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特集/2021年7月号 |
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パンの原価管理について
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SHOP DATA
店名:ブラフベーカリー本店 住所:〒231‐0861 神奈川県横浜市中区元町2‐80‐9モトマチヒルクレスト1階 電話番号:045‐651‐4490 営業時間:午前8時~午後6時30分 定休日:なし 品揃え:平日70品目、土日100品目 スタッフ:製造常時平日9~10人(週末11~12人)、販売常時平日4人(週末5人) 店舗面積:厨房20坪、売り場9坪 |

思い切って食パンに力を集中し、売上より利益重視の店舗運営を実現 - パン工房小麦庵 | ||||||||||||||||
パン専門店とスーパーでは求められるものが違う 兵庫県神戸市の「パン工房小麦庵」は、食パンを中心とした品揃えに舵を切る事で、利益が出る体制づくりに成功したベーカリーだ。JR神戸線・山陽垂水駅近くにある本店のほか、同じ神戸市内の元町商店街の中にも店舗を構える。 「自分が適切と判断した値段で納得してくれるお客様を集め、値段を無闇に安くしないようにしよう」と同店店長の柏木雅彦さんが思うようになったのは、数々の勉強会に出席し、店の会計上の数値を見直すようになったことがきっかけだった。 もともとサラリーマンをしていたという柏木さんは27年前にパン職人へ転身。6年ほどの修行期間を経て独立し、自分で原価計算を行うようになったが、当時は特別なソフトを使用したりはせず、ただ自分でエクセル上に数値を入力していくだけだったという。 「どんぶり勘定に近い感じだったので、後々になって厳密に計算したら、利益はそんなに出ていなかったということもありました。店を始めてまもない頃は、全般的に商品の価格を安く設定しがちでした」(柏木さん) 一度試しに、スーパーマーケットなどで販売されているホールセールの商品と同水準の価格まで下げて販売してみた事があるが、販売数量は価格を下げる前とほとんど変わらなかったという。 「スーパーとベーカリーではお客様の求めるものが違うとわかりましたね。お客様はベーカリーには、その店でしか買えない価値のあるものを求めているのだから、価格はそれにふさわしい額をつければ良いという事がわかりました」(柏木さん) 思い切ってサンドイッチの販売をやめた 柏木さんはもともと神戸で長く自分の店を経営してきたが、その店を若手へ事業継承する形で離れた上で、現在代表を務める「パン工房小麦庵」の本店を、垂水駅前商店街に2017年6月に新たにオープンした。その際に思い切って食パンに力を入れる店へ転換したのだという。 若手へ事業継承した以前の店では食パンの売上は全体の2、3割だった。しかし新店の「パン工房小麦庵」本店では、食パン5種類と冷蔵ケースに入ったサンドイッチを販売。ほぼ食パン専門店に近い形だった。 さらに、しばらくして具材などの付加要素が多く原価の高いサンドイッチは思い切ってやめる事を決意し、冷蔵ケースを撤去。空いたスペースにさらに種類を拡大させた食パン類を陳列した。 「当時はまだ的確なオペレーションが確立していなくて、販売スタッフも慣れていなかったこともあり、宣伝や告知は一切せず、こっそりオープンした形でした」(柏木さん) その後はスタッフの成長の様子を見ながら食パン類以外の商品も追加。徐々に売り上げを拡大し、2019年には各県の話題の店などを紹介する有名なテレビ番組に取り上げられた事をきっかけに、食パン類を中心にさらに売り上げを伸ばす事ができた。 現在、「パン工房小麦庵」本店では食パン18アイテムとその他のパン類32アイテムを販売しているが、全体の売り上げの7割を食パンが占めている。 「オープン時と比べると5倍近くの売上規模になりましたね。昨今の食パンブームが後押ししてくれた面もあるかも知れません」(柏木さん) 昨年6月には「パン工房小麦庵」の2号店の元町店を神戸元町商店街の中にオープン。コロナ禍でのオープンとなったが、食パンの定番12アイテムと、季節商品の食パン1アイテムのみを販売する完全な食パン専門店とした。コロナ禍で商店街自体の人手は落ちたが、売上は採算が取れる範囲で推移しているという。 