広がる「朝食」マーケット【後編】 / 「セキアサ族」も強く支持。バラエティ豊かな簡易栄養食品 - ブランスリー電子版


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食のトレンドを追う/2010年4月号

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広がる「朝食」マーケット【後編】
「セキアサ族」も強く支持。バラエティ豊かな簡易栄養食品
 カロリーメイトなどに代表される簡易栄養食品は、手軽さとヘルシーさがウリとなり、ここ数年、数多くの商品が展開されている。最近では、会社のデスクで朝食を摂る「セキアサ族」の朝食用や、「夕方からのもうひとがんばり用」など、時間帯を限定した商品も出現。これらの簡易栄養食品は、消費者のライフスタイルにどのように組み込まれているのだろうか。



「コンセプト商品」開発の先駆け、大塚製薬
カロリーメイトは、10~20代(男女比はやや男性が多)の需要が多い
「SOY JOY」は、30~50代(男女比は女性が多)の需要が多い
女優の香里奈を起用したカロリーメイトの新しい味「メープル味」の広告
 大塚製薬は、ポカリスエットやカロリーメイトで新たな市場を生み出してきた。その背景には、医療品で培ったノウハウがあった。
 「海外に出張中の社員が食あたりに襲われ、その時の経験から『吸収のいい飲料ができないかな』と考え、『飲む点滴』をコンセプトに開発したのがポカリスエットです。また、同様に、医療機関で用いられる流動食のように5大栄養素がバランスよく配合された食品を健康な方にも、と考案したのがカロリーメイトなんです」(大塚製薬広報部・喜来正氏)
 1983年に発売されたカロリーメイト。当時は「モーレツ社員」などの言葉も流行り、がむしゃらに働く一方で朝食を摂らないビジネスマンが多く、そんな彼らに栄養バランスのよい朝食を摂ってほしい、という思いが開発のきっかけとなった。
 「カロリーメイトは、パンやおむすびなどと同じように食事代替として摂っていただく場合が多いですね。ご飯やお味噌汁などのバランスのよい朝食が理想ではありますが、時間がない場合などに活用していただいています」(喜来氏)
 ポカリスエットもカロリーメイトも、消費者の健康のサポートを訴求するという、明確な商品コンセプトを持っている。
 「ポカリスエットもカロリーメイトも、最初は全く受け入れられませんでした。イオン飲料やバランス栄養食というカテゴリーの市場が全くなかった当時は、『なぜこんな味のものをわざわざ食べる必要があるのか』という評価が多かったようです。でも、早朝草野球の後など、ポカリスエットがおいしく感じるスポーツシーンで積極的にサンプリングを行ったり、運動生理学や栄養について関心の高いスポーツ選手などのクチコミもあり、定着、拡大していきました」(喜来氏)
 カロリーメイトは、1本100カロリーのバーを半分に切れば50カロリー、10等分すれば10カロリーと、1本の中に豊富な栄養素を均一に配合する点に苦労したという。しかしカロリー計測のわかりやすさから、ダイエットシーンでの提案も行い、94年にチョコレート味を発売したことで、女性を中心にブレイクした。
 カロリーメイトの売上は約250億円。ブロックタイプの売上が8割を占め約200億円、残りは缶入りドリンクとゼリータイプで半分ずつの売上だ。また、昨年はメープル味が新発売され、女性を中心に好評だ。女優の香里奈を起用し、「メープルで朝食を」、と改めて朝食喚起を促している。
 筆者が見たインターネットの「バランス栄養食人気ランキング」で圧倒的1位がカロリーメイト、そして2番目が同じく大塚製薬の「SOY JOY」だ。
 「手軽に外へ持って行ける大豆食品」として開発された「SOY JOY」には、大豆をまるごと粉にする技術とカロリーメイトで培った焼き菓子の技術が用いられている。
 食事代わりというよりも小腹がすいたときに気軽に食べられるおやつ、という位置づけだ。焼き菓子タイプゆえ「小麦粉が入っている」という思い込みが消費者には根強くあったが、同商品の知名度を一躍アップさせた豊川悦司と田中麗奈を起用したCMで、100パーセント大豆原料である、ということが伝えられ、女性を中心にヒットした。
 日本での発売に合わせ、大豆の食文化を持つ中国、台湾、韓国、インドネシア、シンガポール、そしてダイエット先進国であるアメリカで同時期に発売した。 
 今年は発売から4年目。初年度は50億円、2年目150億円、3年目170億円の売上。昨年から「Soylution(ソイリューション)」というスローガンをもとに、大豆で地球規模で起こっているさまざまな問題を解決しよう、という取り組みを始めており、今後も様々な大豆加工商品を提案していく予定だ。



