サーカスのような感動できる場所 - アヤパン - ブランスリー電子版


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お店拝見/2019年10月号

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サーカスのような感動できる場所 - アヤパン
サーカスをイメージして、近所の画家が描いた壁画、キリン、鉄棒、台車など正面にを配した「アヤパン」の店舗の外観
「アヤパン」の店長、守谷彩さん
ショーケースの上にマトリョーシカ(ロシアの民芸品の人形)やレトロな赤い電話機が置かれて異国情緒漂う雰囲気。奥の右側にはオーブンがある
3段構造のショーケースに取材時は20種類前後並んでいた。売り場は2人入ればいっぱいになる
定番の「アヤ パン・ド・ミ」(税抜250円)
色鮮やかなサンドイッチは3種類。「ハムタマゴサンド」(右、税抜240円)、「エビとブロッコリーのタルタルソース」(中央、税抜380円)など
ショーケースで清涼感を演出する

 東急東横線多摩川駅から歩くこと約10分、閑静な住宅街の一角に紅白ストライプのテントを模したひさしのある店が現れる。東京・大田区のベーカリー「アヤパン」だ。壁面には、近所の画家が好意で描いてくれたという、サーカスと食パンをモチーフにした夢のある絵がある。入り口の脇では、3頭のキリンの人形が客を出迎える。
 自らの肩書をサーカス団の団長と表現するオーナーシェフの守谷彩さんが、5年前に開業した。
 「サーカスが大好きなんです。子どものときに見たのはたった一度ですが、純粋にわーっと、驚いたり感動したりしたことが、強烈に印象に残っています。そういう感動できる場所を、住宅街の日常の中にもつくりたい、おいしそうって感動したり、おいしいって喜んだりしていただける、サーカスみたいな店にしたいと思って開業しました」(守谷さん)
 店内は、同店のイメージカラーである赤色のショーケースが一台。客が2人入ったらいっぱいになってしまうほどのスペースで、対面販売となっている。
 ショーケースの中は上段、中段、下段の3段になっており、取材時は約20種類のパンが並んでいた。昼前の時間帯とあって、ランチ需要の高い「ハムタマゴサンド」(税抜240円)などのサンドイッチが3種類、最も目立つ上段の中寄りに並び、その下の中段には「シンプルスコーン」(税抜150円)などのスコーンが4種類。サンドイッチは、紫キャベツやニンジンなどの色の濃い野菜が鮮やかで、スコーンも4種類それぞれ色が異なっていてカラフルな見た目だ。守谷さんは、「ショーケースを全体で見て、お客様の目にどう映るかを考えながら陳列しています」と言う。
 バナナを練り込んだ生地に、ビスキー生地とバナナのスライスをトッピングして焼き上げた「バナナ食パン」(税抜500円)は定番アイテムで、ショーケースに並ぶが、下段の隅だ。
 「いつもある商品なので、目立たせなくてもいいということもあるのですが、それより見た目が夏向きではないかなという判断の方が大きいと思います。猛暑の中来ていただいたお客様には、野菜たっぷりだったり、レモンやミントを使っていたりというような、少しでも涼し気に見える商品を、まず最初に見ていただけるような陳列を心がけています」(守谷さん)
 レモンを使った商品は、「レモンベーコンエピ」(税抜200円)。ベーコンの上にレモンスライスがのった、見た目にも爽やかなベーコンエピだ。さらに、具のベーコンはそのままでなく、「塩気が食欲をそそって、さっぱり食べられる味わい」(守谷さん)という塩だれで調理している。見た目だけでなく、味の面でも、夏にぴったりだと納得させられる味付けに変化させている。
 4種類あるスコーンのうちの一つ、「ミントチョコスコーン」(税抜170円)は、まるで見た目はミントチョコ味のアイスクリームのよう。食べてもサクサクとした食感とともに、ミントの清涼感が感じられる。
 先日販売したカツサンドは、キャベツではなく大根の千切りをたっぷりサンドした。
 「見た目にもシャキシャキした歯ごたえとみずみずしさが感じられるカツサンドにしたいと思いました。食べたときに、口の中もさっぱりしていいですよ」(守谷さん)



