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特集/2021年10月号 |
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フルーツサンドってどうですか?
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旬の果物に加え、外せないのが、同店のメニュー監修者であるトップパティシエの職人技を引き出して開発された生クリームだ。 「当店が使用している生クリームは、各メニューにより使い分ける形で3種類ほど用意しています」(秋山さん) 一つ目は標準的な優しい甘みのクリーム。2つ目は程よい酸味が含まれたマスカルポーネ入りのもの。そして三つ目は大人向けの味わいでアマレットリキュールとクリームチーズを使用したクリームだ。 「いずれの生クリームもパティシエが研究を重ねて作り上げたもので、フルーツの甘みを引き出しながら、生クリーム特有のミルク感もさりげなく味わえるように作られています」(秋山さん) 同店の生クリームはサンドイッチの中にぎっしりと挟み入れているので、手に持った時、ずっしりした重みを感じる。それでも甘さ控えめで軽やかなので、まるでケーキのような感覚でペロっと食べてしまえるのだという。 また食パンも、スタッフが手分けして300軒以上のベーカリーを食べ歩き、フルーツやクリームとの一体感を損なわない口溶けの良い熟成したパンを採用。 「パンは果実やクリームを上品に引き立てるまとめ役になっていて、口の中で果実やクリームと一緒に消えていくような心地よい食感のものを選んでいます」(秋山さん) 果物から、生クリーム、食パンまで全てにおいて熟練の技を結集する事で、本物志向の大人のフルーツサンドを生み出す事を可能にしているのだという。 パティシエ経験者を積極的に採用 「ギンザフルーツブーン バイウツワ」では新規スタッフを募集する際にパティシエ経験者を積極的に採用しているという。メニュー開発をする際に意見交換をしやすいからだ。 業務の一連の流れとして、旬の果物については仲卸関係者から教えてもらいつつ、メニューについては監修者であるトップパティシエの指導のもとに、その他のスタッフが一緒になって考え、意見を出し合う。 パティシエ経験者のスタッフの中には、前職で果物の皮むきやカッティングを始終行う業務についていた人もいて、「綺麗に皮むきし、カッティングするのが楽しくて仕方がない。カッティングした果物をきれいに組み立てて生クリームやパンと合わせて美しい断面図を作る作業が何とも気持ちいい」などと、積極的だという。 「どう挟んでどう切ったら美しい断面になるかの判断には、熟練した技に加えて、理系脳が必要になってくるかも知れません」(秋山さん) また単に見栄えだけでなく、果物の味と鮮度がなくならないような剥き方、切り方、保管の仕方もあり、その部分も考えた上で、レシピを考案し、業務計画を立てている。 「今後については、商品開発に力を入れつつも、一過性のブームで終わらせずに生き残っていくため、ギフト需要をさらに訴求していく事に力を入れていきたいですね」(秋山さん) 同店では、ギフト需要を想定し、鮮やかなデザインの三角形のギフトボックスも販売している。 9月1日からは小さく切ったものを詰め合わせたフルーツサンドボックス「ギンフルひとくちサンド」(税込1274円)も発売した。オフイスでのちょっとした贈答品として訴求に力を入れていきたいという。 Shop Data 店名:ギンザフルーツブーン バイウツワ(GINZA FRUIT BOON by Utsuwa) 住所:〒100‐0006東京都千代田区有楽町2‐7‐1有楽町イトシア地下1階 電話番号:080‐4056‐9035 営業時間:午前11時~売り切れまたは午後8時まで 定休日:有楽町イトシアに準ずる |

旬の国産果物を使用した「萌え断」。若年女性の感性を刺激 - フルーツボックス代官山 | |||||||||||||||||||
若年女性に果物を食べてほしい 若者のトレンドスポット、東京・代官山にあるフルーツサンド専門店「フルーツボックス代官山」は、若年女性をターゲットにした断面が鮮やかなフルーツサンドを提供。旬の国産フルーツを使うなど品質に徹底的にこだわりながらも、1個400円からの比較的リーズナブルなフルーツサンドを販売している。 同店では季節に応じて使用する果物を変えながらも9種類ほどのフルーツサンドを年間を通して販売。 断面が鮮やかな食べ物に萌える事を意味する「萌え断」のキーワードで、SNS上にしばしば取り上げられるようになってきたフルーツサンドだが、店長の中山心太郎さんは、今の若者、とりわけトレンドや情報の相互発信に敏感な若年女性をターゲットに、果物の事をもっと知ってもらいたいとの思いから2019年の6月に同店をオープンした。 「国産の旬のフルーツを使用したフルーツサンドを食べてもらう事で、様々な果物の魅力に気づいて欲しいですね。そのために当店では若者でも手が届きやすい手頃な価格でフルーツサンドを提供しています」(中山さん) ゴロッとするくらい大きめのフルーツを、乳脂肪分は高いが食感は軽めの生クリームと共に、口溶けの良い食パンで挟んで、中央の部分で美しく切ったフルーツサンドの断面は、ショーケース越しにキラキラ輝き、来店客の「『萌え断』心」を刺激。明るいオレンジ色でまとめた店内で、秋が旬の果物を使用したメニューが映える。 9月初旬の時点では、「シャインマスカットサンド」(税別463円)や「ピーチサンド」(税別417円)といった秋が旬の果物を使用したサンドが既に発売されていた。 