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対談/2011年7月号 |
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中間欠品をなくすことが売上げアップへの近道!‐土屋正博ブーランジェリー・トーストオーナー VS 望月康男販売アドバイザー ブーランジェリー・トースト 東京都豊島区巣鴨1‐19‐10土屋ビル 電話03-3943-2345 | |
創業以来つい最近まで、一貫して売上が伸びてきた。現在も日商25万円とまあまあの売上げ。しかし、リーマンショック以降、頭打ち傾向が見え始めてきた。
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リーマンショック以降売上が伸び悩む | |
土屋 創業以来一貫して売上が伸びていましたが、2008年のリーマンショック以降、売上の伸びが鈍化して、前年比を下回ることも出てきました。さらに、昨年、駅前に大手のベーカリーショップチェーンが出店したことで、伸び悩み傾向がさらに大きくなっています。
望月 駅前に大手ベーカリーショップができたことによって、一番影響があったパンの分野は何でしたか? 土屋 ドーナツとかデニッシュとかです。相手は、思っていたほど安くもなかったのですが、ボリューム感があるのが強みのようです。フランスパンなどは、それほど影響はなかったですね。 望月 その辺がポイントになるでしょうね。その影響があったものについて、どういう対策を打つかということですよね。ちなみに今カレードーナツは、1日何回ぐらい揚げているんですか? 土屋 5回ぐらいに分けていますね。最後は夕方の5時ぐらいですね。 望月 オーダー表はあるんですか? 土屋 すべての商品について、オーダー表を作っているわけではありません。以前は、すべての商品について製造数を書かせていたのですが、それも当たりはずれがあったものですから、いまは、ある程度チーフの勘に任せています。基本的な商品の製造量は私が前の日に決めて、チーフに伝えて、後は、状況に応じてチーフに任せています。 望月 駅前にできたベーカリーショップに対抗するには、こちらは焼きたて、出来たて、ということが強みになってくると思います。 そのためにも販売サイドからすべての商品についてオーダー表を出させた方がいいと思いますね。 土屋 それは、社長が命令する形で従業員にきちんとやらせないとだめだと、税理士さんにもいわれました。 望月 チャンスロスというか、中間欠品をなくさないと売上は決して上がらないと思います。いつも切れてる商品が何かを見つけ出すことが大事ですね。 例えばあんぱんがいつも何時になくなっているか、なくなってから次に焼き上がるまでにどれくらいの時間があったか、そうしたことを細かくチェックすることです。 願わくばそれを全品目についてできればいいのですが、それが不可能であれば、最低何品かチェックする項目を決めて、それらについてある程度把握できたら、今度は別の何品かを決めて同じことをチェックしていけばいいと思います。 |

売上は「客数×客単価」 | |
土屋 チャンスロスが多くなってきたので、去年の6月ぐらいから製造数と販売数を毎日つける様にして、製造の方は、その傾向を見ながら製造作業を行うようにしました。そしたら、半年ぐらいしてお客様もだいぶ戻ってきました。しかし、忙しさもあって、また数字での管理をさぼるようになってしまいました。
望月 是非それは継続されるといいと思いますよ。どんぶり勘定にならないために数値管理をするわけですが、数値管理の役割は、地図だと思うんですよ。今自分がどこにいるかを示してくれるのが数値管理です。 売上の上がっていない店舗のマネージャーに「売上はどう」と聞くと、「まあまあですね」という答えが大体返ってくるんですよね。一方、売上を伸ばしているマネージャーは、具体的な数字で答えてくるんですね。目標に対して自分は現在どこにいるかということがわかるから、いろいろと有効な対策が打てるんですよ。 売上が厳しくなる要因は何かと考えると、 客数か客単価、またはその両方が減るということですよね。売上が伸び悩んでいるある店の2年間のデータを調べたら、明確に客数が減っていました。そこで打った対策は、結果を逆手にとって、客数を上げるのは大変なので、客単価を上げようということでした。すると、陳列が変わってきました。品種構成が変わってきました。客数減の要因は、気象状況や競合店の出退店もありますが、自店の内部にあることが多いですね。 土屋 うちの場合も客単価はそれほど変わりませんが、客数が減っていますね。客数が減りだしたのはやはり販売に原因があったと思います。販売のスキルなりホスピタリティーというか、そういう基本的なところが少し欠けた1年だったと思います。うちの家内と販売の社員がペアを組んで販売を行うのですが、今考えると、その販売の社員はうちのお客様とはカラーが合わなかったと思いますね。苦情の電話も多かったし、ネットに書き込まれたこともありました。現在はコミュニケーションをとってかなり改善はしてきていると思いますが、対策を打つのが少し遅かったということはあると思います。 |

上に立つ者の役割は3つある
望月 スタッフに「こうしてくれ、ああしてくれ」といいづらくなっていませんか?
土屋 自分が病気をして、お店に出ることが少なくなったことに負い目に感じているかも知れません。任せている以上は、細かなことをあれこれ言うのは、どんなものかなと思ってしまっているところはあります。社員の機嫌をとっても仕方がないと税理士さんにも言われています。和気藹々とやっているところより、オーナーと社員がぶつかって、一見ギクシャクしていそうなところの方が店としては優れている、とも言われました。 望月 私は、上に立つ者の役割は3つあると思うんですね。ひとつは方向性を示すこと、2番目は、方向性を達成するための環境作りだと思うんですね。3つ目は評価することです。この3つが指導者の役割だと思います。もし社員に方向性を示せていなければ、社員は任されても、どうしていいかわからないですから。任せるのであれば、方向性をクリアに示して、どこまで任せるかも明確にしておく必要があると思います。 例えばあるスタッフに対して、3年後に彼が働いている姿が絵に描けるぐらい具体的に伝えられないとだめだと思いますね。そして、途中の達成度をチェックしていくことです。1年間の目標をスタッフひとりひとりと決めるという方法がいいと思います。そして1年後に、「私の目からみるとあなたの達成度はこうですよ」という風にきめ細かな指摘をしてやることです。この方法にはデメリットもあります。目標以外のことはやらなくなってしまうんですよ。人を育てるという意味では、会社の規模は関係ないと思いますね。育てるシステムは変わってきますけれど。 これからはやはり販売力が勝敗を分けると思います。先ほど店内を見ていたときに、子供さんを連れてきたお客さんに、そばに行って「おとりしましょう」といってパンを取ってあげていましたが、店の評判というのはそういうことの積み重ねですからね。そういう店員の態度は、まわりのお客さんも見ているし、店の評価を高める大きな力になります。そしていいことをしたらきちんと褒めてやれば社員のモチベーションも上がってきますからね。パンがおいしくても、買うときに不愉快な思いをさせられたら、もうその店には絶対行かないですからね。 お店を数字で捉えることを実感できる簡単な方法として、時間ごとの売り上げを記録するという方法もあります。レジの金額を1時間ごとに記録しておくんです。当然最後の閉店時間にはその日の売上合計を記録することになります。これだけでもやっておくと違います。そしてポイントはそれをスタッフの見えるところに貼っておくことです。これをやっていくと数字で1日の売上の変化がわかるので、スタッフ全員がお店の状況を数字で知るこができます。そうすると「今日は売れてるね」とか「今日は少し伸び悩んでるね」みたいな会話が出てくるんですよね。そうするとスタッフのモチベーションが上がってきますよ。 |
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