自分らしい営業の仕方で続ける - 自家製こうぼパン ちまちま - ブランスリー電子版


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お店拝見/2020年11月号

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自分らしい営業の仕方で続ける - 自家製こうぼパン ちまちま
「自家製こうぼパン ちまちま」の店内。店舗販売の日は、ガラスのショーケースにパンが並ぶ
店主の田中さち子さん
現在の品目数は約20。パンはハード系がメインだが、ソフトな食感の菓子パンもある
秋、冬限定の「クロワッサン」(税込220円)
秋、冬限定の「クロワッサン」の断面
店舗販売は週1日で、卸販売とネット販売も

 福岡県北九州市にある「自家製こうぼパン ちまちま」の店主、田中さち子さんは、パンの製造や販売など店の仕事の一切を一人で行っている。
 田中さんは開業前、当時東京・町田市にあった「チクテベーカリー」(現在は八王子市に移転)で修行した。同ベーカリーも、田中さんが入社するまでは店主が一人で切り盛りしていたという。
 「オーナーが一人で働いている姿を見ていた影響はあると思いますね。自分も開業したら一人でやるだろうと、自然とそう考えるようになっていったのだと思います」(田中さん)
 店舗は、売り場が2・5坪ほどで、そこに約20品目のパンが並ぶガラスのショーケースが置かれている。しかしその光景が見られるのは、土曜日だけ。店舗販売は、毎週土曜の週に一日に限っているのだ。販売はほかに、毎月2回ほど、約1キロ離れたカフェを併設した雑貨店での卸販売や、週に一度の頻度で発送するネット通販を行っている。
 厨房の広さは4・5坪ほどで、機械はオーブンと冷蔵庫だけ。ミキサーはない。
 「ミキサーを使うほどの量は作らないからです。ミキサーを使う場合、生地が適量より少なければ生地が傷んでしまいますしね。すべて手捏ねでやっているのですが、捏ねているとき、触り心地で生地の状態がわかります。生地の状態が分かれば、その後の工程で調整していくことができます」(田中さん)
 ミキシングをすべて手作業で行うのは重労働だ。しかし、「捏ね始めてからパンをお客様にお渡しするまでが楽しいとき」と語る田中さんにとって、手捏ねの作業は、店を営む原動力になっているようだ。
 田中さんが作るパンは、ハード系に限らず菓子パンも、ずっしりとした重みがあるのが特徴。噛むほどにじわじわ出てくる味や風味がある。
 「パン酵母は自家製酵母だけを使い、小麦は国産で、主に地元福岡県産のものを使用しています。みっちりとしながらも弾力があって、食べやすい食感になるように仕上げています」(田中さん)
 現在一番人気は「パンドミ プレーン」(税込430円)で、開業当初からの定番商品だ。小麦粉は福岡県産をメインに、ボリュームや軽さを出すため北海道産を少し加えている。
 開業当初は現在の半分以下の品目数だった。そんな中、「パンドミ」とともに定番だったのはベーグルと、黒糖入り生地で作るパン。
 ベーグルは「ベーグル プレーン」(税込220円)や「ベーグル クルミチーズ」(税込270円)、「ベーグル 大納言小豆」(税込260円)など6種類。自家製酵母を使用しているが酸味はほとんど感じられないため、初めての客にも勧めやすいという。
 黒糖入り生地で作るパンは、それぞれたっぷりのクリームチーズを包んだ「黒パン ブルーベリーチーズ」(税込240円)と「黒パン 大納言チーズ」(税込240円)の2種類。黒糖のほかに、全粒粉も配合しているため、コクや風味が強い。食感はしっとりしていて程よい甘さがある。直径7センチほどの小ぶりながら、味や風味が凝縮されていて満足感がある。



SNSではパンに使用している材料のことや、プライベートの食事のことなどを発信している
ネット通販限定の「おまかせパンセット(カンパーニュ)」(税込2500円)は、「カンパーニュ」「ベーグル 大納言小豆」「塩パン」など9品目
「カンパーニュ」(税込820円)の断面
「ベーグル 大納言小豆」(税込260円)の断面
流れ作業にはせずに楽しんでパンを作りたい

