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特集/2013年3月号

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フェイスブックがパン業界を変える

 フェイスブックやツイッターなど、社会的ネットワークをインターネット上で構築するサービス、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が、パン業界にも普及している。顧客との情報のやり取りにSNSを効果的に利用し、大きな販促効果をあげるベーカリーも増えてきた。



B.ricci
右手前はベーグルを作る角谷奈名子さん。左奥は販売などのサポートをする姉の映衣子さん。奈名子さんはル・コルドン・ブルー代官山校でフランスパンを学んだあと都内の有名ベーカリーに勤務し、ニューヨークのベーグル店でも修業した
個人のアカウントをそのまま店の情報発信の場として利用しているフェイスブック。商品などのモノの写真だけより、顔写真も付いていた方が反応がいいという
販売場所が店舗以外にも複数あるので、販売当日、ツイッターで、場所やメニューなどを知らせたり、セール情報を発信
ベーグルは「プレーン」(210円)、「シナモンレーズン」(240円)、「マルチグレイン」(280円)など約8種類
不定期のイベント告知などにフェイスブックは便利

 ベーグル専門店「B・ricci(ビーリッチ)」は、工房兼店舗を、東京・港区の路地裏にある建物2階に構える。初めて来る人には少しわかりにくい場所だ。
 同店はこの場所に昨年11月に移転した。
「わかりにくい場所なので、ここまで買いに来て下さるお客様のほとんどが、常連の方やご予約の方ですね」
 こう話すのは、同店のベーグルを作る角谷奈名子さんの姉、映衣子さん。ベーグルを1人で作る奈名子さんを、映衣子さんが販売や事務などの面でサポートしている。店のツイッターやフェイスブックの更新も、映衣子さんが行うことが多い。
 同店は移転前も、新宿区の路地裏の目立たない場所にあった。そこでは当初、販売はインターネットでのみやるつもりだったが、周囲のサラリーマンや主婦などから直接購入したいとの要望があって急遽、工房の建物の窓を販売のための窓口にして、販売したという。そこが手狭になり、移転となった。
 移転後は店舗内にカウンター席を設けることができたので、パーティーを開催したり、夜は映衣子さんによる予約制のバーを開くこともある。
 「パーティーなど不定期のものは、ホームページでお知らせするよりも、フェイスブックでお知らせした方が、集客しやすいです」(映衣子さん)
 同店はネット通販が主な販売ルートのため、ホームページとショッピングサイトが欠かせないが、両方とも移転後体制が整うまで一時しめている。現在の主な情報発信手段はフェイスブックとなった。
 ベーグルは、インターネット販売のほか、近所にあるスーパー「ナショナル麻布」と、千代田区の百貨店内のカフェに曜日限定でデリバリーしている。
 フェイスブックでは、デリバリーのスケジュールや、カフェのイベントなどタイムリーな内容を手短なテキストに画像を付けて発信している。
 「画像は商品などのモノだけではなく、自分たちとか、人が映っている方が反応がいいですね」(映衣子さん) 

顧客作りのきっかけが増える
 海外留学経験が豊富な映衣子さんがフェイスブックを使い始めたきっかけは、海外の友人と連絡を取るためだった。日本語版がまだできていなかった、今から7年ほど前のことだ。現在同店の情報発信の場となっているフェイスブックのアカウントは、そのとき作った映衣子さんの個人のアカウントが元となっている。
 「今、フェイスブックで100人以上の友達の登録がありますが、その内、ベーグルのお客様として見ていてくれている方がどれだけいるかというと、そんなには多くないと思います」(映衣子さん)
 同店の顧客の中心は男性や、海外生活の経験がある人たちだが、その多くがフェイスブックやツイッターはやっていないそうだ。
 しかし、フェイスブックが新規顧客開拓の役に立っていないかというと、そうではない。
 「フェイスブックはもともと、店としてでなく個人としてやっていたので、フェイスブック上の友達は、私たちと同世代の30~40代の方々が多いんです。もともと店とは関係なく繋がっているので、私たちのキャラクターを知ってもらった上で、私たちのパンやベーグルにも興味を持ってもらえるようになる可能性を秘めているんです。フェイスブックのいい点は、ただお店をやっているだけでは繋がりを持てなかった人達とも繋がれるということだと思います。お客様と出会える場を、既存のベーカリーというイメージだけに縛られないあらゆるところでつくっていけるんですね」(映衣子さん)

