商品の適正価格とは、その商品を販売して得られる粗利額の合計が最大になる価格のこと - 普通のパン屋さんが普通に頑張れば繁盛出来る話(49) - ブランスリー電子版


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連載/2021年7月号

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商品の適正価格とは、その商品を販売して得られる粗利額の合計が最大になる価格のこと - 普通のパン屋さんが普通に頑張れば繁盛出来る話(49)
 今回の特集は「パンの原価管理について」のテーマで取材しました。
 取材は実は、当社が開発し販売している「原価計算女王」という原価計算ソフトを使用しているベーカリーにお願いしました。私もこのソフトを使って、色々な種類のパンを想定して、それらの原価を計算してみましたが、業務用の製パン材料をネット上で探して、その価格を入力して原価を計算してみると、ほとんどの場合、自分が想定していた原価を上回ってしまいます。ベーカリー経営者の皆様は、大変な苦労をしながら商品開発をされているのだなと思い、敬意の念を禁じ得ません。
 ベーカリーでパンを製造販売する場合に、その原価率は30%前後にするのがいいと言われていますが、今回取材させて頂いた店では、それを基準にしながらも、それぞれの価値観に基づいて、色々な方法で原価管理をしていました。
 オーナーがイメージしたパンを作るために選んだ原材料の合計価格が、オーナーが考える適正な価格に対して高すぎる場合は、クオリティーが同等で価格が安い原材料を必死で探すか、オーナーがイメージしたパンのクオリティーを少し落とすかのどちらかしかないようにも思えますが、取材したベーカリーの一軒では、原材料費はそのままにして、最も平均的な原価率で比較的価格が安い商品の粗利額をそのままのせた額を売価にしているといいます。この場合、原価率は30%を超えても、売価が顧客の許容範囲内に収まっていれば、顧客にとってもいいし、店にとってもいいということになります。
 言い換えれば、製造と販売の手間が同じであれば、原価率ではなく、商品一個についての粗利を基準にして売価を決めていくということになります。こうすれば、自ずと、商品の特性に合わせた原価と売価のバランスのメリハリがついてくるのではないでしょうか。
 一方で、販売数量が多い看板商品的な商品で、原価率が低いものが一つでもあると有利です。今回取材したベーカリーのひとつでも、原価率が15%の看板商品があり、店全体の利益率向上に大きく貢献しているとのことでした。
 ベーカリーを経営していく上で、適正な販売価格というのは、永遠のテーマだと思いますが、今回の取材の中で、「同じ商品を100円台の価格から200円台の価格に値上げしたら、販売数量が半分になった」という話を聞きました。
 適正価格と一口に言っても、色々な定義の仕方があると思いますが、あるひとつの商品の適正価格を、その商品を販売して得られる粗利額の合計(販売数量×製品一つの粗利額)が最大になる販売価格と定義した時、前述の同じ商品を100円台から200円台に値上した場合で考えると、値上げ前が価格が180円、原価72円(原価率4割)で40個売れていて、値上げ後は価格が220円、原価72円(原価率約3割)で販売数が20個に減ったとすれば、値上げ前の粗利合計は4320円で、値上げ後の粗利合計は2960円になります。この場合、220円より180円の方が適正価格であることは明らかです。
 数字の話が続いて恐縮ですが、粗利がゼロ以下では、どんなに売っても粗利はゼロ以下ですから、粗利がゼロより大きいという条件で、原価が同じ場合の販売価格と販売個数との相関関係を調べて、粗利の合計が最も大きくなる販売価格と販売個数の組み合わせを探す作業が、適正価格を探す作業ということになります。(ただし、販売個数がかなり多くなった場合は、製造の人件費の問題も絡んできます。)
 ただ、適正価格を探すためにすべての販売価格と販売個数の組み合わせについて実証実験をすることは不可能ですし、論理的な予想をするにしても、膨大な数の条件を入力してコンピューターで行うことになるのでしょうが、かなり難しい作業になると思います。
 しかし、今回取材させて頂いたベーカリーから大きなヒントになる声が聞けました。
 「うちでは、最終的には、『他店との兼ね合い』『自店の中でのバランス』『原価』『売れそうな価格帯』の4つの観点から、これまでに培った経験をもとに総合的に判断して決めています」。(RO)







原価計算女王
原価計算女王

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