駅改札内で人気のサンドイッチ‐ベックスコーヒーショップ - ブランスリー電子版


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レポート/2011年12月号

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駅改札内で人気のサンドイッチ‐ベックスコーヒーショップ
「パンチェッタ&ルッコラ・セルバチカサンドセット(ドリンク付き)」(590円)は、秋の季節商品として展開。人気のパンチェッタのサンドイッチに、野生種のルッコラ・セルバチカで苦味を効かせた。「秋をイメージして、アーモンドスライスを入れて木の実の持つ香ばしさを加えました」(松本さん)
駅改札内の商業施設が次々と変化を遂げている。立ち食いそばの店とキオスクが定番だったのはひと昔前。現在は焼きたてのパンや、話題のスイーツを扱う店など、バラエティーに富んでいる。そんな中、ジェイアール東日本フードビジネス(東京・北区、妹尾健二社長)の展開するカフェ「ベックスコーヒーショップ」は、首都圏を中心に現在75の店舗を展開し、着実に駅改札内の顔となっている。同カフェのコーヒーと並ぶ看板商品は、サンドイッチだ。



半歩先を行くメニューを展開
ベックスコーヒーショップのメニュー開発を手掛ける、ジェイアール東日本フードビジネス営業戦略本部商品開発部の松本怜子さん
 今秋の一押しランチメニューは「パンチェッタ&ルッコラ・セルバチカサンド セット」(590円)。
 この聞き慣れない「セルバチカ」という名前に一瞬戸惑う人は多いだろう。しかしその珍しさが、最近はベックスコーヒーショップのメニュー開発で欠かせないという。
 同ブランドの全てのメニュー開発を手掛ける、ジェイアール東日本フードビジネス営業戦略本部商品開発部の松本怜子さんは、「ルッコラ・セルバチカ」を具材の一つに取り入れた理由についてこう話す。
 「5、6年前は、分かりやすさが求められていました。今は分からないものを楽しもうとしてくれる傾向があります。話題性も生まれるし、商品だけでなく、食材の情報発信をしていけたらいいと思っています」
 改札内という幅広い客層が期待できる立地では、あえてターゲットは絞らない。分かりやすさが求められたというのも、客層を問わず受け入れられるメニューであるということが重要であったからだろう。それが今では、「分からないものを楽しむ」という人が増えてきたことで、具材にバリエーションを持たせることに積極的になったのだ。
 ただ、「目新しさ」だけに走ってしまうとだめで、「目新しさ」と「分かりやすさ」のバランスが重要だという。
 同カフェの販売促進を担当する同社営業戦略本部の森大祐さんはメニューや具材の目新しさの度合いについて、「常に半歩先を意識しています」と話す。
 「他社に先駆けて提供しようと、15年ほど前にピタサンドを商品化しましたが、ピタ自体の認知度が低いことからか、定着しませんでした。どんな食べ物なのかのイメージが沸きにくいものは、改札内立地には向かなかったんです。商品の価値が伝わらなければ、そのこだわりは意味をなしませんから」(森さん)
 ある程度の認知度がある上で、他社にないこだわりを持たせた商品作りというのが求められるのだ。
 「パンチェッタ&ルッコラ・セルバチカサンド」の具材は、イタリアンの王道とも言えるパンチェッタとルッコラの組み合わせ。こだわりは、ルッコラの品種だ。
 「王道の組合せに、ワンポイントアクセントとして野生種のルッコラ・セルバチカを使用しました。苦味が強いのが特徴です」(松本さん)。定番商品に少しのアレンジを加えるという、先を行き過ぎない、まさに半歩先といったところでの目新しさを提供する。
 さらにその目新しさは、絶えず与え続けていくということも、駅利用客の足を止めるためには欠かせないという。とは言え、店舗数が75もある同カフェで、頻繁にメニューを変えていくことは難しい。メニューの切り替えは、春夏秋冬の年4回だ。
 「切り替え時期は、ドリンク、サンドイッチ、デザートの3つのカテゴリー別に少しずつずらしています」(森さん)
 今週はケーキ、来週はサンドイッチといった具合に小出しにしていくことで、常に新鮮味を切らさない努力をする。
 「例えば会社員なら、通勤時と帰宅時の2度、駅を利用します。その駅にある店舗も、最低2回は目にしますので、『また同じことをやっている』と思われがちです。飽きが早くきてしまうんです。新商品を小出しにしたり、開店から11時までのモーニングメニューを用意することで、変化の絶えないサービスを意識しています」



トーストするひと手間をかける

 メニュー開発のため、サンドイッチを扱う店を探し歩くという松本さんは「トーストしたパンで作るサンドイッチは、探したら意外に少ないことがわかったんです」と言う。
 やっと見つけたのはホテルのラウンジやサンドイッチ専門店。「料理人によって緻密に作られているおいしさを感じます。パンはトーストすると、小麦の香ばしさと温まったバターの相性が抜群によくて、結果的に具材は何を挟んでもおいしいという状態にできると思うんです。でも、家では特に朝は忙しいので、サンドイッチのパンをわざわざトーストする人は少ないのではないのでしょうか」
 同カフェで提供しているサンドイッチは、すべてトーストしたパンを使用。
 「日常的な利用が多いので、定番の商品であることは外せないのですが、家で食べられるものとの差がなければなりません。そういう意味でも、トーストするひと手間は欠かせないですね」(松本さん)
 手間はかけても、わずかな時間で提供しなければならないのが駅改札内立地の宿命。
 「1~2分以内に提供するために、まず決めているのが工程数です。パンにバターを塗ったり、具材を用意する工程数を8~9以内に抑えています。具材を5つくらいに抑えておけば、パンをトーストしている1分弱の間に、具材だけを積み重ねておけるので、トーストできたらすぐにサンドして提供できます」(松本さん)
 「パンチェッタ&ルッコラ・セルバチカサンド」は、サニーレタス、ゴーダチーズ、パンチェッタ、ペッパー、アーモンドスライス、ルッコラ・セルバチカの順に積み重ねておき、トーストが済んだらすぐにサンドできる状態にしておく。
 トーストしたパンには、1枚にはバターを、もう1枚にはマスタードマヨネーズを、それぞれ片面に塗る。王道の組み合わせを引き立てるためのひと手間が、幾層にも積み重なったサンドイッチだ。
 現在松本さんが考えているのは春のメニュー。販促や材料の手配などの準備期間が必要なため、発売予定の半年前に開発を始める。
 「以前は、6カ月先の季節を頭だけで考えていました。でも、実際その季節になると、イメージしていたものとのずれを感じるんです。そこで最近は季節ごとに写真を撮影したり、メモに書き留めたりして、開発のヒントになる材料を集めています」





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