B.ricci(ビーリッチ)
住所:東京都港区西麻布1‐4‐50沙梵ウエストワンビル2F
電話:03‐6804‐6634
営業時間:午前11時~午後6時
定休日:日曜、月曜(バーの営業は木曜のみ=予約すれば木曜以外の営業も可)
品揃え:ベーグル8品目、マフィン2品目
スタッフ:製造1人、販売1人
店舗面積:約16坪



三井製パン舗
売担当のスタッフがランチメニューの「日替わりフォカッチャ」(500円)をスマートフォンで撮影。ツイッターでつぶやく
ランチのフォカッチャについてツイッターでつぶやく。画像はテキストの後に続くURLをクリックして表示できる
東京・千代田区の神田明神下にある「三井製パン舗」
ランチタイムにツイッターでつぶやく
 東京・千代田区のベーカリー「三井製パン舗」の店主、三井宏生さんはフェイスブックとツイッターを店の開業を機に始めた。それまでは、mixi(ミクシィ)を個人的には行っていたが、「ミクシィは相手の返信を前提とするようなところがあるので、当店の情報発信を主な目的とするなら、フェイスブックとツイッターの方が便利」(三井さん)と考えたという。
 お昼どき、販売スタッフがスマートフォンのカメラ機能を使って「日替わりフォカッチャ」(500円)を撮影。ツイッターで、「はい! フォカッチャ焼き上がりましたよ~」などというテキストに、その撮影した画像を付けて発信した。
 「ランチのご案内をするときには、ツイッターが向いていますね。お昼前にその日のメニューをテキストで告知して、焼き上がったら写真をのせてアップします。このようにタイムリーに情報提供できるからです。平日のランチタイムは周辺の会社員の方などが多いですが、『今日のお昼に何食べよう』と考えて、わざわざブログを読んだりしないですよね」(三井さん)
 ツイッターの更新は、主に販売のスタッフが行っている。
 「ツイッターは文字数も少なくて時間もかからず簡単にできるので、お客様がいらしゃるときでも少し手が空けば、つぶやけます」(販売スタッフ)
 一方、ブログの存在も欠かせないという。店の休みや不定期のパン教室の告知など、月単位で情報を残しておきたい場合は、更新頻度の高いツイッターには向かない。掲示板的な使い方ができたり、テーマごとに、しっかりと読み込めるブログの方が適しているという。

曜日や時間限定のパンを知ってもらえる
 同店のツイッターの読者であるフォロワーが昨年末に1000人を超えた。「1000人のうち、どのくらいの人が来店に繋がっているかはわからない」と三井さんは言うが、500人目と1000人目のフォロワーに、「記念してプレゼントを差し上げます」とツイッターで告知したという。販売に直結した情報を提供するだけでなく、顧客サービスにも活用しているのだ。
 同店にはイートインスぺースがあるが、
そこで食べている最中に携帯電話のカメラでパンを撮影して、ツイッターでつぶやく客の姿も多い。「当店が把握している以上に、店とお客様の間、また、お客様同士、情報の共有が進んでいるようです」(三井さん)
 また、不定期に用意する商品などの情報発信をしておくことも重要だ。
 毎週、決まった曜日や、決まった時間しか来られない客に対して、ほかにどのような商品があるかを知らせることができるからだ。
 また、フェイスブックやブログでは、「体にいいものをおいしいく、できるだけオーガニックの材料で作る」という同店のパン作りの在り方について関心を持って見にくる人たちに対して、より深く伝えることができる。
 「糖尿病を患っているという初来店のお客様から、全粒粉を使ってかつ、ショートニングを使わない食パンを作れないかと相談を受けました。材料は用意がありましたが、作っていない商品でしたので、時間を頂いてご用意させて頂きました」(三井さん)
 特注品ではあったが、スキルアップのいいきっかけになったという。「お客様の要望をどんどん受けていくためにも、SNSは、今後もコミュニケーションツールの一つとして活用していきたいですね」(三井さん)

