地域と相思相愛を保ち62年 - パン工房 ときわ堂食彩館 - ブランスリー電子版


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お店拝見/2016年12月号

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地域と相思相愛を保ち62年 - パン工房 ときわ堂食彩館
コッペパンで一番人気の「あんこマーガリン」(手前、税込184円)と二番人気の「ピーナッツ」(税込184円)
ハロウィンで賑わう様子が外からも伺える「パン工房 ときわ堂食彩館」
9月後半から10月にかけては、ハロウィンの飾り付けをする
チーフの林健太郎さん
わかりやすく居心地の良いベーカリー

 小学校や郵便局が立ち並ぶ、足立区の住宅街にあるベーカリー「ときわ堂食彩館」。1954年8月に開業し、今年創業62年の同店は、地元に数多くのリピーターを抱え、遠方からの客も珍しくない人気店だ。
 その理由は、店に入ると伝わって来る。
 まず目に入るのは、賑やかに店内を彩るハロウィンの飾り。この明るい出迎えによって「楽しいパン屋さんに来た」という気分になる。そして、店内の導線は、入り口からぐるりと右回りに回遊することで、ほぼすべての商品を見てレジに辿り着くつくりだ。調理パン、菓子パンなどの定番商品、イチオシ商品を経て、季節もののハロウィンアイテムを眺める。感覚的にこのスムーズさに乗って行ける導線なのだ。そして、最後のレジ前で巡り合うのが、 同店の一番人気であり創業以来のヒット製品「コッペパン」(プレーン税込108円)。
 このコッペパンは、アイスクリーム店のようにケースの中に並ぶフィリングを見ながら挟むものを選んで注文する仕組み。種類は「あんこ」「苺ジャム」「黒みつ」「きなこ」「ピーナッツ」「カスタード」「マーガリン」など。不動の一番人気は通称「アンバタ」の「あんこマーガリン」(税込184円)。特徴は、ふわっとした中身とパリッとした皮を持つコッペパンと、ほんのりした自然な甘さのあんこ、口当たりが滑らかで味わい深いマーガリンの醸し出すハーモニー。まさに手作りの温かさとやさしさを感じる味だ。
 創業から変わらないコッペパンの味を守り続ける一方で、新しい要素も見逃さない。「今月ならハロウィンにちなんだ『かぼちゃプリン』のように、マンスリーフィリングもやっています。また、『コーヒー』のフィリングはお客様のご要望で登場しました。実は、リクエストされたのはお一人だったのですが、ずっと『コーヒー』をというお声を頂いていていたので、商品化しました」と、製造チーフの林健太郎さん。
 製品開発を工夫し、数少ない声であっても客の声として反映することもある。こういった姿勢からは、新鮮さを取り入れる努力と、客一人一人へ向けられた心遣いを感じる。
 同店には、入り口から左側に荷物置き場がある。「近くにスーパーがあるから、買い物帰りのお客様が寄られるんです。それで設置しました」と林さん。ちょっとした工夫も、客への配慮から生まれている。



「こだわりマイルドカレー」(税込184円)。2時間じっくり煮込んだ自家製カレーを使っている
「男爵コロッケコッペ」(税込248円)。さっくり焼きあがったコロッケは、噛み締めると、ふんわり滑らかな触感のポテトの味がする
人気の菓子パン「クロワッサンマフィン」(税込248円)。菓子パンには、洋菓子の技術が受け継がれている
荷物置き場にもハロウィン装飾が施されていた
オーブンからまっすぐ運ばれた焼きたての食パンが並ぶ
フィリングの試食も出来る。毎月新メニューが出るので、試食も人気。その場で選んで作ってくれるライブ感が楽しい
三世代に愛される手作りパン

 同店の品揃えは、子供から年配者まで幅広い客層に対応したもの。創業からの客が、子供世代や孫世代を連れて訪れ、新しい世代がまた個々にリピートしているという。
 「傾向を見ていると、ご自分一人用に買って行かれるより、複数人で召し上がる個数をお買い上げです。ご家族でシェアしているのかなと想像します。コッペパンも、『アンバタ』単品で売れるというより、複数のフィリングの中に『アンバタ』が選ばれる率が高いですね。切り分けて皆さんで色んな味を食べていらっしゃるのかも知れません」(林さん)
 また、同店の特徴は「手作り無添加パン」。中に何が入っているかすべて説明できる商品である事も同店のこだわり。子供も安心して食べられる食品作りをしているという。
 「シニア層は『あんぱん』『クリームパン』といった定番商品を好まれます。一方で、若い方は珍しい新製品もお好きです。家族の健康を考えるお母さん世代はライ麦パンも召し上がります。一人一人に向けたパンをご用意したいのです」(林さん)
 同店が行ったアンケートによると、週に一度のリピーターが最も比率が高い。週に3~4日、毎日来店、というファンの姿も少なくない。
 また、同店では半年に一回程度の周期でセールを行っている。セール日を決めるときも、「この日は小学校の運動会があるから、来られないお客様が多い」などと、地域の行事への考慮も忘れない。工夫の末、セールは毎回大盛況。並んでいる客の安全のために、業者を雇って対応するほど。
 社長は初代から引き継いで、現在二代目社長の時代。当初洋菓子店からスタートした「ときわ堂」は、菓子パンや焼き菓子作りにその面影を残しながら、今はベーカリーに特化し、変わらぬ地域の支持を得ている。

楽しい気持ちで帰ってもらいたい

 林さんは店頭の品揃えについて「理想は、閉店まで全ての商品が一つずつ残っている状態。なかなかそうはいきませんが、それを目標として製造量を考えるようにしています」と語る。「閉店前の最後の一人のお客様にも、全商品の中からお好きな製品を選び、満足して帰って頂けるのが一番の目標です」と林さん。ロスのマイナスを防ぐことよりも、客が楽しい気持ちで帰ってもらうことを優先する。雨の日は客足が落ちるので、製造を抑える方法もあるが、同店は「雨の日に来て下さったからこそ、豊富な品揃えでお迎えしたい」と考える。
 同店は駐車場がない。そのため、遠方から来る客は電車を乗り継ぎ、駅から歩いて来店する。
 「楽しみに遠くから来て下さる方に、欠品だったりしたら申し訳ありません。とにかく4時頃まで定番商品が売り切れないよう、回数を分けて焼き上げています」と、林さんの口調は熱心だ。
 老舗の人気店は、「楽しい気持ちで帰ってくれれば、お客様はまた来てくれる」という思いでサービス満点の運営に努めていた。

SHOP DATA
店名:パン工房 ときわ堂食彩館
住所:〒123‐0844東京都足立区興野1‐11‐8
電話:03‐3848‐2255
営業時間:午前8時~午後7時
定休日:水曜、第3木曜
品揃え:パン約130品目、サンドイッチ約30品目
スタッフ:製造常時5人、販売平日5人、土日6人
店舗面積:売り場約10坪、厨房約20坪、平日日商:20~25万、土日30~40万



この記事の読みどころ

●定番商品の良さを大事にし、そこにトッピングやフィリングなどの新しい要素を取り入れている。
●地域の客の予定を考慮して、来店の可能性が高い日にサービスを提供する。
●店で楽しい気持ちになってもらうことを大切にし、支持を得る。

※あくまで編集部からの提案です。このほかにも様々な読みどころがあると思いますので、読者の皆様の視点で、エッセンスを抽出してください。



原価計算女王
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