時間帯限定商品で消費者のタイムスケジュールに入り込む
「パーフェクトプラス デスクの朝食」シリーズのはちみつトースト味
「パーフェクトプラス デスクの朝食」シリーズチョコ味
今年2月にはゼリータイプも発売された「パーフェクトプラス 朝のチカラゼリー」
サヒフードアンドヘルスケアから発売中の「一本満足バー」は、「夕方からの頑張りに!」というコンセプト。メインターゲットである30代男性のために食べごたえを充実させている
 「朝食用」「夕方の間食用」など、時間帯を限定した商品も現れ、メーカーが消費者のライフスタイルや細かなニーズに入り込もうとしている様子がうかがえる。
 昨年、明治製菓から発売された「パーフェクトプラス デスクの朝食」シリーズ(はちみつトースト味、チーズ味、チョコ味)もまた、会社のデスクで朝食を摂る20~40代の「セキアサ族」を主なターゲットにしている。
 「『デスクの朝食』シリーズは、朝食をすばやく済ませたい、というセキアサ族のニーズに応えるために商品化されました。近年、行政をはじめさまざまな方面から朝食の重要性やニーズを訴求しており、当社も『朝食』に絞った商品コンセプトのもと、市場の既存品への不満点などを徹底分析したんです」(明治製菓健康事業営業部企画グループ・向井亮氏)
 その結果、『ボロボロしない生地』『食べ応えのある食感』『毎朝食べても飽きない味』などの課題をクリアし、忙しい朝でも朝食としてすばやく食べられる商品が実現した。  
 朝専用の「デスクの朝食」が、従来の「パーフェクトプラス」と違う点は、「しっかりとした噛みごたえのある食感の生地」「毎朝食べても飽きない、甘さを抑えた味わい」で、ブドウ糖やカフェインなど朝に摂取したい成分が含まれていること。裏面のマジックカットで、中身に触れることなくデスクでスマートに食べられる。
 明治製菓の調査によると、30代前半までの独身男性の約半数は自宅外で朝食を食べ、さらにその6~7割は会社の自席で朝食を食べるそうだ。また、簡易栄養食品のヘビーユーザーは朝によく利用している、という調査結果もあり、同社はセキアサ族用の商品の開発に至った。発売から1年ほど経って順調に支持を得て、今月2月には新たにチョコ味も発売。また、想定ターゲットである独身男性セキアサ族のみならず、既婚男性や女性からも好評だ。
 「簡易栄養食品は、もともと朝食の時間帯にニーズがあったため、コンセプトを絞った商品を発売したことがよい結果につながったようです」(向井氏)
 明治製菓では、朝食市場や時間帯を区切った商品アプローチに、まだ多くの可能性があると見込んでいる。
 「さまざまなジャンルの食品が朝食市場へアプローチしており、最近でも山崎製パンさんの『ランチパック』は、テレビCMなどで朝食への訴求をしています。一方で朝食を食べない日本人はまだまだ多く、1300万人を上回るという試算もあり、非常に魅力的な市場だと言えます。また、この1年ほどで、食品に限らずさまざまなジャンルで時間帯を細かく区切った商品が発売されています。当社もあらゆる可能性を検討していきたいと考えています」(向井氏)         (U)       



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