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| 連載／2016年11月号 |
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| 長期休暇でリフレッシュ、同時に社員教育 - 一粒の麦から34（文・本行恵子） | ||||||||||
夏に４週間の長期休暇をとる 東京・渋谷区西原にある「カタネベーカリー」は、２００２年１１月にオープンしたお洒落なベーカリー＆カフェです。「日々の糧になる、毎日食べても飽きないパン」をテーマに、ハード系の食事パンからビエノワズリー、惣菜パンや菓子パンまで魅力あるパンを提供しています。これだけ多品種のパンを作るエネルギーの源は、店主の片根大輔さん、智子さん夫妻とスタッフのチームワーク、そして長期休暇から生まれます。 同店は、定休日のほか、夏に４週間、お正月に１週間のお休みをとります。だから、１年分の売り上げを11カ月で稼がなければなりません。個人店だからこそ、枠にとらわれることなく自由に調整できるのでしょう。そして片根さん夫妻の生き方が、しっかり貫かれています。働くときは集中して働き、休むときは徹底して自分たちの時間を楽しんでいます。欧米人のように夏の長期バカンスは当たり前という習慣を取り入れることは、勇気のいることだと思います。しかし充分休みをとることが、働く意欲にも繋がるのではないでしょうか。当初は「えー！ そんなに長く休むの？」と驚かれたそうですが、最近は夏休み明けを楽しみに待ってくださるお客様も増えてきました。 フランスで現地の暮らしを体験 今年の夏休みは、７月24日〜８月23日の１カ月間フランスに滞在しました。現地でアパートを借り、その土地の暮らしを体験するのが、毎年の恒例になっているそうです。今年は主にニースとパリで過ごし、小旅行でポルトガルを訪問しました。マルシェでお肉や魚を選び、チーズやソーセージ、季節の野菜や果物などを買って食事を作ります。市場では珍しい食材を見つけて、生産者から食べ方を教えてもらうこともあります。異国の食文化を体験するといろいろな発見があり、新製品やカフェメニューのヒントも生まれます。時には現地で食べた伝統的なパンのおいしさに刺激を受け、今までの製法を見直し、姿を変えて店に出す商品もあります。また親しい友人と再会したり、時間に追われることなく美術館めぐりを楽しんだりする日々は、日本ではなかなかできないことです。 休みの直前まで目いっぱい働けるのも、楽しい旅が目の前にあるから頑張れます。滞在先の過ごし方に想いを巡らせあれこれプランを立てていると、疲れも吹き飛んでしまうとか。 休暇中の｢スタージュカタネ｣の営業 もう一つの長期休暇活用は、「スタージュカタネ」の開業です。片根夫妻が不在の間にスタッフたちだけで店とカフェを経営する企画が、数年前から行われています。 今年は８月12日と13日、２日間の営業でした。丁度お盆休みと重なり、朝から大勢のお客様が訪れていました。私も13日の午前９時に訪問したのですが、カフェは満席でパンもだいぶ少なくなっていました。是非食べてみたいと思った豚まんは、台湾から研修に来ているスタッフが作る本場の味。最後のひとつを買うことができ、満足でした。厨房ではスタッフの皆さんが追加のパンを作り、売り上げ目標に届くよう頑張っていました。 普段は片根さん夫妻の下で働くスタッフが、店主のいない状況で店を運営するのは、想像以上に大変なことです。しかもお客様は２日間に集中するので、普段とは違う仕込み量を予測し工程表を組みます。販売のチャンスロスを出さないよう、どの時間帯にどのパンを焼けばよいか、実習課題はたくさんあります。計量、仕込み、成形、焼成、仕上げの作業をスムーズにするには、チームワークも重要なポイントです。さらに笑顔の接客販売は、気持ちのゆとりも大切でプレッシャーがかかります。しかしこの体験は独立開業を目指すスタッフには貴重な修練の場になり、今後の自分の方向性を考え店舗経営の基本を学ぶことができたことでしょう。 秋から冬にかけての繁忙期を迎え、成長したスタッフの力が試されます。 ◇ 掲載写真はすべて、カタネベーカリー提供。 本行 恵子（ほんぎょう けいこ） パンと食のライター。家庭製パン教室を１０年間主宰した後、パン業界専門誌『Ｂ＆Ｃ』の編集記者、編集長として勤務。１６年間の在職中、日本各地のリテールベーカリーや欧米、アジア諸国を訪問し、パンと食文化を取材。現在はフリーの立場で、業界専門誌や企業ホームページでの執筆活動、業界関連団体への企画提案などを行っている。ライフワークは、パンのある食卓の提案。 | ||||||||||
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