アメリカのリテールベーカリー組織の紹介 - 高橋秀尚=(株)パンワールド代表取締役、海外情報研究会主宰 / - ブランスリー電子版


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海外情報(21)/2002年10月号

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アメリカのリテールベーカリー組織の紹介 - 高橋秀尚=(株)パンワールド代表取締役、海外情報研究会主宰


極めて実務的な活動をするRBA

米国のリテールベーカリーの団体
アメリカのベーカリー業界に少しでも興味をお持ちの方であれば、RBAという組織について聞いたことがおありであろう。年商総額が6兆円を超える世界最大の製パン市場規模を持つこの国は、スーパーマーケットが主力であるとはいうものの、あらゆる人種が存在する特殊性によりパンの種類も私たちが想像する以上に多種多様であり、その商品開発を担っているのがリテールベーカリーである。
実際これらのベーカリーのオーナーに会ってみると、仕事が何よりも大好き、人柄が温厚といったいまどき珍しいとも思える好人物が多い。このようなリテールベーカリーのための組織がRBAなのだが、発足したのは1918年というから既に80年以上の歴史がある由緒ある組織である。
ただしRBAという略称は以前は「リテールベーカリー協会」を表わしていたが、5年前に「リテーラーズベーカリー協会」と改称されている。これは重大な意味を持っている。つまり以前はリテールベーカリーの市場シェアが高く、消費者の多くは自宅近くのリテールベーカリーでパン類を買うことが多かったのだが、近年はスーパーマーケットで買う割合が増えたことの結果である。リテーラー(小売業者)の多くが以前は家族経営の小規模店舗であったものが、近年はスーパーマーケットのインストアベーカリーなどが加わったという現状を加味して、組織の名称を変えたというのがお家の事情である。
組織の仕事をする役員は毎年選ばれるが、今年の例を見ると20人のうちでリテールベーカリー代表が17人、残りの3人はセーフウェイを含む有力スーパーマーケットのインストアベーカリー代表者である。これは以前には考えられなかったことである。つまり今なおリテールベーカリーの有力なライバルはスーパーマーケットのインストアベーカリーであるから、呉越同舟もやむを得ないという苦しい内情がからんでいるのだ。
もっとも商品開発を含む多くの情報交換が必要であることを考えれば、これらの異業種交換は意義があるとも思われる。

スーパーセンターの台頭はかなりの脅威に
 さらに、将来いったい何が起こるかを考えてみると、例えばウォルマートに代表されるスーパーセンターの台頭がある。
 ベーカリーに力を入れているスーパーセンターの進出には、リテールはもちろん、スーパーマーケットのインストアベーカリーも脅威を抱いている。したがって今のうちに商品開発など情報交換のリンク(連携)を作っておくことが重要であることを既に認識していると思う。
 今後数年間、アメリカのベーカリー業界事情は目が離せないだろう。
 そして日本にも数年のタイムラグをおいて同様の変化が伝わってくると思われる。

活動目標は成功をもたらすこと
さて、前置きが長くなったが、この組織の最近の変化を知っていただいたところで、彼らの活動内容をご紹介しよう。
会員数は約1万人、企業数は約4000社である。日本人の会員は筆者のほかにもう一人の名前が会員名簿にあるが、展示会などでお会いしたことはない。本部はアメリカ東部のメリーランド州にあるが、アメリカ全土を6支部に分けて、それぞれの活動拠点を持っている。
会員はリテーラー会員(つまりベーカリー)と、アライド会員(関連業界)に区別されるが、筆者は後者に参加しており、年会費は250ドル(約3万円)であるから、それほど高額ではない。ただし、700ドルという特別会員制度もある。
活動目標(パーパス)は「サクセス、つまり成功をもたらすこと」、ビジョンは「ベーカリーフーズを販売することを目的とするビジネスのための組織であり、そのための技術と情報を提供すること」、ミッション(役目)は「会員の販売促進に貢献し、経費の軽減を図る。また、情報、知識を向上させ、労働条件の改善を図ること」とそれぞれ会則に明記してある。
日本の場合は例えば、「会員相互の親睦を図る」などのあいまいな文章で表現されることが多いが、アメリカの場合はそのような生ぬるいことでは会員の賛同を得られないのであろう。

仕事を離れて気分を変えたい
ただし、リテールベーカーが孤独なのは日本もアメリカも同様であり、会員となることをすすめる印刷物には「会員になれば、あなたもホーム、つまり家にいるのと同様の心の安らぎを得ることができます」とうたっている。
またこの団体は年に1度の展示会を開催するが、会員に展示会参加の目的・意義のアンケートをしたところ、もっとも多かったのが「仕事を離れて気分を変えたい」であったのは本音が伺えておもしろかった。この展示会は今年も10月初めに東海岸のNJ州で開かれるが、ここは交通の便が悪いので、毎年参加している筆者も思案しているところだ。展示内容はお馴染みのラスベガスとは異なり、リテールベーカリー向けである。
もっとも最近はコンピューターを使った商品開発や製造管理などの展示も加わったのが時流といえよう。

