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お店拝見/2012年5月号 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。

夫婦で焼き上げる懐かしの総菜パン | |
早朝3時30分から齊藤さんは厨房に立つ。フランスパンの仕込みから始め、次いで食パンの生地を作る。6時になると、共に製造を担当する由樹夫人が加わる。
齊藤さんと由樹さんが知り合ったのは、浅野屋の修業時代のこと。由樹さんは、最初大手リテールベーカリーで修業を開始。その後、浅野屋に入り、齊藤さんの「どん助」開業に伴って、一緒に仕事をしようと職場を移った。2人の結婚は5年前。互いに人生でも、仕事上でも心強い伴侶を得た。 6時からは生地の分割作業。食パン、あんぱん、フランスパンなどを仕上げていく。ドウコンを利用しているので、朝からデニッシュ類やブリオッシュも提供できる。7時30分の開店時間には、これらの商品が次々と焼き上がる。 「どん助」では100種類のパンを揃えるが、常時販売されているのは80種類。焼き上げの回数は、食パンは1日に2回だが、その他の商品は1回のみ。商品にもよるが、基本的に、一度に焼き上げる個数は10~20個だ。 焼き上げたパンを購入するのは、平日の場合は、駅近くの企業に勤めるサラリーマンやOLが多くを占める。また、朝の早い時間帯には、歌舞伎町に近いこともあるのか、勤めを終えた水商売の女性たちも訪れるという。平日はどちらかというと、商品全体が満遍なく売れていくそうだ。平均すると10万円は売り上げる。土曜日になると、近隣の人々が「どん助」の味を求めてドアをたたく。売り上げは3割り増しの13 万円ほどになる。 同店の特徴の一つは、総菜パンの販売実績が高いこと。特に創業者の祖父の時代から人気のあった「焼きそばぱん」(168円)、「手作りコロッケぱん」(168円)、「ハムカツ」(168円)は、土曜日になると、お昼前には売り切れてしまうほどの人気ぶり。昭和30年代の懐かしい味を味わえるのが、その秘密なのかもしれない。 「フランスパン」(231円)も負けてはいない。平日の1・5倍は売れるという。近所の人々が翌日の食事用としても購入するのではないだろうか。 現在は、売り上げも、客単価(600円)も安定しているが、オープンしてからの5年間は売り上げが一定せず、苦しい時期だったという。5年を過ぎた頃からようやくベーカリーとしての存在を認められたのか、その後は、安定した。それでも悩みはある。3年前に小麦粉の価格が値上がりしたのを受けて、食パンなどの値段を上げたことがある。食事パン系の伸びが不十分なのは、その影響によるのか、分析しきれていない現状がある。 |

飼い猫のどん助が客を「招く」 | |
食事パンの悩みはあるものの、全ての具材を手作りする総菜パンは順調だ。人気の「手作りコロッケぱん」は、キャベツとコロッケがしっかり挟まる。「いつか食べたことのある味」だけに、自然と食欲がわいてくる。「焼きそばぱん」には、パンから溢れそうな具が詰まっており、食べ応えがある。「焼きカレーぱん」(178円)は、しっかりとした生地に包まれた具が、生地を跳ね返すように主張する。
小麦粉については特にこだわりはないが、フランスパンには、北海道産小麦「はるゆたか」を使用。断面もきれいで、気泡もしっかり出て、見るからにおいしそうだ。塩はフランス産を使う。「全粒粉のぱん」(1斤283円)には、熊本産小麦の粉。トーストすると香りが増し、もちもち感やサクサク感も出て、食べていて楽しいパンだ。 人気商品は幾つかあるが、ダントツの1位は、猫の手の形をした、「どん助ごまあんぱん」(126円)。生地とあんに黒ごまのペーストが入っているのが特徴。薄い皮の中に艶やかさと滑らかさのあるあんがたっぷり入っているのがうれしい。 店名の「どん助」のいわれは、飼い猫の名前。「どん助のごまあんぱん」が猫の手の形をしているのも、そこからきている。これからも、猫のどん助が「招き猫」となって、夫婦が手作りする温かいパンに客を呼び寄せ続けてくれるかもしれない。 SHOP DATA 店名パン家のどん助 住所東京都新宿区新宿7-13-3 電話03-3203-6671 営業時間午前7時30分~午後6時30分 定休日日・月曜日 品目数100品目(常時80品目) 店舗面積売り場8坪、厨房12坪 スタッフ製造2人、販売1人 日商平日約10万円、土曜約13万円 |

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