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特集/2016年7月号 |
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看板商品が看板商品になるまで
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アンゼリカ
東京・下北沢駅前の賑やかな商店街の中にあるベーカリー「アンゼリカ」の看板商品は30年以上前から販売する「カレーパン スタンダード」(税抜200円)や「みそパン」(税抜170円)だ。いずれも4年前に亡くなった先代の店主だった林大輔さんが生み出した商品で、現在は大輔さんの意志とレシピを継いだ妻ののぶ子さんが店主となり販売を続けている。
住所:〒155‐0031 東京都世田谷区北沢2‐19‐15 電話:03‐3414‐5391 営業時間:午前8時~売り切れまで 定休日:火曜(そのほか水曜が月1回休み) 品揃え:パン60品目、菓子30品目 スタッフ:製造6人、販売2~3人 店舗面積:厨房約11坪、売り場約8坪 日商:平日18万円、土日30万円 |

シンプルな味わい深さで愛され続ける - みそパン | |
同店の看板商品の「みそパン」(税抜170円)は、下北沢名物としても数々のテレビや雑誌などに取り上げられている。味噌と胡麻を練りこんだブリオッシュ風の生地に白味噌とバターを合わせたペーストを塗り、アルミカップに入れて丸いふっくらとした形に焼いた菓子パンだ。ほんのり味噌風味で食感が心地よい胡麻の入った生地とみそペーストの皮との組み合わせが、シンプルな味わい深さを生み出した製品だ。
「もう30年以上前ですが、きっかけは日本茶に合うパンを作って欲しいというお客様の声でした」と話す先代の店主の故林大輔さんの妻、のぶ子さん。それを聞いた大輔さんが、シンプルに使える和風の素材としてペースト状にした甘辛い味噌を表面に塗って焼くことを考えたのだという。焦つきがひどくならないように、表面に塗る際にはバターと合わせた配合を工夫し、香ばしい味噌ペーストの皮が焼けるようにした。 ただ、のぶ子さんによると、発売当初の反響はそれほど大きくなく、店の商品の中ではしばらくは地味な存在だった。発売から1年ほどして、ある人気テレビ番組で取り上げられたのが契機となったという。 「突然1日に千何百個位売れるようになり、大騒ぎになりましたね。一回食べると癖になるという事で、同じ人で毎日買ってくれる人が増えました。当時は今の倍位まで製造スタッフを増やして追いつかせて大変でした」(のぶ子さん) 以降30年近く経つが、当時ほどではないものの、「みそパン」の人気は定着し、今は土日で一日300~400個、平日でも一日150~200個売れているという。 30年以上も下北沢の地で変わらず愛され続けている「みそパン」だが、その間基本的には改良を加えず同じものを作り続けているそうだ。たとえ大量に作っても品質を落とさず基準以上のものを出し続けていく事をずっと心がけてきたという。 「安定して作り続けることを念頭に置いてきたのが、長く看板商品だった理由だと思います。実はアルミのカップで焼く際に、表面の味噌ペーストが垂れてクッキー状になった部分が好きだと言って買いにくるお客さんも多いのですが、そういう人も含めてニーズに応えられるよう毎日決まった『みそパン』が出せるようにしています」(のぶ子さん) 最近は実は韓国やヨーロッパなどからの観光客からも人気だそうだ。 「みそパンそのものの味は変わっていないのですが、食べる人はどんどん世代や国籍を超えて広まりつつあります。新しい商品を出しながらも、看板商品のこの味はずっと提供し続けていきたいですね」(のぶ子さん) |

味への探究心がリピーターを増やす - カレーパン スタンダード | |
「カレーパン」に関しては、実はシリーズ展開されており、基本タイプの「スタンダード」のほか、作家の故池波正太郎氏も好んだという「カレーパン スパイシー(中辛)」(税抜200円)や唐辛子がきいたエスニック風の後をひく辛さが特徴の「カレーパン 旨辛(辛口)」(税抜200円)、油で揚げない焼きカレーパンの「カレーパン ドライ」(税抜200円)などがある。
さらに、粘りのあるえのきやマッシュルームなどをたっぷり入れた「カレーパン きのこの里」(税抜210円)、肉の代わりに豆などの野菜を入れたカレーパンで最近はベジタリアンの外国人観光客などに人気だという「スパイシーベジ」(税抜210円)、揚げてない生地に豆など野菜の具材を入れた「スパイシーベジドライ」(税抜210円)をあわせて、合計7種類を揃えている。 シリーズのうち、「カレーパン スタンダード」「スパイシー」「ドライ」の3種類は約30年前の発売当初からある商品だが、発売から2、3年経った時に人気テレビ番組に取り上げられたことがきっかけで大きく売れるようになったそうだ。 「もともと主人が自信を持っておいしいと思って作った商品なので積極的に売っていましたが、テレビ番組の影響で一気にリピーターが増えましたね。以降、お客様の声に耳を傾けながらラインアップも徐々に増やしていきました」(のぶ子さん) 現在でも「カレーパン」はシリーズ全体で、土日は1日300個位、平日でも140~150個位は売れるという。 実は先代の店主で同店の「カレーパン」を開発した大輔さんは昔、神戸にある「フロインドリーブ」というドイツパンの店で修行していたという。のぶ子さんとは「フロインドリーブ」で出会った。大輔さんは洋菓子を販売する喫茶店だった実家のこの店をベーカリーとして新装オープンするため修行していたのだが、その当時の下北沢ではドイツパンは売れるような雰囲気ではなかったのだそうだ。そのため商品の幅を広げようと生み出したのが、ドイツパンの菓子パン生地に近いものを取り入れたこの「カレーパン」だったという。 「もともと主人はカレーパン好きでした。もちもちとしていて食べ応えのある感じのドイツパン風の生地でフィリングのカレーを包み、油っこくなり過ぎないようさっと揚げると、主食のような感じでしっかりと食べることができる商品となりました。そうなると、主人は探究心の強い人でしたから、フィリングもスパイスなどの研究を重ねていくようになったんです」(のぶ子さん) 実はもともと大輔さんは、食に造詣が深かった祖母の影響で、子供の頃から東京中の老舗の名店などに連れて行かれていたような人だったそうだ。 「主人は、本当に鋭敏な優れた味覚の持ち主でした。食に対する探究心をとことん育てられていたみたいですね」とのぶ子さんは話す。 そのためカレーパンの開発に関してもスパイスから勉強し、調合を工夫しながら研究を進めていったという。 完成した商品は、具材は赤身の牛挽肉と林檎ジュースがベースになっているが、そこに様々な種類のスパイスを調合したカレールーとはちみつなどの副素材も合わせ、複合的な味わいを出したものとなった。 また発売後も、その時期に合わせて季節の旬の果物を入れるなどし、同じものでも食べる時期によってちょっとずつ変えながら、飽きない味を作り出すことを考え出したという。 例えば春から夏にかけての時期はルバーブを使用し、暑い時期に微妙に酸味を出し食欲を刺激する。大輔さん亡き後も、こうした季節による変化を取り入れることはずっと続けているそうだ。 「今では遠方からの方も含め様々な方に買っていただいています。ちょっとずつ工夫を凝らしながらリピーターの方に喜んでもらえるような商品を出し続けていたら、買う人の幅が自然な形で広がってきたように思いますね」とのぶ子さんは話した。 |

