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| お店拝見／2013年6月号 |
2023年11月18日から、発行から１年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| マイスター取得を目指し、有機に出合う - ベッカライビオブロート | |||||||
製パン経験１６年を迎えるオーナーの松崎太さん（４０歳）は、２００５年３月にオープンする前に、偶然に鳴尾御影線を通り、沿線の雰囲気が気に入って、現在地にオープンすることを決めた。希望の神戸ではなく、しかも住宅地で、付近にはあまり商店も見かけない立地だが、隣にある公園や街の雰囲気に自然と馴染んでいるようだ。 同ベーカリーでは、カナダ産の有機小麦を自家製粉して、全粒粉１００％のパンを提供する。副資材のほとんども有機だ。客に安心して食べてもらいたいとの姿勢が受け入れられているからこそ「景観」の一部としても街に存在感を示しているのではないか。 毎日焼き上げる１７品目のうち８割以上を全粒粉１００％で８年間作り続ける松崎さんは、大学卒業後１年間事務職についたが、本気で取り組みたい仕事ではないことに気づいた。学生時代に陸上競技に打ち込んでいたことから、身体を使い、しかも経験が蓄積できる仕事に就きたいと考えた末、昔からあり、これからも存在し続ける職業としてベーカーを選択した。 １年間京都のベーカリーで修業後、ドイツで製パンマイスターの資格を取得しようと、１９９７年にドイツに渡った。見習いとしてドレスデンで修業を開始。４年後の２００１年、南西部の都市で修業中に念願のマイスターの仲間入りを果たした。その後、ケルンなどで経験を重ね、２００４年に帰国。 松崎さんは「手仕事を学ぶためにドイツに行ったのです」と話す。ドイツでは現在リテールの機械化が一層進み、添加物を利用する普通のベーカリーとオーガニック（有機）ベーカリーに分かれるという。手仕事で腕を磨くにはオーガニック素材を扱うベーカリーで修業するほかなかった。「手仕事」へのこだわりが有機と出合う切っ掛けとなった。 | |||||||
| 高い客単価を支える自家製の全粒粉 | ||||
松崎さんが全粒粉だけで商品を作ることにこだわるのは、製造品目を絞り込みたかっただけではなく、ドイツにあるもので、きっちりと自分も食べられるパンを作りたかったからだ。それに、全粒粉のほうがライ麦粉を使うより商品作りに時間がかからないので、仕事としてより成り立ちやすいのではとの判断もあった。 ビオブロートの経営を円滑に進めていくには、全粒粉へのこだわりもさることながら、原材料費を売価の３０％程度にすることが必要条件の一つであるようだ。また、松崎さん１人が製造を担いきることで、人件費の抑制につながっている。現在、製造２人分の仕事をこなしているとはいえ、１日に出来る商品は、客数にして１５０人分が限度だという。常に１０００円以上の客単価を維持していることが、商売発展のもう一つの重要な要素であるようだ。 | ||||
| 挽き立ての粉から生まれる人気商品 | |||||||||||||
北海道産有機小麦から誕生したのは、山型食パンの「トーストブロート」（６３０円）。噛み締めていると薄い塩味が心地よいクラストと、少し甘みのあるクラムが口の中でバランスよく馴染む。一度に１０本も買う人も。フランス産有機小麦から作られる「ラントブロート」（６９０円）は、有機小麦から起こした小麦酵母を４年前から使用。粉と塩と酵母だけで作られるシンプルなパンは、見た目とは異なり、誰もが食べやすい製品に仕上がった。 | |||||||||||||
| 新たなパン作りへの道を開くか | ||||||||||
「おかげでパンの知識を論理的に学べました」と松崎さん。今は一人で製造に熱中しているが、いずれは、次の世代に自分の持てる技術を伝える責任があると考えている。現時点ではいつになるか未定だが、丁寧な手仕事をきちんと伝えることで、芦屋の地から、新たな日本のパン作り文化が広がっていくかも知れない。 店名：ベッカライビオブロート 住所：兵庫県芦屋市宮塚町１４−１４−１０１ 電話：０７９７−２３−８９２３ 営業時間：午前９時〜午後６時３０分 定休日：火曜、水曜 品揃え：１７品目 スタッフ：製造１人 販売３人 店舗面積：厨房１０坪 売り場５坪 日商：平日約１６万円、土曜、日曜約２０万円 | ||||||||||
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