福王寺シェフから学ぶ、大脳で感じながら行う成形 - ブランスリー電子版


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パン教室潜入取材/2011年4月号

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福王寺シェフから学ぶ、大脳で感じながら行う成形
バターロール生地で作った様々な成形。この日作ったパンは5種類
講師を務めた福王寺明シェフ(中央)と、アシスタントを務めた山田密穂さん(左)と玉澤真由美(右)さん
講習会の会場となったパン工房風見鶏の入り口にあった「定休日」と書かれた看板
 この講習会は、山田密穂さんの運営するパン教室「自然派パン工房ぷれっちぇる」が主宰している。パン工房風見鶏の福王寺明シェフが講師を務める講習会は毎月第3日曜日に、同ベーカリーの厨房で開催。このほか不定期で行う講習会もあり、09年にはブーランジェリー ニコラ パンダーチザンの杉山洋春シェフが講師を務めた。山田さん自ら講師を務める講習会もある。福王寺シェフの講習会の参加費用は1回1万円。定員は約15人。


 福王寺シェフが講師を務める講習会の参加者は、初めてパンを作る人からパン教室の講師を目指す人まで幅広い。
 今回は初めて作るという人はおらず、普段から自宅で作ったり、ほかの教室に通っているという参加者がほとんど。「自家製酵母を扱ったことは?」との福王寺シェフの問いに「ブドウやリンゴ、レモンで起こしたり、失敗も多いが楽しんでいる」「ヨーグルトやグリーンレーズンで起こしたことがある」などの声があがった。
 また、「風見鶏のパンのファンで、店頭でパン教室のことを知り、通うようになった。今回が4回目」という人や、「ほかの教室ではドライイーストのパンを学んでいるのでルヴァンの使い方を学びたい」という参加者もいた。
 福王寺シェフがバターロール生地を使った成形で目指すことは、焼いたときに製品の端までふんわりとやわらかく仕上がること。
 ホシノ小麦粉種(赤)と成形の関係性について、福王寺シェフは「ホシノ小麦粉種(赤)は、酵母の持つ香りや味がやや強めに出るように開発された種。一般に、パンの香りや
味は、発酵が進むと逆に、焼成後弱
くなる傾向がある。十分な発酵をとり、ふんわりとした食感に仕上げるのであれば、この種が向いていると思う。ボリュームもありながら、深い味わいのあるパンに仕上げることができるからだ。特にコロネやウインナーロールのように、棒状の生地を巻きつける成形では、生地自体をねじらないように気をつけることがポイント。そうすれば、端まで均一にふんわりとした製品に仕上げることができる」と述べた。
 福王寺シェフのデモンストレーションが始まると、参加者は「スローモーションでお願いします」「簡単そうに見えるけど、実際やるとうまくできない」などと口々言い、シェフの手元に熱心に見入っていた。シェフはリクエストに応え、所々で停止し、解説しながら、参加者が納得するまで繰り返し行った。
 参加者が最も苦戦していた成形は、コロネとウインナーロール。「生地を棒状に伸ばしても、すぐに縮んでしまう」という問いに、シェフは「押し付けて伸ばすのではなく、転がして」と指導した。
 成形に関しては、デモンストレーション、各自実習、さらにその後一人ひとりシェフの目の前で行って指導を受けるという3段構えで行われた。「成形は大脳で感じて、バランスをとりながら」というシェフのアドバイスがあると、それまで「伸びない」と言っていた参加者は「なるほど、伸びた、伸びた」と言いながら技術を身につけていた。
 指導後は焼きたてのバターロールやウインナーロールを試食。参加者は、「端までふんわりとしていて、焼きむらがない。食べたとき、ほんのり甘い香りが口いっぱいに広がる」と、成形の重要さを実感していた。



バターロールの成形
写真1
写真2
写真3
 らっきょう形にの生地を麺棒を使って伸ばし、巻いていく。麺棒の使い方がポイント

 らっきょう形の頭(太い方)を上にし、斜め向きに台に置く。斜め向きに置くことで、麺棒を使う作業がしやすくなる。麺棒を転がして生地を押し伸ばす。頭から伸ばし(写真1)、
次におしり(細い方)を絞る。さらに、麺棒は右側(利き手側)を支点にし、左側を転がすようにして約40センチの長さになるまで伸ばす。途中、生地の頭を左手で持ち上げ、麺棒を右手で転がす(写真2)と、生地が台にべたつくことが防げる。生地を裏返し(写真3)、一折して巻きのきっかけを作ってから巻き込んでいき、最後は少し生地をつまむ




