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いろいろ、エッセイ/2009年4月号 |
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景気低迷でも過去最高益 - 武市 多美夫(パンを売り続けてきた男) いろいろ、エッセイ(28)
庭先の花ももの木の蕾に、花弁の白い色がかすかに観えはじめた。間もなくすると小さな花々が一斉に咲き乱れる。春本番の訪れだ。 毎年、梅の花弁が風に舞い始めると、ももや桜が芽吹き、咲く準備を整える。草花は確実に一年という時間を知っている。 自然は、誰もが心のどこかに求めている「傍にいてくれるもの、裏切らぬもの」への願いを確実に満たしてくれる。 独立した後輩と久しぶりに一献交わした。住宅街の真中に、三人も入ればいっぱいになる小さな店をオープンして早や五年になるという。 一昨年に結婚をして今は二人で店を切盛りしているが、売上は日々厳しさを増し、利益幅も減少の一途であるという。 彼に日々の動きを質問して分ったが、今までのやり方を少し変えるだけで、確実に利益が上がると直感した。 実態は、原価計算をしていない。日毎の労働時間も出していない。月一度の棚卸もやっていない。 店の状態を数値で掴んでいない。つまりドンブリ勘定なのだ。これでは駄目だ。 入ってくるものが売上で、出ていくものがコストで、その差が利益だ。 コストには様々な項目がある。人件費、製造部門の材料費、包装紙や手提げ袋などの売り場での材料費、家賃、水道やガスや電気などの光熱費、修理費、その他様々な諸経費などと多くの項目が行を埋める。 手始めとして、パン作りのコストに関するすべての数値を毎日記録し続けるようにアドバイスした。 大切な事は日々の動きを数値で捉えて、変化を知り対策を打つ事だ。何がどの位変わったかが分れば手が打ち易い。これを成果が出るまで繰り返しやり続けることだ。 彼ならそれは出来るし、必ず成果が出ると信じている。 お客様が一番期待している購入時の判断基準は、「価格が安く」て、「味が良く」て、「ボリュームがある」ことだという。 値上げした店は客数減に悩んでいる。味は変わらず、ボリュームも変わらない。価格アップが大きなダメージとなっている。 値上げした後のお客様の動向を数値で把握し、価格を修正する作業が必要になると思われる。 「ケチでなければやっていけない」という時もあったが、今は「ケチでもやっていけない」時代である。そんな時代の中で望ましい生き方を、これからも模索し続けていきたい。 |




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