神田明神下御臺所町 三井製パン舗(三井製パン)
住所:東京都千代田区外神田2‐8‐2
電話:03‐6206‐8565
営業時間:午前7時半~午後7時
定休日:日曜、第1、第3月曜
品揃え:約40品目
スタッフ:製造3人、販売2~3人
店舗面積:厨房15坪、売り場・カフェ
10坪



新光食品機械販売社長の伊藤圭さん。フェイスブックでは、顔写真を載せて自分自身の個性を発信している
伊藤さんは個人のページのほかに、会社としてのページも持っており、そこでは商品のことに的を絞って、画像付きで掲載している
ツオップ社長の伊原靖友さんはフェイスブックのヘビーユーザーだ
伊原さんのフェイスブックのページ。食事のことなどを中心に、1日の中での出来事を、多い日で10回近く書き込んでいる
ツオップの店内は常にパンを買い求める客で溢れている
 「単価の決して安くない製パン機械類の販売でカギとなるのは、顧客との信頼関係を築くこと。それには、フェイスブックなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の活用が有効だ」と、製パン機械販売を手掛ける新光食品機械販売の伊藤圭社長は言う。一方、千葉県松戸市のベーカリー「ツオップ」の伊原靖友オーナーは「ホームページでは体裁を整えても、フェイスブックでは裏表なくさらけ出すという覚悟が必要だ」と話す。

フェイスブックで得られる信頼関係とは
 伊藤 もちろん機械は売りたいですが、「商品を買って欲しい」ということは、逆に伏せるようにしています。フェイスブック上だけでなく、対面の営業でも同じことだと思いますが、買って欲しいということを強調し続けていくと、お客様は嫌になりますよね。
 フェイスブックでの最大の目的はお客様との間に信頼関係を築くことと決めているので、商品を購入してもらうことはあくまでも最終的な結果という位置付けにしています。
 フェイスブックでは、会社名と個人名の両方でアカウントを持っていて、会社名の方では商品の紹介を中心に載せています。個人名の方では仕事のことが主ですが、少し幅を持たせた内容になるように意識しています。
 信頼関係を築くためには、まず自分はどんな人間かを知ってもらう必要があるので、自分の趣味の話など直接仕事に関係がないことも、少し載せた方がいいという考えです。
 ただ、フェイスブックは共通の趣味の人や、興味の対象が同じ人たちと交流を深めるためのものなので、共通の興味に沿った内容であることは欠かせません。さらに、自分のページを見てくれている方たちから、より信頼を得ていくためには、継続的に更新していくことも重要です。
 伊原 食べ物を扱うという点に着目すると、ベーカリーでも、信頼関係を築くことはとても重要です。
 パンは口にする物ですから、それを作っているのがどういう人なのか、ということを知らせ、作り手とお客様の間に信頼関係を築くということは、お客様にとっての食の安心につながります。
 ですので、伊藤さんの場合と同じように、商品を売ろうということを前面に出していくのではなく、自分という人間がどういう人であるのかを、伝えていくということに特化した方がいいと思います。店とお客様を結ぼうとするのではなく、店の「人」をお客様に紹介していくというスタンスを持つことが大事ですね。
 また、フェイスブックなど、SNSの特質ですが、不特定多数の人が相手なのではなく、共通の趣味や興味を持った仲間たちが相手なので、その中で広がる口コミというのはかなりかたいと思います。例えば、自分のまったく知らない人が「おいしい」というよりも、自分と同じような考えや嗜好性を持っているとわかっている人が「おいしい」という方が、より説得力がありますから。そういう意味では、フェイスブックで評判や信頼を得ることはかなり有意義なものになると思います。

