記事の閲覧
<<戻る |
いろいろ、エッセイ/2009年7月号 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
店を代表しているという自覚 - 武市 多美夫(パンを売り続けてきた男)
気に入ったクールビズ用のシャツを片手に「このサイズ合うかな」と販売員に聞いてみた。返ってきたのは「着てみたらどうです」と、無愛想な一言のみ。
鏡の前で背当などしている私を見てその販売員はただ笑っているだけ。子馬鹿にしたようにも見えた笑顔に、どのような意味があったのか今だに分らないが、少なくとも居心地の悪さを感じていた。 販売員の笑顔を見た時「何もしてくれない感じの悪いただのおじさん」に見えた。 そのおじさんから「いかがですか」の一言でもあれば、気に入ったシャツを置いて別の店になど行かなかったものを。 その日その店は、シャツ一枚分の売上を逃がし、私の店への再来の時間を失い将来の売上も逸した。一つの対応ミスが二つのマイナス要因をつくった。ダブルミスである。接客対応の改善を要するということで、クレームとして店に指摘しておけばよかったと、後になって思ったりもした。 パンの販売に携わった長い時間の中でお客様から多くのクレームを頂戴した。異物混入や接客対応の内容が殆どで、時には電話で30分間たて続けに怒鳴られたこともある。謝罪でお客様のご自宅に伺った時に門前払いも経験した。 クレーム対応の方法は様々なケースがあり一概に言えないが、一番大切なことは誠意を持って対応することである。相手の立場になって考え行動出来るか否かに尽きる。テクニックで解決しようとしたら必ず酷い目にあう。人間それほどお人好しではない。 次に大切なことは直ぐに対応することである。連絡を頂いたら時間を置かず直ぐお客様のご自宅を訪問するのが一番望ましい。わざわざ訪問してくれたこと、直ぐに駆けつけてくれたことで、害したお客様の感情をほんの少しだけ和らげて貰えることがある。(クレーム対応について、いつの日にか具体的に触れてみたい) 私がクレームを出し損ねたその会社は、誰もが知っている有名大手の販売会社で、経営者は顧客第一主義を常々マスコミを通して語っている。しかし現場の実情は経営者が掲げる目標からほど遠かった。経営者と現場のギャップを目の当たりにした時、その会社が薄ぺらなものに見えてしまった。 いろいろ、エッセイ(31) 「経営者の考えや方針を聞くより現場を見て会社を判断する」。ある経営コンサルタントの弁であるが、まったく同感である。 特にお客様との最前線に立つ現場(売り場)の者は、会社や店を代表している自覚と行動が求められる。 |



2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。