大人も夢中!「工場見学」 - ブランスリー電子版


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食のトレンドを追う/2011年2月号

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大人も夢中!「工場見学」
「昔から変わらない憩いの地」「新しい食文化の発信の場」として作られた「かまぼこの里」
「工場見学」といえば、小学生時代の社会科見学を懐かしく思い出す。しかし最近は、「お金をかけずに楽しめるレジャー」として、大人の娯楽ツールとしても注目されている。



「製造ライン見学+おみやげ」はもう古い?

「かまぼこ博物館」の手作り体験講座。かまぼこ・ちくわ手づくり体験教室は1575円、ちくわ手づくり体験教室は525円で参加できる
 工場見学が面白い。人気企業の工場見学は、抽選が行われているほど。インターネットでは、子ども向け、大人向けそれぞれに全国の工場見学情報が充実している。テーマパークなどに比べてお金がかからないため、旅行プランに組み込みやすい点も魅力になっているのだろう。
 一方で、製造工程を見学し、最後におみやげをもらうという形はすでに古く、企業にとってはさらなるひと工夫が必要のようだ。インターネットの「gooランキング」で人気上位にあるビール工場、菓子工場、飲料水工場では、以下のような取り組みをしている。
 ビール工場、ウイスキー蒸溜所、ワイナリー、天然水工場など全国の工場で、無料試飲を楽しめる工場見学を受け入れているサントリー。山崎蒸溜所(大阪府)では、毎年1月末から2月末のバレンタインシーズンに合わせてお酒とチョコレートの楽しみ方を伝える「シングルモルト&ショコラセミナー」を行い、年々人気が高まっている。
 全国12カ所で工場見学を受け入れているキリンビールは、仙台工場敷地内のレストランで地産地消メニューを提案するなど、土地柄を生かしたイベントを開催。
 グリコの「グリコピア神戸」では、ポッキーとプリッツの製造工程見学の他、「3Dシアター」や「グリコのおもちゃ」の展示など、子どもも大人も楽しめる趣向がこらされている。
 工場見学は、企業のオリジナリティを見せるための、イベントスペースやテーマパークとなりつつあるのだ。



「工場見学」を超える「かまぼこ博物館」

小田原鈴廣の「かまぼこ博物館」は入館無料。オープンは平成8年11月15日の「かまぼこの日」
若者のかまぼこ離れも危惧されている中、「かまぼこ博物館」は世代を超えて大人気だ
四季の自然を楽しめる「かまぼこの里」。4月頃までは、約30種類の紅梅・白梅が見ごろだ
 神奈川県・小田原市の老舗かまぼこメーカー、小田原鈴廣の「かまぼこ博物館」は、かまぼこの不思議、原理、科学、健康ニーズまで幅広く遊びながら学べる施設として大人気だ。
 同館は、昭和47年、まず「見るかまぼこ工場」としてスタート。その後、消費者がかまぼこに親しめる体験型の博物館となった。年間約20万人が訪れ、約4万人がかまぼこやちくわ作りの体験教室に参加する。
 「平日は小中学校の修学旅行や授業の一環として、週末はファミリー層など、老若男女、さまざまな世代の方がご来館します。若い女性グループも多いですね。みなさん、『かまぼこがこんなに深いとは知らなかった』『かまぼこに対するイメージが変わった』と言われます」(小田原鈴廣広報・マーケティング課の柿田郁美氏)
 博物館開設後は、訪れる人々の中に子どもの数が増えたことと、「立ち寄り」ではなく、「目的地」として訪れる人が増えたことから、来館者の滞在時間が長くなった、という。
 同館は、小田原鈴廣が運営する広大な「かまぼこの里」敷地内にある。同地には、他に、地酒とともにかまぼこの食べ比べができる「かまぼこバー」や和雑貨店、地元食材を使ったグルメレストランなどがある。
 「かつて、東海道小田原宿として風光明媚なこの地を、たくさんの旅人が往来しました。『かまぼこの里』には、悠久の安らぎの場を今一度、との思いがあります。また、弊社が江戸時代より作り続ける伝統のかまぼこが、いつの時代でも新しくありたいとも思っています。『かまぼこの里』は、かまぼこの魅力や和の食文化の深みを、見て、触れて、味わえる場所です。情報の発信地として、小田原から食文化の新しい風を巻き起こし、地域をよくし、日本をよくし、世界をよくしていきたい、というのが『かまぼこの里』の究極の目的なんです」(柿田氏)
 同社は、ホームページ(http://www.
kamaboko.com/)で「かまぼこの里」を含めた小田原・箱根地方の観光モデルコースを案内している。同社の鈴木智惠子会長は、小田原市観光協会の会長でもあり、地元の他業種とともに観光事業を盛り立てる立場にいることも、背景にあるようだ。 



