スタッフの成長と共に将来の展望を描く - ブーランジュリー コトン - ブランスリー電子版


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お店拝見/2021年8月号

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スタッフの成長と共に将来の展望を描く - ブーランジュリー コトン
店主の綿貫享さん
「ブーランジュリー コトン」の外観。白い外壁と黒いひさしがシンプルなデザインだ
売り場中央にある平台に、パンが袋詰めされた状態で並ぶ
クロワッサン生地にカスタード、チーズクリーム、オレンジをのせた「オランジェ」(税込270円)
生のブルーベリーを使った「ブルーベリーデニッシュ」(税込324円)
自分が感動した味を地元の人に伝えたい

 埼玉県富士見市の東武東上線鶴瀬駅から2分ほど歩くと、真っ白な壁面と黒いひさしのシンプルな外観のベーカリー「ブーランジュリー コトン」がある。
 「これからどんな風にも変わっていけるようにという思いを込めて、シンプルなデザインにしました」
 こう話すのは店主の綿貫享さん。都内の有名菓子店や岐阜県のベーカリー「トラン・ブルー」などで修行を重ね、「自分の生まれ育った地域の人たちに、おいしいパンを食べてもらいたい」と2017年、地元で開業した。「鶴瀬駅周辺はほかにベーカリーがなく、パティスリーもない」(綿貫さん)とあって、地域の期待に応えるべく豊富な品揃えを意識してきた。
 店内も白と黒が基調で、すっきりとした見た目の印象だ。そこに並ぶのは、オープン当初と比べ種類が二倍にまで増えたという約100種類のパンや菓子だ。さらに、パンを模ったマグネットなどの雑貨も販売している。
 「雑貨は、地域のイベントに出店したときに知り合った作家さんによるものです。店内が賑やかになって、和みますね。人との繋がりが増えてきていることを実感できて嬉しく思っています」(綿貫さん)
 開業当初から定番商品として揃えるのは、9年半勤務した「トラン・ブルー」の味を再現させているという品々。クロワッサン生地にカスタード、チーズクリーム、オレンジをのせた「オランジェ」(税込270円)は、すでにパン職人の道を歩き出していた綿貫さんが、「トラン・ブルー」で修業することに憧れを抱くきっかけを与えた商品だ。オレンジは、生のオレンジをシロップ漬けにしてから使用するのだが、作り置きはしない。毎日その日に使う分だけ作ることで、新鮮な味や香りを活かす。
 デニッシュの定番商品はもう一つある。自家製ブルーベリージャムとカスタードをのせた「ミルティル」(税込237円)だ。ただし、ブルーベリーが旬を迎える6~7月頃は作らない。代わりに、生のブルーベリーを使った「ブルーベリーデニッシュ」(税込324円)を作る。
 「果物の旬のおいしさを活かすためですね。『ミルティル』のときと違って、生のブルーベリーを使用する時期は、陳列場所が冷蔵ケースになります。果物は、季節ごとに扱い方が変わります。同じ果物でも、生の場合と加工した場合とで、合わせるクリームも変わってきます。自分自身が『トラン・ブルー』のデニッシュに感動した理由が、この果物の扱い方にあると思っています」(綿貫さん)
 ハード系は、「トラン・ブルー」の頭文字が付いた「Tバゲット」(税込399円)や「Tフリュイ」(税込1036円)など。「Tフリュイ」は、低温長時間発酵でうまみを引き出した「Tバゲット」の生地にドライフルーツやナッツを混ぜ込んだ商品で、中に入る具の組み合わせは4パターンある。そのうち、毎日一種類を作って販売。例えば火曜と土曜に販売しているのは、アプリコット、レーズン、クルミ入りだ。アプリコットがみずみずしく、パンをよりしっとりさせ、ハード系を敬遠しがちな年配客にも人気がある。



自家製ブルーベリージャムとカスタードをのせた「ミルティル」(税込237円)
低温長時間発酵でうまみを引き出した「Tバゲット」(税込399円)
豊富に揃う焼き菓子の横に、パンを模ったマグネットなどの小物も並ぶ
販売の社員がいることのメリットが大きい

 同店の厨房は約20坪とかなり広い。厨房を広くとれることは、綿貫さんが物件探しで特に重視していたことだった。
 「動きやすいということと、自分一人ではなく複数で製造作業を行いたいと思っていたからです。また、自分が習得してきたことを、誰かに教えたいとか弟子を育てたいという気持ちが強くなってきましたね。まだ勤めていたときは、自分が頑張ればどうにかなるという考えでしたが、変わってきました。それに今38歳ですが、自分はあと何年パンが作れるのだろうとも考えます。動けるうちに、色々と挑戦しておきたいと思っています」(綿貫さん)
 開業当初はいなかったが、現在は製造と販売それぞれ一人ずつ社員を雇っている。そして社員の技術が着実に上がっていることを実感しているという。
 「社員が腕を上げてくると、自分のやりたいことも増えてくるので、全体的にレベルが上がっていきますね。販売担当の社員を採用することは、念願だったんです。パティスリーで働いていたときに、販売の社員が数人いたのを見ていた経験が大きいかもしれません。販売は安心して任せられる存在であって欲しいと思っています。一所懸命作ったパンを、あとはお願いしますと言って託せるということは、製造の立場からすると、とても心強いんです」(綿貫さん)
 また将来的に、販売所を別の場所に新設できたらと考えている。
 「製造は自分の目が行き届く範囲で行っていきたいと考えているので、厨房のない販売だけを行う店舗を今後、つくれたらと思っています。こうしたことは、信頼できる販売の社員がいるからこそ、考えられることだと思っています」(綿貫さん)





デニッシュの新たな販売方法を編み出す

 同店の販売方法は、セルフサービス形式。そのため、コロナ禍の現在は陳列するパンの袋詰めが欠かせない。袋に入れておくことで、「トングとトレーがあまり汚れなくなって掃除が楽」(綿貫さん)というメリットもあるそうだが、繊細な食感が持ち味の「ミルティル」や「オランジェ」などのデニッシュは、袋詰めすることで湿気による悪影響を受けやすい。
 「デニッシュは、そもそもクリームなどのトッピングで湿気やすいので、トッピングは一度に行わず、なくなり次第小分けに行うようにしています」(綿貫さん)
 綿貫さんは、デニッシュの販売方式にひと工夫を加えた。陳列台には袋に入れた見本用を置き、客が見本用をレジに持っていくと、厨房横のラックで袋に入れずに保管しておいたものと引き換えるという方法をとることにした。
 「販売方法を変えるに当たっては、複雑さができるだけないように、そしてお客様の手間が増えないようにすることを考えました。また、商品数が多いので、商品名を覚えたりするのは大変ですし、セルフサービスは続けていきたいです。お客様が今まで通り楽しんで買い物していただけたらいいと思っています」(綿貫さん)

SHOP DATA
店名:ブーランジュリー コトン
住所:〒354-0024 埼玉県富士見市鶴瀬東1-9-29メゾンクール102
電話:049‐293‐9498
営業時間:午前9時~午後7時
定休日:日曜、月曜
品揃え:パン80~90品目、菓子約15品目
スタッフ:製造常時2~3人、販売常時1~2人
店舗面積:売り場約6・5坪、厨房約20坪
日商:平日約15万円、土曜約25~30万円



この記事の読みどころ

●人生を変えた「トラン・ブルー」のパンのエッセンスを地元の人たちに伝えたい。
●自分が習得してきたことを、誰かに教えたい気持ちが強くなってきた。
●製造は自分の目の届く範囲で製造の正社員と共に行い、販売は信頼できる販売の正社員に任せる。



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