ウインナーロールの成形
写真4
写真5
写真6
 棒状の生地を転がして伸ばす。伸ばしは、ひっぱるのではなく、転がすことを意識するのがポイント。伸ばした生地を、ウインナーに巻きつける

 棒状の生地の真ん中を片手で押さえて数回転がしたら、もう片方の手も合わせ、両手で全体を転がし、30センチくらいまで伸ばす(写真4)。このとき、手は指の付け根から指先を使う。また、押し付けてひっぱるようにしてしまうと、伸びずに縮んでしまったり、ガスがたまってしまうので注意する。仕上がったときにウインナーがパンに隠れてしまわないよう、ウインナーの少し内側から生地の先をひっかけて、生地自体をねじらないように巻き付けていく(写真5)。最後は生地の端を中に入れ込む



コロネの成形
写真6
写真7
写真8
 棒状の生地を手で転がしていき、肩幅の長さに伸ばす。伸ばした生地をコロネ型に巻きつける

 ウインナーロールと同様、棒状の生地を転がすようにして40~45センチの肩幅の長さの棒状に伸ばす(写真6)。片方の先は細くする。細くした側から、コロネ型に生地の先端が内側にくるように1周巻く。コロネ型に中指を入れ、人差し指を作業台に付けて支えとし、型を転がして生地を巻き付けていく(写真7)。このとき、生地自体を回転させてねじってしまうと、焼き上がりが部分的にかたくなったり、はじけてしまうので注意する

バターロールと成形のいろいろ
写真8
写真9
パン工房風見鶏の人気商品「工房食パン」と同じ中種を使って作るバターロール生地

【中種配合%】
強力粉‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥100
きび砂糖‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥5
練乳‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥5
ハチミツ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥5
天日塩‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥2
▼ホシノ小麦粉種(赤)生種‥‥‥‥‥‥10
水‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥92
【中種工程】
ミキシング‥‥‥水にきび砂糖、天日塩、練乳、ハチミツを溶かし、強力粉を入れて混ぜる
捏ね上げ温度‥‥‥‥‥‥‥20~22度C
一次発酵‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥20度C16時間(冷蔵庫で1週間保存可能)
【本捏配合%】
オホーツク(内麦粉)‥‥‥‥‥‥‥‥70
白金鶴(内麦薄力粉)‥‥‥‥‥‥‥‥30
タピオカ粉‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥2
本和香糖‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥10
塩‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥1.8
発酵バター‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥15
全卵‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥10
中種‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥60
▼生種‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥10
ハチミツ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥5
濃縮乳‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥5
湯‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥30
【本捏工程】
下準備‥‥‥‥‥‥‥‥‥(1)中種と生種は混ぜておく(2)発酵バターは柔らかくしておき、泡立てた全卵を入れて混ぜる。さらに白金鶴(本捏分量内から少量とる)を入れて混ぜ、クリーム状になるまで混ぜ、まとめる(写真8)
ミキシング‥‥‥‥‥‥‥‥ボウルに湯(冬季は42度C)を入れ、塩、本和香糖を入れて溶かす。その中に(1)と(2)、オホーツク、白金鶴、タピオカ粉を入れて手の指を使って混ぜる。まとまったらボウルから取り出し、台の上で捏ねる。最後に力強く捏ねると、ふんわりと、伸びのよい食感に仕上がる。
捏ね上げ温度‥‥‥‥‥‥‥‥27度C
一次発酵‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥35度C1時間(発酵後生地玉のまま冷蔵庫で約30分しめる。一晩冷蔵庫で寝かせてもよい)
分割‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥レーズンバターは150グラム、そのほかは70グラム(分割後、150グラムの生地は丸形、70グラムの生地は棒状とらっきょう形に丸め(写真9)、冷蔵庫に入れて約10分生地をしめる)
成形‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥18ページ参照
ホイロ‥‥‥‥‥‥‥常温、1時間~1時間30分(ホイロ後、表面を乾かし塗卵し、乾かす)
焼成‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥280度C、5分
仕上げ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥コロネは粗熱が取れた後、カスタードクリームなどを詰める
▼ホシノ小麦粉種(赤)生種
【配合%】
ホシノ小麦粉種(赤)‥‥‥‥‥‥‥‥50
ぬるま湯‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥100
【作り方】
(1)漂白した容器にぬるま湯(27度C)を入れ、ホシノ小麦粉種(赤)を加え、ホイッパーでよくかき混ぜて完全に溶かす
(2)完全に溶けたらラップで蓋をする。ラップに小さい穴を一箇所あける
(3)27度Cで20~24時間おく。冷蔵庫で2週間保存可能

原価計算女王
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