全国のホテルも積極的にプランに取り込む

「佐賀de学ぶ宿泊プラン~ものづくりの工場見学~」が好評なホテルニューオータニ佐賀
ホテルニューオータニ佐賀のプランの見学場所のひとつ、ヤクルト本社佐賀工場
 工場見学を集客ツールに利用するのは、工場を持つ企業だけではない。日本全国のホテルもまた、積極的に工場見学を宿泊プランに盛り込んでいる。いずれも、リーズナブルな料金設定や限定の特典などサービスが豊富だ。
 ホテルニューオータニ佐賀は、今年3月31日まで「佐賀de学ぶ宿泊プラン~ものづくりの工場見学~」を実施中。味の素佐賀工場、ヤクルト本社佐賀工場、大塚製薬佐賀工場のいずれかを見学する。1泊朝食つき6500円(3人1室)からで、1万3500円からの2食つきプランでは、夕食に「地産地消の佐賀スペシャルメニュー」を用意。さらに、レイトチェックアウトやランチ10パーセント引きチケットなどの特典もある。
 「モノづくりの面白さを伝えたい、というテーマと、たまたま当ホテルから車で30分圏内に大手メーカーの工場が複数あったため、このプランができました。以前から積極的に地産地消に取り組んできたので、地元の産業振興の役に立てればという意味もあります」(ホテルニューオータニ佐賀宿泊課、中野健一氏)
 同プランは、基本的にはシニア層をターゲットにしているが、高校生の修学旅行や、夏休みの子どもの自由研究のためにファミリーで利用する例などもあるそうだ。リーズナブルな価格も人気の一因だ。
 新横浜グレイスホテルの「大人の社会科見学プラン~工場見学~」は、キリンビール キリン横浜ビアビレッジ、味の素川崎工場、日産自動車横浜工場、東京電力横浜火力発電所など横浜・川崎エリアにある工場のひとつを見学するプラン。宿泊料金は、1泊朝食つきで4300円(4人1室)から。
 また、食品メーカーではないが、昨今の「鉄道ブーム」を利用したプランもある。
 大阪市の京阪電車が、昨年、ホテル京阪と琵琶湖ホテルとの共同で企画した、期間限定の「寝屋川車両工場見学付きホテル宿泊プラン」は、親子連れを中心に大好評。たびたび追加販売される人気企画だ。
 京阪電車の寝屋川車両工場での車体点検や整備風景の見学、車両への乗車体験などに参加できる。
 さらに、工場見学は、企業の株主優待にも取り入れられている。これまでは、商品券や自社製品などを株主にサービスするところが多かったが、各企業のよさをアピールしつつ、株主の興味を引く内容を考案する中で「工場見学」が生まれたようだ。
 メーカーにとっては、一部ではあるが、製造工程を公開することによって「クリーンさ」や「企業・商品の強み」をアピールできる。また、現在の目の肥えた消費者もまた、企業および製品をよく知り、吟味できる機会となる。双方にとってメリットある仕組みなのだろう。(U)

原価計算女王
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