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特集/2012年12月号 |
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ラスクはお得感を出したら売れ行きが変わった
ラスクは7種類ほどある食パンのほか、ナッツやフルーツの入ったパンなども使って作る。食パン類は角切りにした形で、ナッツやフルーツの入ったパンはスライスした形でラスクになっていて、それぞれ食感や味が異なる。種類別にはせず、すべてをミックスして袋に入れて販売。 「最初は味や食感別に分けて販売いていたのですが、約2年前からすべてミックスして袋詰めするようになりました。また種類は、均等に入るようにはせず、あえて偏りがあってもいいとして袋詰めしています。お客様それぞれが、選り好むのを楽しんでもらえればいいと思っています」(寺島店長) ラスクは袋入りで小サイズが300円、大サイズが600円。さらに大サイズをまとめて3つ購入すれば箱入りで1500円にして、お得感を出している。 「箱に入れて売り出したらどうかと考えた時に、ミックスの袋詰めというアイデアが出たんです。いろいろな形のものが入っている方が見た目もよくて、お得感も出せます。イメージはせんべい屋の商品です。割れていたり、ひびが入っていたりする様々な味のせんべいが大きな缶に入って、自宅用として販売されていますよね。お得感があって楽しめるようにしたんです」(寺島店長) 様々な味をミックスさせて袋詰めするようにしたことで、売れ行きはかなりよくなったという。取材日はハロウィンのイベント期間中だったが、ハロウィンの飾り付けがされた棚にラスクが置かれ、プレゼントにも使えるよう、シールとリボンでラッピングされていた。 サフラン北国分店 住所:千葉県市川市堀の内3‐4‐12 電話:047‐373‐9223 営業時間:午前7時~午後8時 定休日:第2、第4木曜 品揃え:200品目 スタッフ:製造7人、販売常時3~4人 店舗面積:売り場35坪 厨房60坪 日商:40~50万円 |

看板商品の食パンで作るラスクも、看板商品になる 再生品はもとのパンがおいしくなければ売れない | ||||||||||||||||
おいしいラスクを作るためのパンを追求 ベーカリーの再生品といえばラスクだが、そのラスクが看板商品となっている店がある。千葉県木更津市のベーカリー「ペッパーズ パントリー」だ。 しかし、同店の「キューブラスク」(大580円、小280円)は 再生品としてというよりも、おいしいラスクを作りたいという思いから 誕生した。同商品は、「食パン」(220円)を使って作る。一口で頬張れ、さっくりと噛めて口どけもよいので、どの世代の人にも食べやすい製品だ。 「最初はフランスパンで作ろうとしていたので、ラスク用にフランスパンを作りました。しかし、それはあくまでもラスク用であって、フランスパンとしては満足できる味とはいえませんでした。やはりパンとしてもおいしいものを作っていきたいので、それならフランスパンでなく、もともと目の詰まっている食パンで作ればいいと思ったんです」(松井さん) 「キューブラスク」はその名が示す通りサイコロ状の形で、食パンを3センチ角にカットして作る。厚みがあるので、スライスしたフランスパンで作るよりも焼成に時間がかかる。また、角切りにした後、グラニュー糖とバターをまぶす前に一晩冷蔵庫で冷やしておく必要があるという。焼いた当日のふわふわした状態だと、バターが染み込み過ぎてしまうからだ。 「満足できる味のラスクになりましたが、結局はかなり手間のかかるものになってしまったなというのが本音ですね」(松井さん) 定番商品と二人三脚で人気を支える 「キューブラスク」に使用している「食パン」は、同店で最もよく売れている商品でロスとは縁遠いが、この定番商品を起用することが重要だという。 「『食パン』は人気があるからこそ、さらにより多くのお客様に食べてもらいたいと思いました。そのために1日に何度も焼きたいと思いました。焼く回数が多ければ多いほど、お客様に焼きたてのおいしさを提供できるチャンスが増えますし、店も活気づきます」(松井さん) 現在、「キューブラスク」はほぼ毎日製造しており、同製品のために焼き上げる食パンは1日に6本。「食パン」として販売した分のロスを活用するという流れではない。そのため、「キューブラスク」を商品に加えたことによって、食パンの焼成回数を増やすことができた。 定番商品としての「食パン」人気を、さらに盛り上げ、支えている商品として、「キューブラスク」の存在意義は高いといえる。また、反対に「キューブラスク」の人気を支えているのは、おいしい「食パン」だ。「キューブラスク」と「食パン」が、二人三脚の形で互いの人気を高めている。 ペッパーズ パントリー 住所:千葉県木更津市東中央3‐6‐3 電話:0438‐23‐0061 営業時間:午前7時30分~午後8時30分 定休日:水曜日 品揃え:160品目 スタッフ:製造8人、販売10~12人(常時3~4人) 店舗面積:売り場15坪 厨房17坪 日商:40~50万円 |

