしているのだという。

パティシエ経験者を積極的に採用

 「ギンザフルーツブーン バイウツワ」では新規スタッフを募集する際にパティシエ経験者を積極的に採用しているという。メニュー開発をする際に意見交換をしやすいからだ。
 業務の一連の流れとして、旬の果物については仲卸関係者から教えてもらいつつ、メニューについては監修者であるトップパティシエの指導のもとに、その他のスタッフが一緒になって考え、意見を出し合う。
 パティシエ経験者のスタッフの中には、前職で果物の皮むきやカッティングを始終行う業務についていた人もいて、「綺麗に皮むきし、カッティングするのが楽しくて仕方がない。カッティングした果物をきれいに組み立てて生クリームやパンと合わせて美しい断面図を作る作業が何とも気持ちいい」などと、積極的だという。
 「どう挟んでどう切ったら美しい断面になるかの判断には、熟練した技に加えて、理系脳が必要になってくるかも知れません」(秋山さん)
 また単に見栄えだけでなく、果物の味と鮮度がなくならないような剥き方、切り方、保管の仕方もあり、その部分も考えた上で、レシピを考案し、業務計画を立てている。
 「今後については、商品開発に力を入れつつも、一過性のブームで終わらせずに生き残っていくため、ギフト需要をさらに訴求していく事に力を入れていきたいですね」(秋山さん)
 同店では、ギフト需要を想定し、鮮やかなデザインの三角形のギフトボックスも販売している。
 9月1日からは小さく切ったものを詰め合わせたフルーツサンドボックス「ギンフルひとくちサンド」(税込1274円)も発売した。オフイスでのちょっとした贈答品として訴求に力を入れていきたいという。

Shop Data
店名:ギンザフルーツブーン バイウツワ(GINZA FRUIT BOON by Utsuwa)
住所:〒100‐0006東京都千代田区有楽町2‐7‐1有楽町イトシア地下1階
電話番号:080‐4056‐9035
営業時間:午前11時~売り切れまたは午後8時まで
定休日:有楽町イトシアに準ずる



旬の国産果物を使用した「萌え断」。若年女性の感性を刺激 - フルーツボックス代官山
東京・代官山のフルーツサンド専門店「フルーツボックス代官山」の外観
「フルーツボックス代官山」の売り場の様子。「萌え断」なフルーツサンドが並ぶ
「フルーツボックス代官山」の前に立つスタッフの姿
明るいオレンジ色でまとめた「フルーツボックス代官山」店内の様子
秋季のおすすめ商品「シャインマスカットサンド」(税込500円)
秋季のおすすめ商品「ピーチサンド」(税込450円)
●若年女性をターゲットに比較的リーズナブルな価格でフルーツサンドを製造販売●コロナ禍に苦しむ日本の果物生産者の力になりたい●今の若者に家庭でゆっくりフルーツを分け合って食べるような経験をしてほしい●ユーチューバーやモデルにインスタ上で自店の製品を食べてもらう

若年女性に果物を食べてほしい

 若者のトレンドスポット、東京・代官山にあるフルーツサンド専門店「フルーツボックス代官山」は、若年女性をターゲットにした断面が鮮やかなフルーツサンドを提供。旬の国産フルーツを使うなど品質に徹底的にこだわりながらも、1個400円からの比較的リーズナブルなフルーツサンドを販売している。
 同店では季節に応じて使用する果物を変えながらも9種類ほどのフルーツサンドを年間を通して販売。
 断面が鮮やかな食べ物に萌える事を意味する「萌え断」のキーワードで、SNS上にしばしば取り上げられるようになってきたフルーツサンドだが、店長の中山心太郎さんは、今の若者、とりわけトレンドや情報の相互発信に敏感な若年女性をターゲットに、果物の事をもっと知ってもらいたいとの思いから2019年の6月に同店をオープンした。
 「国産の旬のフルーツを使用したフルーツサンドを食べてもらう事で、様々な果物の魅力に気づいて欲しいですね。そのために当店では若者でも手が届きやすい手頃な価格でフルーツサンドを提供しています」(中山さん)
 ゴロッとするくらい大きめのフルーツを、乳脂肪分は高いが食感は軽めの生クリームと共に、口溶けの良い食パンで挟んで、中央の部分で美しく切ったフルーツサンドの断面は、ショーケース越しにキラキラ輝き、来店客の「『萌え断』心」を刺激。明るいオレンジ色でまとめた店内で、秋が旬の果物を使用したメニューが映える。
 9月初旬の時点では、「シャインマスカットサンド」(税別463円)や「ピーチサンド」(税別417円)といった秋が旬の果物を使用したサンドが既に発売されていた。
 果物全体を覆う控えめな甘さのクリームは毎朝店で作り、パンも、口溶けがよくフルーツやクリームとの一体感を考えたものを選んで仕入れているという。