「バナナ食パン」(税抜500円)と同じ生地で作った「バナナロール」(税抜80円)
「バナナロール」の断面(左)
スコーンは4種類あり、カラフルな見た目
「ミントチョコスコーン」(左、税抜170円)と「シンプルスコーン」(税抜150円)の各断面
「レモンベーコンエピ」(税抜200円)は、塩だれ味のベーコンの上にレモンスライスがのっている
「レモンベーコンエピ」の断面
気分次第の品揃えでわくわく感を出す

 ショーケースの中をよく見てみると、プライスカードがついていない商品がちらほらある。理由は、「毎日作るものが違い、プライスカードの用意が追い付かないから」(守谷さん)だという。
 購入客の様子を見ていると、「これは何ですか」と訊ねる人だけでなく、見た目だけで、価格も訊かずに購入する人もいた。価格は「買うのに迷うほどの高さにはしたくない」(守谷さん)そうで、客もそれを知って慣れているからか、安心して購入している。
 「ほとんど一人で作っているので、毎日何を作るのかは、自分の気分次第です。いつもある定番は、『アヤ パン・ド・ミ』(税抜250円)や、『バナナ食パン』くらいで、ほかは全部日替わりだとお客様にもお伝えしています。ですので、予約専用の電話番号を用意していて、食べたいパンが決まっているときは、事前に電話をいただくようにしています」(守谷さん)
 品揃えも、25種類前後のときもあれば、多いと40種類のときもある。取材時に目立ったのはスコーンの種類展開だが、あるときは食パンが8種類も揃うときもある。
 取材時、昼前から仕込みをしていたのは、キーマカレー。夕方に出す予定だ。意外にも、パンの具にするのではなく、ご飯とセットにするという。
 「昨日テレビで見たキーマカレーがとてもおいしそうだったので。当店はパン屋ですが、ご飯も出しますし、お惣菜を出すこともあります。回転ずし店のメニュー展開の面白さを見習っています」(守谷さん)
 来店する度に、ショーケースの中の顔ぶれが変わる。中身の具やトッピングが変わる程度ではなく、ご飯や総菜などパン以外のものもときに並ぶ。まるでサーカスのテントをくぐるようなわくわく感に溢れている。
 8月に10日間ほど臨時休業を取った。厨房の改装工事をするためだ。近所の人々を集めてパン教室を行っていきたいという。
 「親が病気で長生きできなかったことが一番のきっかけですが、皆さんに健康で元気に過ごしてもらうために、パン教室の開催が役立つのではないかと考えました。食は一生関わるものですし、指先を動かしてパンを作ることは脳にいい刺激になります。大人にも、食育が必要な子どもにも、ここでいい体験をしてもらいたいと思っています」(守谷さん)
 今年の暮れに、出産を控えているという守谷さん。同店はできるだけ休まない予定だというが、無理をしてまで頑張ることは、今現在もしていないようだ。
 「疲れたときは、お客様に正直に『疲れました』と言ってしまいます。お客様がありがたいことに共感してくださるので心強く、やれるだけやるという気持ちで毎日挑めます」(守谷さん)

SHOP DATA
店名:アヤパン
店名:〒145‐0072 東京都大田区田園調布本町45‐12
電話番号:080‐6564‐8454
営業時間:午前10時(土日は午前8時)~午後7時
定休日:月曜、火曜
品揃え:20~30品目
スタッフ:製造常時1~2人、販売常時1~2人
店舗面積:売り場3坪、厨房6坪
日商:平日約7万円、土日約12万円



この記事の読みどころ

●オーナーシェフは、自らの肩書をサーカス団の団長と表現する。
●数点の定番商品以外は、すべて日替わり商品。ほとんど一人で作っているので、毎日何を作るかは、自分の気分次第で決める。
●毎日商品が変わるので、初めて購入するのにも、迷わない範囲に価格を抑えている。

※あくまで編集部からの提案です。このほかにも様々な読みどころがあると思いますので、読者の皆様の視点で、エッセンスを抽出してください。





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