二度手間をかける再生品はさらにおいしく作る 再生品は確実に売れるものでなくてはならない | ||||||||||
確実に売れるタルティーヌ作り 閉店15分前の午後6時45分、東京・世田谷区の「ブーランジェリー スドウ」の店内は、焼き菓子のほかはパンがわずかに残っているだけ。それでも閉店するまで5人ほどの来店があり、「プチバゲット」(70円)や「プチSバゲット」(100円)は完売し、「ノアレザン」(1グラム2円)と「自家製オリーブカクテルのプチパン」(150円)、「フォカッチャ」(1グラム1・3円)が数個ずつしか残らなかった。 閉店すると同時に、厨房では翌日販売するタルティーヌの製造が始まった。同店のタルティーヌは毎日3~4種類揃い、合計100個ほど売れる人気商品だ。 タルティーヌの土台として使うパンは、「バゲット・レジェール」と「フォカッチャ」で、そのまま販売するものとは別にタルティーヌ用としても製造する。タルティーヌが売れ筋商品へと成長したため、売れ残りをあてにするのでは間に合わなくなったからだ。 「バゲット・レジェール」は8等分にカットして使う。このとき両端の部分は切り落としておく。両端は再度の焼成によって食感がかたくなり過ぎてしまうからだ。「おいしいと思えない部分が、たった一口でもないようにしています」と須藤シェフ。 次に、バゲットのカット面に自家製のベシャメルソースを塗り、蒸した北海道産のジャガイモ「キタアカリ」やソーセージなど、水気が少なく変色しにくい食材をトッピング。そして翌朝、さらに色物野菜などをのせ、20分ほどあれば仕上げから焼成までできるようにセッティングしておく。 このように、バゲットの切り方から自家製ソースと食材の品質管理、トッピングの方法にまで、「基本に忠実に、シンプルでおいしいものを作る」という同店のコンセプトが浸透している。特にトッピングの仕方は、立体的な見た目とボリューム感を出すために重要だという。 「ロスのバゲットを使って作ったものが確実に売れる商品にならなければ、ロスがロスを生むということになってしまいます。二度手間をかけたものが、もとのパンよりさらにおいしくなっていなかったら、再生品の意味をなさないですよね」(須藤シェフ) 夕方以降はリーンなパンを揃えていく 再生しないタルティーヌなどの調理パンは昼時に売り切り、それから閉店までは、「フォカッチャ」や「自家製オリーブカクテルのプチパン」など再生可能なリーンなパンを中心に用意していく。そして実際、「フォカッチャ」はタルティーヌとなり、「自家製オリーブカクテルのプチパン」は、半割した断面にチーズのガレットを付けて、翌朝生まれ変わっていた。 同店のラスクは、食パンやバゲットなどをスライスして作るものもあるが、一見ラスクとわからない「厚 切りノアレザンラスク」(250円)という製品もある。 作り方は、「ノアレザン」を4センチほどの厚切りにし、オリジナルのラスクバターをたっぷり染み込ませ、仕上げにカラメリゼする。 食べると中からじゅわっとラスクバターが染み出てきて、一般的な薄切りタイプのラスクとは見た目も食感も異なる。須藤シェフは「これ好きなんです」と笑顔で言った。 ブーランジェリー スドウ 住所:東京都世田谷区世田谷4‐3‐14 電話:03‐5426‐0175 営業時間:午前9時~午後7時 定休日:日曜、月曜 品揃え:70~80品目 スタッフ:製造4人、販売と製造補助8人 店舗面積:売り場10坪、厨房19坪、バックヤード3坪 月商:700万円 |

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