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連載/2017年7月号 |
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職人の技を競うパンの世界コンクール - 一粒の麦から38(文・本行恵子) | |
製パン技術を競う世界規模のコンクールには、フランスの「クープ・デュ・モンド・ド・ラ・ブーランジュリー」「モンディアル・デュ・パン」、ドイツの「イバカップ」、イタリアの「シゲップ・インターナショナル・ベーキング・カップ」などがあります。一番歴史の長い「クープ・デュ・モンド・ド・ラ・ブーランジュリー」は、1992年に第1回目を開催。日本がパンの世界大会に初めて出場したのは、1994年に開催された「クープ・デュ・モンド・ド・ラ・ブーランジュリー」の第2回目からでした。それ以来毎回出場してきた日本は、2002年と2012年の2回、優勝カップを獲得。そして「イバカップ」は、2015年に初優勝しました。また他の日本代表選手たちもそれぞれの大会で上位入賞や部門別で受賞し、その経験を活かし活躍の場が広がっています。
パンの世界大会の取材を通じて思うのは、試合に臨む代表選手たちの国旗を背負う重圧です。今でもそれは変わりませんが、時代と共に選手の年齢が若返り意識も変化してきたようです。大会では世界中のパン職人と技術を競い合うだけでなく、言葉の壁を越えた職人同士の交流も生まれています。優勝だけが全てではないのです。かつてパンの世界大会に挑戦するのは大手企業のパン職人が中心でしたが、最近はリテールベーカリーのオーナーシェフ、店長、若手スタッフも増えてきました。一つのきっかけとなったのは、2005年に開かれた「クープ・デュ・モンド・ド・ラ・ブーランジュリー」の日本代表選手、成瀬正さん(トラン・ブルーオーナーシェフ)の挑戦でした。岐阜県高山市の老舗の3代目として「地方のベーカリーにも光を当てたい」という思いから、初めて個人店のオーナーシェフとして世界に通用するパン職人を目指しました。試合当日のアクシデントもあり優勝は逃しましたが、チームを組んだ吉川崇さん、橋本高広さんと一緒に冷静に対応し3位に入賞。地方のパン屋さんが注目を集めるようになりました。そして「イバカップ2015」で優勝した渋谷則俊さん(冨士屋オーナーシェフ)も、大正時代から続く新潟の老舗です。「ドイツパン菓子勉強会」に入会し仲間たちに刺激を受け、今までパンのコンクールとは無縁だった日常が大きく変わったそうです。日本代表として渋谷さんと共に出場した浅井一浩さん(ラ・タヴォラ ディ オーヴェルニュ店長)も、オーナーの井上克哉さんとの出会いがイバカップに挑戦したきっかけです。リテールベーカリーの活躍が、注目されるようになりました。 若手育成に繋がるパンの世界大会 2007年にスタートした「モンディアル・デュ・パン」は、フランスのパン職人協会「ル・アンバサドゥール・デュ・パン」が主催し、テーマに「パンと健康」を掲げているのが特徴です。また応募資格は25歳以上(経験5年以上)のパン職人と、22歳以下のアシスタントがペアで出場することが義務付けられています。若手にもチャンスが与えられ、応募者も増えています。 前回の日本代表選手の谷口佳典さん(フリアンド シェフブーランジェ)は「大会に挑戦することは、貴重な体験になります。世界中のパン職人との人脈も広がり、お互いの技術を学ぶ場にもなります。若いうちに与えられたチャンスを最大限生かし、目標を持つことで成長します」と後輩たちにも大会の参加を勧めています。 そして次の第6回大会は、今年の10月にフランスのナントで開催されます。日本代表選手は松田武司さん(ヴィロン)、アシスタントは渡邉一憲さん(マリアージュ・ドゥ・ファリーヌ製パンスタッフ)が務めます。 フランス本部から講師を招き講習会 「モンディアル・デュ・パン」の日本の窓口になっているレ・アンバサドゥール・デュ・パン・ジャポン(川良弘会長)は、5月24日、フランスの本部からマーク・ルドルス氏を招き、大阪と東京で講習会を開催しました。 同氏はブルターニュ地方出身のブーランジェで、クープ・ド・ヨーロッパ チャンピオン、第3回モンディアル・デュ・パン2位受賞の経歴がある他、飾りパンアドバイザーとしても世界的に活躍している職人です。当日はブルターニュ地方のヴィエノワズリ―などのパンを9品と、日本では初公開の画期的な飾りパン技術を紹介しました。 会場には日本代表選手を務めた安倍竜三さん(ブーランジュリー・パリゴオーナーシェフ)や大勢の若手パン職人が集まり、講師の技を熱心に学び、次なる大会への挑戦に備えていました。 本行 恵子(ほんぎょう けいこ) パンと食のライター。家庭製パン教室を10年間主宰した後、パン業界専門誌『B&C』の編集記者、編集長として勤務。16年間の在職中、日本各地のリテールベーカリーや欧米、アジア諸国を訪問し、パンと食文化を取材。現在はフリーの立場で、業界専門誌や企業ホームページでの執筆活動、業界関連団体への企画提案などを行っている。ライフワークは、パンのある食卓の提案。 |



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