地産地消で国産品の生産者を応援

 「これからは秋のフルーツがメインになってきますね。シャインマスカットやピオーネ、桃、紅はるか(さつま芋)、かぼちゃなどです」(中山さん)
 同店ではある特定の果物を通年で出す事にこだわってはいない。国産で、同店がつながりを持った生産者が作った果物を旬の時期のみに出す事に重点を置いている。そのために季節ごとに商品構成は大きく変わる。
 例えば春から夏にかけては、完熟マンゴー、メロン、ピスタチオなどを使用したフルーツサンドが並ぶ。通年で人気の果物もあるが、旬の時期でなければあえて無理に出すことはしないのだという。苺も夏は出さない。マンゴーも宮崎のマンゴーの時期が終わったら出さない。無理に海外のものを仕入れることもしない。
 「国産である事にこだわるのは、輸送の距離が短い事で安全で品質の安定した新鮮な果物を手に入れやすいからということもありますが、コロナ禍で日本の果物生産者が苦しんでいる中で、自国の生産品を盛り上げ、地産地消を実践していきたいということも大きいですね」(中山さん)。
 同店は立ち上げ当初は中山さんの出身地である宮崎産の果物のみのフルーツサンドを出していたが、中山さんが日本各地へ足を伸ばし、道の駅に置かれていた果物の生産者を訪ね歩くなど、地道な営業努力で生産者とのつながりを広げ、日本各地の果物も使うようになっていったという。
 「各地域の生産者が作った果物を後押しすることで、その地域を盛り上げていきたいとも思うようになりました。勿論、今はまだコロナ禍のため、自粛せざるを得ないのですが、落ち着いたら日本各地で催事を行い、地元農家とコラボした地産地消サンドなどを販売したいですね」(中山さん)



春から夏にかけて販売する「とろける完熟 宮崎マンゴーサンド」(税込500円)は宮崎産の完熟マンゴーを使用
常時販売の人気商品「FruitsBoxサンド」(税込500円)
2周年記念して発売した「神ルフィーユアップルハニーサンド」(税込600円)は、期間限定で6月22日から7月4日まで販売していた。蜂蜜でじっくりコンポートした林檎とオリジナルのホイップクリームを、 カスタードを塗り込んだパイ生地でサンドした製品
「フルーツボックス代官山」のインスタグラム
8月1日から15日まで「マルイファミリー溝口店」で開かれた催事での中山心太郎店長
若者の発信力と感性を積極的に採用

 中山さんは同店の運営会社であるKOKOROBOX(本社=東京・渋谷区)の代表でもあり、店をオープンする前から、若年女性をターゲットにしたプロモーション企画や広告代理事業を長く手がけてきた。
 「核家族化が進み家族団欒の機会も減る中で、今の若者には家でゆっくりフルーツを分け合って食べるような経験をしたことのない子も増えてきています」と中山さんは話す。
 中山さんは若年女性にもっと気軽にフルーツを食べてもらうきっかけを作りたくてフルーツを使ったテイクアウト専門店の立ち上げを考えるようになったが、最初は、当時流行していた、りんご飴の専門店を検討していたという。しかし、旬の様々な果物を提供したいという思いが強くなり、出身が宮崎だったという事もあって、結局、宮崎産のフルーツを使ったフルーツサンドの店を2019年にオープンした。
 「宮崎のマンゴーを使ったフルーツサンドを初めて自作したら本当においしくて、これで商売していきたいと強く思ったんです」(中山さん)
 ただ当初は飲食店経営自体が初めてだったため、スタッフの教育や食材の仕入れなど、わからない事ばかりで非常に苦労したという。
 それでも店の立ち上げを通じて中山さんが感じたのは、若いスタッフには意欲的な人物が多かった事だという。若年女性をターゲットにした商品という事もあり、風通しの良い社風で、積極的に意見を言い合えるようにして、商品開発は皆の意見を取り入れながら活発に進める事ができた。
 「今の若者はSNSを通じた情報発信の拠点となりやすく、その感性には大きな可能性を感じます。その芽を大切に育てていきたいですね」(中山さん)

異業種コラボで独自性を出したい

 「フルーツボックス代官山」は、本業である広告代理店の事業でのつながりでユーチューバーやモデルにインスタ上で同店のフルーツサンドを食べてもらうといったプロモーションを行う事ができたため、認知度の拡大には比較的早く成功した。
 ただそれでも、店頭の接客では、販売スタッフに「今この店で一番売れているものは何か」「今、旬のフルーツは何か」の2点に力点を置いて説明してもらうようにしている。果物に関するリアルな情報をしっかり伝えていく事を重視しているのだ。
 昨年のコロナ禍初期にはアルバイトスタッフの出勤が難しくなったため、中山さんが一人で店を運営しなくてはならなくなるなど苦難も経験したが、現在は社員2人とアルバイト6人で運営。
 催事販売にも力を入れており、月に1、2回、「ラフォーレ原宿」などの商業施設で店舗のものとは異なる高価格帯の商品を販売。これにより代官山の本店では安価な商品を販売しながらも、組織全体では採算がとれるようにしているのだという。
 今後については「フルーツサンドの市場もこの2年で大きくなり、競争が激しくなっていますので、何らかの独自性を出していかないと生き残れないと感じています」と中山さんは語る。
 今後は、これまで通り旬の果物を使用した品質の高いフルーツサンドを提供し、生産者とのつながりを深めていく事はもちろんだが、本業である広告代理業の強みを生かした異業種とのコラボも積極的に進めていきたいと考えている。
 「人気アニメなど様々な人の目に触れる機会のあるものとコラボする事で、ストーリー性のあるPRをする事ができます。また、パンについても、使用しているフルーツの味をさらに奥深いものにしてくれるような面白いものがあればぜひコラボしていきたいですね」(中山さん)

Shop Data
店名:フルーツボックス代官山
重症:〒150‐0034東京都渋谷区代官山町10‐10代官山トゥエルブ1階
電話番号:080‐7211‐0622
営業時間:午前11時~売り切れまで
定休日:不定休
品揃え:フルーツサンド約9品目、ドリンクなど約10品目
スタッフ:製造常時2人、販売常時1人(平日)、製造常時3人、販売常時1人(土日)
店舗面積:厨房1・5坪、売り場3・5坪

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