果物全体を覆う控えめな甘さのクリームは毎朝店で作り、パンも、口溶けがよくフルーツやクリームとの一体感を考えたものを選んで仕入れているという。 地産地消で国産品の生産者を応援 「これからは秋のフルーツがメインになってきますね。シャインマスカットやピオーネ、桃、紅はるか(さつま芋)、かぼちゃなどです」(中山さん) 同店ではある特定の果物を通年で出す事にこだわってはいない。国産で、同店がつながりを持った生産者が作った果物を旬の時期のみに出す事に重点を置いている。そのために季節ごとに商品構成は大きく変わる。 例えば春から夏にかけては、完熟マンゴー、メロン、ピスタチオなどを使用したフルーツサンドが並ぶ。通年で人気の果物もあるが、旬の時期でなければあえて無理に出すことはしないのだという。苺も夏は出さない。マンゴーも宮崎のマンゴーの時期が終わったら出さない。無理に海外のものを仕入れることもしない。 「国産である事にこだわるのは、輸送の距離が短い事で安全で品質の安定した新鮮な果物を手に入れやすいからということもありますが、コロナ禍で日本の果物生産者が苦しんでいる中で、自国の生産品を盛り上げ、地産地消を実践していきたいということも大きいですね」(中山さん)。 同店は立ち上げ当初は中山さんの出身地である宮崎産の果物のみのフルーツサンドを出していたが、中山さんが日本各地へ足を伸ばし、道の駅に置かれていた果物の生産者を訪ね歩くなど、地道な営業努力で生産者とのつながりを広げ、日本各地の果物も使うようになっていったという。 「各地域の生産者が作った果物を後押しすることで、その地域を盛り上げていきたいとも思うようになりました。勿論、今はまだコロナ禍のため、自粛せざるを得ないのですが、落ち着いたら日本各地で催事を行い、地元農家とコラボした地産地消サンドなどを販売したいですね」(中山さん) |

中山さんは同店の運営会社であるKOKOROBOX(本社=東京・渋谷区)の代表でもあり、店をオープンする前から、若年女性をターゲットにしたプロモーション企画や広告代理事業を長く手がけてきた。 「核家族化が進み家族団欒の機会も減る中で、今の若者には家でゆっくりフルーツを分け合って食べるような経験をしたことのない子も増えてきています」と中山さんは話す。 中山さんは若年女性にもっと気軽にフルーツを食べてもらうきっかけを作りたくてフルーツを使ったテイクアウト専門店の立ち上げを考えるようになったが、最初は、当時流行していた、りんご飴の専門店を検討していたという。しかし、旬の様々な果物を提供したいという思いが強くなり、出身が宮崎だったという事もあって、結局、宮崎産のフルーツを使ったフルーツサンドの店を2019年にオープンした。 「宮崎のマンゴーを使ったフルーツサンドを初めて自作したら本当においしくて、これで商売していきたいと強く思ったんです」(中山さん) ただ当初は飲食店経営自体が初めてだったため、スタッフの教育や食材の仕入れなど、わからない事ばかりで非常に苦労したという。 それでも店の立ち上げを通じて中山さんが感じたのは、若いスタッフには意欲的な人物が多かった事だという。若年女性をターゲットにした商品という事もあり、風通しの良い社風で、積極的に意見を言い合えるようにして、商品開発は皆の意見を取り入れながら活発に進める事ができた。 「今の若者はSNSを通じた情報発信の拠点となりやすく、その感性には大きな可能性を感じます。その芽を大切に育てていきたいですね」(中山さん) 異業種コラボで独自性を出したい 「フルーツボックス代官山」は、本業である広告代理店の事業でのつながりでユーチューバーやモデルにインスタ上で同店のフルーツサンドを食べてもらうといったプロモーションを行う事ができたため、認知度の拡大には比較的早く成功した。 ただそれでも、店頭の接客では、販売スタッフに「今この店で一番売れているものは何か」「今、旬のフルーツは何か」の2点に力点を置いて説明してもらうようにしている。果物に関するリアルな情報をしっかり伝えていく事を重視しているのだ。 昨年のコロナ禍初期にはアルバイトスタッフの出勤が難しくなったため、中山さんが一人で店を運営しなくてはならなくなるなど苦難も経験したが、現在は社員2人とアルバイト6人で運営。 催事販売にも力を入れており、月に1、2回、「ラフォーレ原宿」などの商業施設で店舗のものとは異なる高価格帯の商品を販売。これにより代官山の本店では安価な商品を販売しながらも、組織全体では採算がとれるようにしているのだという。 今後については「フルーツサンドの市場もこの2年で大きくなり、競争が激しくなっていますので、何らかの独自性を出していかないと生き残れないと感じています」と中山さんは語る。 今後は、これまで通り旬の果物を使用した品質の高いフルーツサンドを提供し、生産者とのつながりを深めていく事はもちろんだが、本業である広告代理業の強みを生かした異業種とのコラボも積極的に進めていきたいと考えている。 「人気アニメなど様々な人の目に触れる機会のあるものとコラボする事で、ストーリー性のあるPRをする事ができます。また、パンについても、使用しているフルーツの味をさらに奥深いものにしてくれるような面白いものがあればぜひコラボしていきたいですね」(中山さん) Shop Data 店名:フルーツボックス代官山 重症:〒150‐0034東京都渋谷区代官山町10‐10代官山トゥエルブ1階 電話番号:080‐7211‐0622 営業時間:午前11時~売り切れまで 定休日:不定休 品揃え:フルーツサンド約9品目、ドリンクなど約10品目 スタッフ:製造常時2人、販売常時1人(平日)、製造常時3人、販売常時1人(土日) 店舗面積:厨房1・5坪、売り場3・5坪 |
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