すでに築かれた信頼関係からスムーズに営業開始
 伊藤 台湾へ出張の用事があったとき、日本から事前にフェイスブックでその旨を伝えておきました。すると、ある店舗の方から「製パン機械に興味があるので寄ってください」というコメントをいただきました。
 これはフェイスブックをしていなかったらあり得なかったことです。異国の地の台湾でこうした営業活動ができるというのは、フェイスブックを通してお互いの素性を知っていたから実現できたことです。今、日本の製パン機械、日本の製パン技術は世界中で注目されています。これから世界に向けて活動していくにあたって、フェイスブックはますます欠かせない存在になっていくでしょう。

フェイスブックをはじめる場合の注意点
 伊藤 先ほども言いましたが、興味を持ってもらえないと自分のページをまず見てくれませんし、継続して興味を引き付けていかなければ、見てくれる人はどんどん減っていってしまいます。
 興味を持ってもらうためには、自分のページのテーマと企画に、魅力を感じてもらわなくてはなりません。自分のページというのは、自分自身の個性だと言い換えることができると思います。
 自分の個性に興味を持ってもらい、それを知ってもらうためには、自分のアピールポイントのようないいことだけを載せていってはいけないと思います。
 人となりを知ってもらうのですから、そこに人間らしさが表現できていなければいけないからです。成功する中にも、必ず失敗はあります。例えば、8個の成功例を書きたかったら、2つは失敗談を書くくらいの意識が大事です。失敗するのが人間で、その方が面白いんです。
 継続して見てもらうためには、できれば1日に1回は更新することです。「そんなに書くことがないよ」と思われるかもしれませんが、実際私自身もそうでした。でも、やっているうちに逆に書くために何か見つけようという意識が働くので、それが仕事にいい効果を生み出します。毎日仕事をしている訳ですから、何もないはずがないですし、評価されるようにもっと面白いことをやろうとします。  伊原 店でなく「人」を知ってもらうためには、伊藤さんの言うように、人間ですから当然駄目な部分も出していかないと分かってもらえないですね。そういう意味では、ホームページでは体裁を整えても、フェイスブックでは裏表なくさらけ出すという覚悟が必要だと思います。そこまでする必要があるのかという気がしますが、リピーターとなってくれるお客様にとって、興味があることというのは、店の裏側だったりします。
 ブログもやっていますが、ブログの閲覧者数はかなり多くて、その理由は、売り場や商品を見ただけではわからない店の裏側を中心に書いているからだと思います。
 いわゆる、映画で言うところのメイキングビデオのようなものだと思います。どんな風にしてパンが作られているのか、作っているのはどんな人なのか、ということに、リピーターのお客様は興味を持ってくださります。
 はじめてフェイスブックをはじめるとき、まず最初に自分と共通の趣味や興味を持っている人と繋がることからやってみるといいと思います。そのときに気を付けることは、インターネット上の世界も、現実社会と同じだということを忘れないことです。フェイスブックの中にも人間付き合いのマナーがありますから。例えば、繋がりたいとき、「友達申請」のボタンをクリックするのですが、それをした後に、「よろしくお願いします」というようなメッセージを一言でもいいので送っておくといいと思います。現実社会では当たり前にやることですが、バーチャルな世界では想像をしないとついつい忘れてしまいがちです。マナーを守ることをしっかりとおさえておけば、あとは気楽に、毎日の更新を継続していくことを目標にやっていくといいと思います。交流って楽しいですよ。



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