原価と売価のバランスにはメリハリが必要 「パン工房小麦庵」の平均原価水準は業界水準とほぼ同じ3割前後だ。ただし、餡や葡萄、栗といった具材やフィリングを入れる事で原価が上がり、どうしても3割ではおさまらない事もある。 そんな時は他店とのバランスを見て、利益率を多少抑えながらも売価を決めていくのだという。 現在、商品開発に関しては、基本的にスタッフに任せているが、最終チェックは柏木さんが行う。流れとしては、カロリーや原価、販売価格なども考慮した商品の案をスタッフに出してもらい、その案を見ながら柏木さんが原価管理に特化した市販のソフトで計算し直す。その結果が店の基準から外れるようであれば、適正な価格を柏木さんが決めるという。 ただし、2019年6月から販売している異色の高級食パン「極」(1・8斤税込2160円)だけは別格だという。「極」は同店の看板商品である「おいしい食パン」(1・8斤税込605円)をベースに、生地の熟成時間をさらに長くした上、採算を度外視した高級食材を使用して柏木さんが開発した商品。注文を受けてから1週間かけて作る商品のため1日10本の限定生産としている。 「『極』は作るのにとても手間がかかり、多くは作れないことなどを考えると、これだけの高額に設定せざるをえませんでした」(柏木さん) あまりに高額なので、発売前は柏木さん自身も注文が来るとは思っていなかったという。それでもリピーターを中心に予約は途切れる事はなく、現在1カ月250本ほどを製造・販売している。 「価格の相場だけでは測れない、店の個性やコンセプトを端的に表した高額な高付加価値商品を販売する一方で、日常に密着した買いやすい価格の商品も販売しています。商品ごとの原価と売価のバランスにメリハリをつける事で、最終的には採算が取れるよう調整していますね」(柏木さん) SHOP DATA 店名:パン工房 小麦庵 垂水駅前本店 住所:〒655-0027 兵庫県神戸市垂水区神田町4-26 電話:078‐708‐7774 営業時間:午前10時〜午後7時 定休日:日曜 品揃え:食パン類18品目、その他32品目 スタッフ:平日は製造常時3人、販売常時2人(土曜は製造常時3人、販売常時2人) 店舗面積:厨房10坪、売場4坪 月商:750万円 |
製造と販売のロスも組み込んだ原価管理。スタッフとも原価管理の意識を共有 - 川越ベーカリー楽楽 | |||||||||||||||||||
商品の特性を見て売価を設定する 埼玉県川越市の「菓子屋横丁」の一角にあるベーカリー「川越ベーカリー 楽楽」は、昨年秋からスタッフにも商品開発を任せるようになった事をきっかけに、商品の原価管理について見直すようになった。その結果、ロスも含めた本当の意味での原価管理が必要な事などがわかったという。 同店は石畳の通り沿いにレトロな感じの菓子屋、駄菓子屋が並ぶ人気観光スポット「菓子屋横丁」の中に、店主の上野岳也さんが2006年に開業。伝統的な川越の町屋を再現した建物で、北海道産小麦を使用した60種類ほどの商品を製造販売している。向かいには姉妹店でサンドイッチ専門店の「サンドイッチパーラー 楽楽」があるほか、同じく姉妹店で芋スイーツ専門店の「窯出し蜜いも ほくほく」も隣に立ち並び、3店を同時に運営する事で、観光地である川越の「菓子屋横丁」を盛り上げている。 「どの商品もなるべく、3割位までで原価設定できるようにはしています。ただ、食パンから惣菜パン、菓子パンまで様々な種類の商品があるので、それぞれの特性や店への貢献度に合わせて、原価や売価の設定に多少メリハリをつけてはいます」と岳也さんの妻で女将の祐子さんは説明する。 同店での一番の売れ筋は北海道産の小麦「キタノカオリ」を使用したシンプルな食パン「プレミアム食パン」(税込350円)と、パン生地に秩父味噌と餅粉をブレンドし、表面を味噌入りクッキー生地で仕上げた「お味噌のパン」(税込210円)だ。 そのうち「お味噌のパン」は、リピーターが多く、店の売り上げの1割強を占めるが、実は商品の特性上、原価率は15%と低いため店全体の利益率向上に大きく貢献している。 「『お味噌のパン』は、短い時間ですぐ出せるレシピのため労力をかけず、たくさん出す事ができます。売上が多く、原価率は低いので、店の運営に貢献してくれる大切な商品と言えます」(祐子さん) 「プレミアム食パン」は店全体の売り上げの2割位を占める基幹商品だが、原価率も国産小麦を使用しながら3割ほどを保っている。