ブレーメン 本店
神奈川県横浜市のベーカリー「ブレーメン 本店」は、春から初夏にかけて、潮干狩りをする人で特に賑わう「海の公園」からほど近い場所にあり、近くの漁港で揚がるシャコを使った「シャコパン」が、初夏の名物として知られている。同店は、現在社長を務める長嶌大輔さんの父、圀好さんが1990年に開業した。開業から10年の頃、大輔さんは圀好さんの後を継ぐため、百貨店内のベーカリーから転職し、同店に入った。
住所:〒236‐0012 神奈川県横浜市金沢区柴町345‐86 電話:045‐788‐0520 営業時間:午前7時~午後7時 定休日:不定休 品揃え:120品目 スタッフ:製造常時5~6人、販売常時2~3人 店舗面積:売り場10坪、厨房10坪 日商:平日17~20万円、土日32~33万円 |
研修を機に自信を持てる味に改良できた - 特製カレーパン | |||||||||||||||||||
「最初カレーは自家製ではなかったのですが、開業から10年経った頃、『もともとカレーパンはニーズの多い商品だから、もっと作りこんでいこう』という父の声で、看板商品とすべく、力を入れ始め、自家製カレーに切り替えました。料理番組なども参考にしながら、どうしたらもっと味に深みを出せるかなどと、研究を重ねました」(大輔さん) 大輔さんは、カレーを自家製にしたことによって、スタッフらのパン作りに対する意識が向上したと感じている。 「出来具合が少しでも狂うと、例えば水気が多いと、包んで揚げたときに穴が開いてしまうなど、失敗に繋がります。そういう細かい気遣いをしながら、おいしいカレーになるように料理します。パン作りも、単なる作業ではなく、料理をする感覚を持って行えたらと思っていて、スタッフ全員の中でそれが実現してきたと感じています」(大輔さん) 「特製カレーパン」は、1日100個ほど売れるのだが、2日分の200個をまとめて作る。カレーは、200個分を一度に作ったら、生地で包みやすくするため、冷蔵庫で寝かせる。カレーを作った翌日、カレーパン専用生地でカレーを包み、ハーフベイクした上で、冷蔵保存する。 「カレーは、直径50センチの中華鍋で一度に作ります。集中して作業できるように、野菜を刻む係、炒める係というように、分担しています。特に炒める作業は、野菜のうまみを出すため、念入りに行う必要があります。また、ハーフベイク後、冷蔵保存という作り方だと、あとは常温に戻して揚げるだけなので、売れ行きに合わせて、揚げたてを用意しやすいのですが、一番のメリットは、まわりがサクサクでおいしく仕上がることです。デメリットがあるとすれば、揚げたてでも、中のカレーがちょっと温かい程度にしかならず、熱々が好きな方にはもしかしたら物足りないかも知れません」(大輔さん) また、「カレーは辛い方がおいしのでは」「パンチも足りないのでは」などと、さらなる改良の必要を感じていた約4年前、神奈川県茅ケ崎市のベーカリー「パン・ド・ナノシュ」で研修する機会を得た。 「研修させていただいた際、味の決め手となる辛味調味料を教えていただきました。それでようやく、この味なら、皆さんに納得してもらえると思える味にできました」(大輔さん) 研修に出向くほか、同店には、大輔さんの祖父、父と繋がりのあるパン職人や、材料メーカーなどが、技術指導に来ることが頻繁にあるという。祖父の代から続くパン職人家系だ。 「当店のパンには、たくさんの方から頂いたアイデアが詰まっています。『特製カレーパン』が看板商品として自信を持てるようになったのも、多くの人に教えていただく機会があったからこそです」(大輔さん) |
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