大好きなパン作りが店再開の原動力に‐パン家のどん助 - ブランスリー電子版


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お店拝見/2012年5月号

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大好きなパン作りが店再開の原動力に‐パン家のどん助
何よりもパンが好きな店主の齋藤健太郎さん
古風な看板を掲げる「パン家のどん助」の外観。人気の総菜パンを求めて多くの客が来店する
「焼きそばぱん」(右)と「手作りコロッケぱん」。どちらも具がたっぷりと入っている
土曜日の売れ行きがいいという「フランスパン」。北海道産の小麦の粉を使用している
 都営大江戸線の東新宿駅を降りて、職安通りと明治通りの交差点を飯田橋方面に歩くことおよそ5分。ビジネス街から少し外れると静かな住宅街が顔を見せる。一方、駅を出て反対方向へ5分ほど行くと、あの不夜城といわれる歌舞伎町が現れる。ビジネス街にも歓楽街にも近い住宅街の中に「パン家のどん助」はある。
 一昔前の懐かしさを誘う看板をかかげる同店の舵を取るのは、店主の齊藤建太郎さん(35歳)。オープンしたのは2001年の10月。今年で11年目になる。
 実は同店は、およそ30年前には齋藤さんの父親が経営していた。齊藤さんがまだ小学校に通う前のことだ。しかし約20年前に閉店。だから、2001年のオープンは、それ以来の再開ということにもなる。
 元々、パン作りが大好きな齊藤さんは、17歳で大手ベーカリーのリテール部門でアルバイトを始めた。1年後、本格的な修業先となった浅野屋で働き始めた。そして、昼間働きながら、夜は東京製菓学校で2年間パン作りを学んだ。
 同校を卒業すると、浅野屋に正式に採用され、22歳まで勤めた。上司にも恵まれ、良い修業を積むことができた。その後、知り合いのベーカリーなどで腕を磨き、25歳のときに今の店をオープンした。
 もう一度、パン屋を開きたいとの思いは、修業中からあった。祖父が1960年頃に起こしたパン屋に愛着を持っていたからだ。また、母親の「パン屋さんなら手伝いますよ」との言葉も、25歳という若さで、ベーカリー経営に乗り出す後押しとなった。



夫婦で焼き上げる懐かしの総菜パン
陳列台に並ぶ「手作りコロッケぱん」
陳列台に並ぶ「焼きそばぱん」
昼時にはピザもよく売れる。好みの品を探す客たち
 早朝3時30分から齊藤さんは厨房に立つ。フランスパンの仕込みから始め、次いで食パンの生地を作る。6時になると、共に製造を担当する由樹夫人が加わる。
 齊藤さんと由樹さんが知り合ったのは、浅野屋の修業時代のこと。由樹さんは、最初大手リテールベーカリーで修業を開始。その後、浅野屋に入り、齊藤さんの「どん助」開業に伴って、一緒に仕事をしようと職場を移った。2人の結婚は5年前。互いに人生でも、仕事上でも心強い伴侶を得た。
 6時からは生地の分割作業。食パン、あんぱん、フランスパンなどを仕上げていく。ドウコンを利用しているので、朝からデニッシュ類やブリオッシュも提供できる。7時30分の開店時間には、これらの商品が次々と焼き上がる。
 「どん助」では100種類のパンを揃えるが、常時販売されているのは80種類。焼き上げの回数は、食パンは1日に2回だが、その他の商品は1回のみ。商品にもよるが、基本的に、一度に焼き上げる個数は10~20個だ。
 焼き上げたパンを購入するのは、平日の場合は、駅近くの企業に勤めるサラリーマンやOLが多くを占める。また、朝の早い時間帯には、歌舞伎町に近いこともあるのか、勤めを終えた水商売の女性たちも訪れるという。平日はどちらかというと、商品全体が満遍なく売れていくそうだ。平均すると10万円は売り上げる。土曜日になると、近隣の人々が「どん助」の味を求めてドアをたたく。売り上げは3割り増しの13
万円ほどになる。
 同店の特徴の一つは、総菜パンの販売実績が高いこと。特に創業者の祖父の時代から人気のあった「焼きそばぱん」(168円)、「手作りコロッケぱん」(168円)、「ハムカツ」(168円)は、土曜日になると、お昼前には売り切れてしまうほどの人気ぶり。昭和30年代の懐かしい味を味わえるのが、その秘密なのかもしれない。
 「フランスパン」(231円)も負けてはいない。平日の1・5倍は売れるという。近所の人々が翌日の食事用としても購入するのではないだろうか。
 現在は、売り上げも、客単価(600円)も安定しているが、オープンしてからの5年間は売り上げが一定せず、苦しい時期だったという。5年を過ぎた頃からようやくベーカリーとしての存在を認められたのか、その後は、安定した。それでも悩みはある。3年前に小麦粉の価格が値上がりしたのを受けて、食パンなどの値段を上げたことがある。食事パン系の伸びが不十分なのは、その影響によるのか、分析しきれていない現状がある。



飼い猫のどん助が客を「招く」
1番人気の猫の手の形をした「どん助ごまあんぱん」。黒ごまペーストが隠し味
熊本産の全粒粉を使った「全粒粉のぱん」。クラムがしっかりとしているのが特徴
多くの商品が並ぶ店内。売り場はおよそ8坪。
 食事パンの悩みはあるものの、全ての具材を手作りする総菜パンは順調だ。人気の「手作りコロッケぱん」は、キャベツとコロッケがしっかり挟まる。「いつか食べたことのある味」だけに、自然と食欲がわいてくる。「焼きそばぱん」には、パンから溢れそうな具が詰まっており、食べ応えがある。「焼きカレーぱん」(178円)は、しっかりとした生地に包まれた具が、生地を跳ね返すように主張する。
 小麦粉については特にこだわりはないが、フランスパンには、北海道産小麦「はるゆたか」を使用。断面もきれいで、気泡もしっかり出て、見るからにおいしそうだ。塩はフランス産を使う。「全粒粉のぱん」(1斤283円)には、熊本産小麦の粉。トーストすると香りが増し、もちもち感やサクサク感も出て、食べていて楽しいパンだ。
 人気商品は幾つかあるが、ダントツの1位は、猫の手の形をした、「どん助ごまあんぱん」(126円)。生地とあんに黒ごまのペーストが入っているのが特徴。薄い皮の中に艶やかさと滑らかさのあるあんがたっぷり入っているのがうれしい。 
 店名の「どん助」のいわれは、飼い猫の名前。「どん助のごまあんぱん」が猫の手の形をしているのも、そこからきている。これからも、猫のどん助が「招き猫」となって、夫婦が手作りする温かいパンに客を呼び寄せ続けてくれるかもしれない。

SHOP DATA
店名パン家のどん助
住所東京都新宿区新宿7-13-3
電話03-3203-6671
営業時間午前7時30分~午後6時30分
定休日日・月曜日
品目数100品目(常時80品目)
店舗面積売り場8坪、厨房12坪
スタッフ製造2人、販売1人
日商平日約10万円、土曜約13万円









原価計算女王
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