商品開発は、スタッフの教育の一環にも - ブーランジュリー オーヴェルニュ - ブランスリー電子版


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お店拝見/2012年10月号

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商品開発は、スタッフの教育の一環にも - ブーランジュリー オーヴェルニュ
駅前商店街を通り、桜並木を抜けた閑静な場所に佇む「ブーランジュリー オーヴェルニュ」
毎月開発する約10品目の新商品は、入店してすぐ目に付く中央の台に置かれている
ブーランジュリー オーヴェルニュの
井上克哉オーナーシェフ
 数々のコンテスト受賞歴や、ibaカップなどの世界大会出場経験を持つ井上克哉さんがオーナーシェフを務める東京・葛飾区の「ブーランジュリー オーヴェルニュ」。2003年の開業から11月で9周年を迎える。井上さんは開業するとき、「1人で作っていこう」と思っていたというが、同店は年々成長を遂げ、現在10人のスタッフで切り盛りするまでとなった。
 店内に入って真っ先に目に付く中央のテーブルには、季節商品がずらりと並ぶ。「イタリアンレモンパイ」(210円)、「マンゴーゼリー」(136円)「ピリ辛カルツオーネ」(210円)など10品ほどあり、これらは月替わりだ。
 これだけ季節商品を重視しているのには理由がある。
 「当店のお客様はほとんどが常連の方なので、飽きられないようにすることが一番の課題です。そのためには、季節の新商品を充実させることと、種類の豊富さを維持することが大事だと思っています」(井上さん)
 約10品の新商品は、5人ずつの2グループに分かれてグループごとで相談して決めたり、個人で考案するなどして、毎月生み出される。
 スタッフが10人体制になる前、まだ4~5人だった頃は井上さんが1人で毎月4品ほど考案していた。開業前ドンクに勤務していた頃から、コンテストなどに積極的に応募していた井上さんだが、新商品を開発し続けるのは大変なようで、「特に1人で毎月4~5品出していたときは辛いと思うときもありました」と話す。
 今まで作ってきたレシピはファイルに綴じて保存している。そのまま再現するためではなく、新商品を考える際に見返すと、そこからヒントを得られるからだ。現時点で持っている知識や技術に、それらのヒントを融合させて新商品を生み出していく。こうした毎回の積み上げが、自分の財産となっていくのだ。
 「スタッフにも、作ったレシピはメモをとっておくなど、何らかの形で保存して、後から見返せるようにしておくといいと言っています」(井上さん)
 スタッフに仕事を与えるに当たって井上さんは、これまでの自分の経験を踏まえ、独立開業しても困ることがないようにと考えている。毎月の新商品開発は、スタッフにとって訓練の一環となっていると言える。
 同店からすでに2人が独立開業している。どちらの店も同店と同じように地元住民に愛される店として好調だ。



同じ状態を常に維持する
平日は女性が多く来店し、土日は男性客と女性客が半々の割合で来店するという
スタッフは現在10人。製造の各部署と販売を決められたローテーションで、順番に担当する。昼のピーク時のみ、販売担当のパートが入る
サンドイッチとドリンクが並ぶショーケースには、季節のデザート「梅ゼリー」(189円)が並ぶ
 同店の立地は最寄り駅から徒歩15分離れた閑静な場所。「1人で作っていこう」と思っていたことと、「住民を相手にして、一見さんでなく常連客を作っていきたかった」という考えから選んだ。
 「ここまで足をのばして買いに来るのは、しかもそれが毎日のことだと大変だと思います。だから、わざわざ行きたいと思わせる、店に対する期待感のようなものは大事にしたいんです」
 毎月新商品を出すだけでなく、毎日160品目以上の豊富なアイテムを揃えるようにしている。4~5人体制のときでも、100種類以上は作っていた。豊富なアイテムを用意し続けてきたことが、期待感に応える、「飽きられないベーカリー」(井上さん)へと成長させた。
 同店の客単価は650~750円だ。井上さんはこれを「低い」とみている。その分、客の来店頻度が高く、毎日買いに来る客も多い。
 「駐車場がないので大量に買う人よりも、買い物次いでに自転車で来て、ちょっとだけ買っていく人が多いですね。自転車で来るお客様は、かごにすでにほかの荷物が入っていて、パンの入るスペースに限りがあるというような状態ですね」
 来店客の多くが自転車を利用して来るので、雨の日は売り上げが3割ほど下がることもある。しかし、客足が少ないときでも、アイテム数はできるだけ減らさないようにしている。
 「あれやらない、これやらない、という風に作るアイテムを減らしていくと、それと比例するように来てくれるお客様の数も減っていきます。売り上げが下がる夏も、秋の来店に繋げられるように、種類を減らさないようにしています。いつ来ていただいても、『いつもと同じ』と思ってもらえることが大事だと思っています」



スタッフと厨房の体制を整える
オープン当初から売れ続けている「ル・マタン」(199円、写真左)と日清製粉パンレシピコンクール大賞受賞の「麦の恵み」(273円、写真右)。どちらもふわふわの軽い食感で、食パンの代わりに購入していく客も多い
2年前に折り込み専用の部屋を設けた
サンドイッチが豊富。朝食用に購入していく客が多く、午前10時の時点ですでに半分ほど売れていた
 5年ほど前まで、夏季休業を10日間ほどとっていたが、店を再開し、客足を元に戻すのにかなりの時間を要したという。また、休業中に材料を駄目にしてしまうという問題もある。 
 そこで4年前から、定休日と夏季休業をなくし、年中無休にした。夏の売り上げ低下も2割程度に抑えている。それを可能にしたのは、スタッフの増員だ。一気に3人増やし、店を休業しなくてもシフトが回るようにした。機械類も、分割機の導入や生地の保管庫の増設などで充実させた。さらに2年前、厨房を拡張。空いた隣家に、パイ生地の折り込み専用の部屋を設けた。そして昨年新たに1人増やし、現在の10人体制となった。
 「ベストと思える体制に、ようやく整ってきたなと実感しています。機械類を充実させたことで、作業時間が1時間ほど短縮でき、その分種類を増やすこともできました。また、スタッフの休みが、月6日だったのを週休2日に増やせて、夏休みもそれぞれ10日とれるようになりました。夏休みを利用して海外旅行に行くスタッフが多いですね」
 海外に行ったスタッフは、店のホームページに旅先で体感した食事情を写真付きでまとめている。日頃、休みや空き時間があればほかのベーカリーやケーキ店を見に行くという井上さんは、スタッフにも週2日の休みを有益に使ってもらいたいと思っている。

SHOP DATA
店名:ブーランジュリー オーヴェルニュ
住所:東京都葛飾区立石6‐5‐7
電話:03‐3691‐5102
営業時間:午前7時~午後7時30分
定休日:なし
品揃え:160品目以上
店舗面積:売り場4・5坪、厨房16・5坪、折り込み室7坪
スタッフ:製造と販売10人
月商:850万円





原価計算女王
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