RBAのさまざまな活動内容
さて、RBAの活動内容の中で特に参考になると思われるものをご紹介する。
(1)商品開発のためのレシピ提供 これは会員になることが条件であるが今年中に実現する予定で、ベーカリー商品のレシピをオンラインで入手できるサービスである。注目すべきは、そのレシピ提供者は会員自身であることで、まさに相互援助の精神である。
(2)本部とのホットラインによる技術指導 何か問題が起きた場合に本部に直接連絡をして指導してもらうというシステム。本部には技術指導者が常駐していないので、会員の中から担当者を選んで指導してもらうということだろう。
(3)ベーカリー技術資格制度 ドイツにおけるベッカーマイスター制度が有名であるが、アメリカにもRBAがこのような資格認定制度を設けている。その内容は次のように資格レベルを3段階に区別している。
   ◇
▼レベル1=ジャニー ベーカー
▼レベル2=サーティファイド ベーカー、サーティファイド デコレーター、サーティファイド ブレッド ベーカー
▼レベル3=マスター ベーカー
もっともレベルの低い「ジャニー ベーカー」の資格を取得するためには次のような条件が必要になる。
▽ブレッド、ロール、パイ、クッキー、デザートなどベーカリー商品の製造補助に最低2000時間以上の実務経験および現場における教育実習▽筆記試験および実技試験の合格
レベル2のサーティファイド資格は次の通りだ。
▽通常のリテールベーカリーの製造現場において責任者としての経験があること▽教育機関、政府機関による30時間の「食品衛生教育」を終了していること▽前述のジャニー ベーカー資格保持者は3年間、非保持者は4年間の実務経験があること▽筆記試験、実技試験の合格
なお、サーティファイド デコレーターとはアメリカに多くみられる特注ケーキ類のデコレーションなどを担当する職種で、特殊な技術を持つとされ、時給もブレッド、ロール担当のベーカーより少し高いとされる。実技試験の内容もアイシングから、ケーキデコレーションまでのすべてを審査される。
また、サーティファイド ブレッド ベーカーはさらに広範囲な知識と製造管理能力をもつことが要求される。
そして、もっともレベルの高いサーティファイド マスター ベーカーに合格すれば、名刺に誇らしげに略称のCMBと印刷され、RBAの会報に写真入りで合格発表記事が掲載される。
その資格取得には、▽技術、理論の両面で優れていること▽労務、人事、財務に経験と知識を持つこと▽人的管理能力があること▽30時間の食品衛生教育を終了▽30時間以上の「チームワーク、スーパーバイジングなど企業、人事管理」に関する指定された機関での教育を終了していること、が要求される。
アメリカのリテールベーカリー業界においては、CMB資格を取得することが職業的プライドの最終目的であろう。

(4)「ビジネス インシュアランス プラン」 リテールベーカリーのための火災、家屋損傷、従業員支援などの保証制度。
(5)マーチャント サービス プログラム リテールベーカリーでの支払いは客単価が低いこともあって、現金決済が多いが、RBAが導入したクレジットカード、デビットカードでの支払いシステムは客単価を上げることに効果があるという。NPCという会社とタイアップして、このシステム導入を推進している。
(6)ATMの導入 店内にATM機器を設置することをRBAが斡旋している。
(7)年に1回の総合展示会および関連セミナーの開催 約500社が出展する。同時にケーキデコレーションのコンテストが開催される。
(8)各種出版物の刊行 商品開発、企業管理などに関する各種の参考資料を準備。
   ◇
以上が、アメリカのリテールベーカリー業界を支えるRBAの紹介であるが、それでは日本の現状はいかがなものであろうか? 世界第2位の製パン業界市場規模を持つ国としてはRBAのような極めて実務的な活動をしている団体がないように思われる。今後の大きな課題といえよう。なお、参考資料として、次ページにアメリカのリテールベーカリーで見つけた製品のいくつかを写真で紹介しておく。









アメリカのリテールベーカリーで見つけました!


リテールベーカリー商品の特徴は、手作りを生かすこと。このように造形クッキーにも工夫とアイデアがこめられている。

オーナーが手作りしたキャラクター商品は、特に子供に人気がある。

同じクッキー類だが、チョコレートをトッピングした朝食、コーヒータイム用の商品

このような箱に入れて特注の商品を売る。パーティーなどに人気がある。

デニッシュもSMのインストアには見られない特徴を出すことが求められる。

パウンドケーキも店頭でスライスして、スナック用として、イートインさせている。

これもサンドイッチの一例だが、パンがフレッシュなので特に人気がある。

バゲット(フレンチブレッド)サンドイッチもランチ用アイテムとして人気。リテールベーカリーならではのフィリングが目を引く。

最近になって人気が出てきた中近東のフラットブレッドのMANOUCHER(マノーチャ)。2つ折りしてサンドイッチにすれば、ヘルシー商品として特化できる。










原価計算女王
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