ただ消費者の日常に密着したシンプルな食パンという位置付けのため売価をこれより大きく上げる事はあまり考えていないという。 一方、具材が多い商品やサンドイッチは原価が高いため売価の設定には難しさも感じている。例えば惣菜パンでチーズをかなり使っている商品などはどうしても原価率が3割を超えてしまう。それでも具材たっぷりの目玉商品は、来店動機を形成するため、売価を極端に上げるわけにはいかない。 「そのため、具材が多くて原価が3割を超えてしまう場合は、一律の原価率にはこだわらず、店の中心価格帯になっている商品と同じ位の利益が出せれば良いという目安で売価を決めています」(祐子さん) 原価が高い目玉商品は、中心価格帯の商品に近い利幅が出るように売価を決めることで、高価にならず、しかも一定の利益を生む商品にする事ができるのだという。 |
「実は原価管理に関しては、今まで手計算でやってきた期間も長く、厳密な計算はできていませんでした」(祐子さん) それでも昨年の春頃、以前一時期購入していた市販の原価管理用計算ソフトを再度購入。店舗運営のあり方も含めて原価管理を見直そうと考えるようになったのだという。 さらに祐子さんが原価管理の問題を強く感じるようになったのは、昨年の秋から、商品開発の仕事をスタッフにもやってもらうようになった事がきっかけだ。 その時にスタッフがリニューアルして開発したメロンパンが思いもかけずヒット商品となった。商品開発の仕事が、スタッフのモチベーションを上げる事がわかったため、今後さらに商品開発に取り組んでもらうにあたって、原価管理の体制そのものを見直さなくてはならないと考えるようになった。 この春も「春フェア」と題した新商品の販売にあたって、スタッフ一人に一つずつ新商品を考えてもらったが、その際にスタッフ側でも原価計算して売価を提案してもらった。最終的に祐子さんが確認して売価を決める形で完成という形にしたが、その際には購入した原価計算ソフトを使用した。 「スタッフにはこうした原価管理の問題についても理解してもらいながら、商品開発に取り組んでいけるようになって欲しいと思うようになりました」(祐子さん) ロスを組み入れた原価管理が必要 「最近は、製造、販売の両面でのロスを考慮した上で本当の意味の原価管理をしていく必要があると感じています」(祐子さん) 「お味噌のパン」は再加工ができるのでロスを出さなくて済むが、他のパンの多くは二次加工ができないため、製造量の見極めは慎重に行っている。 姉妹店の「サンドイッチパーラー 楽楽」はサンドイッチという生鮮品を含む商品の性質上、ある程度作る個数を抑えて、その日のうちに完売させる事を目指している。なくなったら新しく作って継ぎ足しはするが、追っかけ過ぎず、どこかでこれで完売と見極めて、作るのを抑えているのだという。 コロナ禍の前には、ロスを抑えるのを目的に、午後からは注文を受けてから作る「ゴゴカラコッペパン」という商品もあった。 実は同店は、昨年のコロナ禍では、観光地にあるという立地条件のため、影響を受けざるをえなかったが、商品構成やオペレーションを見直すきっかけにはなったという。 例えば、前はもっと多かった生地の種類を、8種類ほどに絞り込んだほか、土日のみの限定商品の比率も拡大。 また緊急事態宣言をきっかけにデリバリーのサービスを強化する様になったほか、地元の商業施設内にある直売所で販売したり、市が運営する農産物の販売所で地元生産者とのコラボ商品を販売したりもした。それにより、製造の段階での原材料ロスと販売の面でのチャンスロスの削減につながったと感じている。 「今後はオペレーションの問題をさらに見直しながら、ロスも含めた適正な原価管理につなげていければと考えています」(祐子さん) SHOP DARA 店名:川越ベーカリー楽楽 住所:〒350‐0062 埼玉県川越市元町2‐10‐13(菓子屋横丁内) 電話:049‐257‐7200 営業時間:午前8時~午後4時(コロナ禍のため短縮営業) 定休日:基本的に無休(不定休あり) 品揃え:約60品目 スタッフ:製造常時平日3人、週末4人、販売常時平日1人、週末2人 店舗面積:厨房9坪、売り場4坪 日商:平日20万円、土日祝40万円 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。