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| 食のトレンドを追う／2009年12月号 |
2023年11月18日から、発行から１年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| 節約食？ それとも究極の嗜好のカタチ!? ジャパニーズソウルフード「卵かけごはん」に「ねこまんま」 | |||||||
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| 東西の醤油文化の壁を乗り越えた「卵かけご飯専用醤油」 | |||||||
ソウルフードとは、その地に根ざした伝統料理のこと。イタリア人ならパスタ、インドはカレー、韓国ならさしずめキムチといったところだろうか。もちろん国内の地域によっても違うだろう。大阪ならたこ焼き、四国の人は、うどんと答えるかもしれないし、あるいは母親の手作り料理こそがソウルフードだという人もいるだろう。 だが、おそらく誰もが一度は口にしたことのあるジャパニーズソウルフードといえば、お茶漬けや卵かけご飯などのシンプルな「のっけ飯」を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。 のっけ飯といえば、おかずのない時に食べる「間に合わせの粗食」といった印象が強い。さらに、食の欧米化やバラエティーに富んだ惣菜の登場により、それだけが食卓に並ぶという光景は、もはや少ない。しかし長引く不況による節約志向や内食化などを追い風に、ここ数年、再び注目されている。 火付け役となったのは、「卵かけご 飯専用醤油」の存在。脇役だった卵かけご飯を一躍主役へと押し上げた。今でこそ認知度も高くなっているものの、ブレイクまでにはいくつかの試行錯誤を繰り返しているという。ブームの先駆けになった「おたまはん」を開発した島根県の吉田ふるさと村の企画課・多々納正義さんはこう話す。「実は、関西では反応がよかったのに、関東では美味しくないという声が多かったんです。理由を突き詰めると、どうも醤油の嗜好が違うらしいと……」。 立ち阻んだのは、関西と関東の醤油文化の違いだった。確かに、関西出身の記者も初めて関東でそばを食べた時、ダシの色の濃さに驚いたことがある。 「卵かけ専用醤油は、醤油にかつおだしとみりんで味付けしたダシ醤油。そこで、関東風にみりんの配合を抑えて醤油の風味を残した商品を新たに作り、関東向けに出荷したんです」（多々納氏）。 静岡県を境にエリア分けして販売したところ、評判は上々（現在、エリア分けは廃止）。目新しさも手伝って、メディアも飛びついた。なかでも目立ったのが、アウトドアや車などの男性の趣味系専門雑誌だった。ちょっぴり贅沢なこだわり品として男性の興味を惹いたところが、従来までの商品と違う点だ。 「誰もが口にしたことがある卵かけご飯は、生い立ちをイメージさせるようなノスタルジーがあるんです。『昔は卵が貴重品だったので、１個を家族で分けあった』『初めて夫婦喧嘩した時、出されたのが卵かけご飯だった』なんて昔話が飛び出すこともありました」（多々納氏）。 節約食から、究極のこだわり食へと進化した「卵かけご飯」。その立役者となったのは、ニッチを狙って生まれたこんな変り種調味料だった――。 | |||||||
| のっけ飯ブーム最前線はユニーク「ねこまんま」ご飯 | ||||||||||||||||
そして今、巷の話題をさらっている最新のっけ飯が「ねこまんま」ご飯だ。ご飯に鰹節と醤油をかけて混ぜたものや、味噌汁をかけたものなど、地域によってその定義は違うらしい。 昔は行儀が悪いと言われ、若干後ろめたさの 伴う食べ物だったが、現代版ねこまん まは少々違う。安くて簡単、なおかつ 「楽しい」のがポイントなのだ。 鰹節やバターを初めとするシンプル 素材を使用したものから、ポテトチップスなどのジャンク系まで、固定概念をかなぐり捨てて豪快にのせる様は、ポップさすら漂う。そんなねこまんまご飯を１３６種類も掲載し、第２弾も含め、シリーズ合計２５万部のヒットとなった話題のレシピ本が『おとなのねこまんま』（ねこまんま地位向上委員会編、泰文堂刊）だ。 ｢食材をのせるだけという工程の簡単さや、１食３０円の安さ、そしてバカバカしさがウケたのではないでしょうか」（企画元のアース・スター エンターテイメント宣伝、木村麗子さん）。 誰に注意されることもなく、自由な発想で好きに食べることができる。「おとなの」とネーミングにいれたのは、そんな大人の特権を意味している。 ちなみに一番人気は、なんと「柿ピーねこまんま」。柿ピーとプロセスチーズを混ぜたものをのせて、醤油とごま油で食するのだという。実際に試してみたが、確かにバカバカしいことこ の上ない。悪ノリが高じたいたずらのようで思わず吹きだしてしまう。「不 況時には笑いが流行る」というが、確かにうまくツボをつかれた感じだ。 躊躇しつつも口に運ぶ。ん？ なかなかイケる･･････。柿ピーのスパイシーさとごま油の香りでスナック感覚。思わずおにぎりにまでしてしまった。この意外性こそ、ヒットの要因なのだろう。 ちなみに賛否両論なのは「納豆とキムチのみそ汁まんま」だそう。納豆キムチも定番だし、納豆ご飯に味噌汁をかける食べ方も昔からある。この不人気こそ意外だが、こちらは納豆を食する関西と関東の食文化の違いか。 ねこまんまを浸透させたのは、コラボの功績も大きい。「ＳＨＩＢＵＹＡ ＤＩＮＩＮＧ ぷん楽」（東京都渋谷区）ででねこまんまメニューを提供し、現在も人気を博している。そして、かつお節と煮干の旨味を利かせた「ねこまんま」専用醤油も登場と、話題性には事欠かない。 また、『おとなのねこまんま』がレシピ本にも関わらず「３〜４割は男性購買者」というのは、卵かけご飯専用醤油の動向と似る。これまで、「女性の心をつかめ」が命題だったマーケッターにとって、新たに意識すべきは、２０〜３０代の男性層なのかもしれない。 卵かけご飯にねこまんまは、新しさと郷愁感が多くの人の共感を呼んだ。節約食でもあり、究極の嗜好のカタチともいえる両者は、果たして新たな日本のソウルフードとして根付くのか。 不況時だからこそ、人は限られた素材のなかでアイデアを凝らす。乱立しては消えて行くトレンドの次の動向に注目したい。（Ｎ） | ||||||||||||||||
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