 「楽しみながらしたいんです」と田中さんはいう。
 製造と販売の頻度を抑えた同店のやり方は、田中さんのこの思いからだ。
 「今、パンを焼くのは週に1~2回なんですが、もし毎日やっていたら、忙しくなって楽しめるかどうかわからないと思います。流れ作業のようになってしまうのではないかと考えたりします」(田中さん)
 田中さんには小学生以下の3人の子どもがおり、現在子育ての真っただ中。店舗販売を土曜日にしているのは、会社が休みの夫が子どもたちの世話をしてくれるからだという。そして翌日の日曜日は、家族と過ごす日と決めている。
 同店のフェイスブックのアカウントでは、商品情報やイベント出店情報などの営業に関するものに限らず、田中さんの子どもの様子や、ある日の晩御飯のことなど、プライベートな内容もしばしばつづられている。
 「店舗販売では、子育て中のお客様をかなりお見受けします。子どもに安心して食べさせたいという思いは皆さん共通だと思うので、当店のパンに使っている無農薬野菜や農家さんのことなども、SNSで発信しています。プライベートなことを載せているのは、作り手である自分の趣味嗜好を、知ってもらえたらという思いからです。もし何か共感していただけることがあったら、パンにも興味を持ってもらえるかなと思うんです。内容は、通販だけのお客様や、来店したことがない方でも、楽しめるものにすることを心がけています」(田中さん)

好きなことを続けていくために

 田中さんは、子どものときから菓子作りが好きで、製菓製パン業に就くことを考えていたという。しかし実際は理系の学校へ進学し、その分野の会社に就職。しかし、休みの日はベーカリー巡りを楽しんでいた。そんな中「チクテベーカリー」と出合ったことを機に、会社勤めを4年で切り上げることを決断。
 「客として通いはじめ、ちょっとずつお手伝いをさせてもらうようになって。それから正式に入社させてもらいました」(田中さん)
 開業への意識は最初はなかったが、働いていく中で強くなっていき、オーナーとも話すようになっていった。店が休みの日は、厨房を借りて練習のためにパンを作らせてもらったという。同店では約2年働き、その後結婚。そして2008年、東京・品川区で開業した。
 「店舗の営業は週3日。あとは派遣で事務の仕事を週3日していました。テナントだったので賃料を稼ぐためです。広告などはいっさい出さずに、宣伝なしに始めたので、決まった収入がないと厳しいなと思って」(田中さん)
 東京では約1年間の営業となった。夫の転勤に伴い、北九州に移ったからだ。現在の店舗での営業は2011年からとなる。
 先日オンラインで開催された「麦フェス2020」(新麦コレクション)に初めて参加し、目標数にほぼ近い数のパンを販売することができた。
 「今まで注文のなかった方と繋がることができ、そうした方々に当店を知って頂くことができました。自分の製造能力を試すいい機会にもなり、店舗営業日を増やすことも検討していきたいと思えるようになりました」(田中さん)

店名:自家製こうぼパン ちまちま
住所:〒802‐0023福岡県北九州市小倉北区下富野1‐9‐28
電話:090‐7345‐2211
営業時間:午前11時~午後6時
定休日:土曜以外(営業は土曜のみ)
品揃え:約20品目
スタッフ:製造常時1人、販売常時1人
店舗面積:売り場約2・5坪、厨房4・5坪
年商:約150万円(通販と卸販売を含む)



この記事の読みどころ

●店舗販売は、毎週土曜の週に一日に限っている。
●楽しみながらパンを作り、楽しみながら顧客と接する。
●すべて手捏ねで、その触り心地で生地の状態がわかり、その後の工程で色々な調整ができる。
●SNSで自分の私生活の出来事も発信し、顧客との共感を深める。

※あくまで編集部からの提案です。このほかにも様々な読みどころがあると思いますので、読者の皆様の視点で、エッセンスを抽出してください。





原価計算女王
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