ベーグル専門店を営む自分の姿が鮮明に浮かび上がった - マルイチベーグル - ブランスリー電子版


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お店拝見/2007年9月号

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ベーグル専門店を営む自分の姿が鮮明に浮かび上がった - マルイチベーグル

国産全粒粉、有機砂糖、奥久慈卵、無塩バターが材料の「マルイチサブレ」も人気だ。
住所:東京都渋谷区上原 3-2-3
営業時間:午前11時~午後6時(商品売り切れまで)
定休日:月曜日・火曜日



差別化を図ったことはない

店舗は少し奥まったところにひっそりとたたずむ。


開店前の準備に忙しいオーナーの稲木美穂さん。


店内には、稲木さんがセレクトした本がさりげなく置かれていた。


様々なフィリングをはさんで、ベーグルサンドも販売。写真は、さつまいも、かぼちゃなどを合わせたフィリング。
 「気をつけていることは、店の色をつけないことです。『かわいらしい』『温かい』『スタイリッシュ』などのイメージが持たれないように気をつけています。あくまで自分のやりたいことを実現させたいだけなので、他店を気にしないようにしています。差別化を図ったことはありません」
 東京・渋谷区のベーグル専門店、マルイチベーグルオーナーの稲木美穂さんは、こう話す。
 「小さい子でも200円持って買いに来られるような、男性の方も気負いなく買いに来られるような、そんな誰にでも親しんでもらえる店にしたいんです」
 稲木さんは、購入した人が後悔しないような商品とサービスを提供したいと考えている。だから、過度に商品を勧めることはしない。
 「商品についてお客様に説明するときも、さりげなくその特徴を伝えて、『気に入っていただけると嬉しいですけれど』といった感じで、過度にお勧めすることはしません。私自身、喋りのうまい店員にのせられて、思わず買ってしまい、あとで後悔したことがあって、その思いをお客様にはしていただきたくないんです。お客様の意思で買って、判断していただきたいという思いがあります」と稲木さんはいう。
 ニューヨークのエッサベーグルで半年間働き、3年の準備期間を経て2004年に店を出した。
 売り場2坪ほどの小さな店舗で、ベーグルおよそ10品目を作り、対面で販売している。
 ただひたすら、目指すべきベーグルの姿を追求する店、それがマルイチベーグルなのだ。



自分なりのベーグルを作りたい

陳列台には、約10品目のベーグルが所狭しと並んでいた。販売は対面で行う。


7種類の穀物とイチジクが入った「セブングレインハニーイチジク」


ポピーシードを表面につけた「ポピー」


ベーグル自体の味わいがストレートに伝わってくる「プレーン」


岩塩をトッピングして焼いた「岩塩」
 稲木さんは大学を卒業して、企業に就職したが、どこかで「自分が本当にやりたいこと」を探していた。あるとき、ふと頭に浮かんだのが、大学生活の最後に行ったアメリカ旅行中に、ニューヨークで初めて食べたエッサベーグルだった。
 稲木さんの中で、鮮烈なイメージが浮かび上がった。
 「再びニューヨークに行って、エッサベーグルで働いて、技術を覚えて、日本で自分のベーグル専門店を出す、というイメージが、自分でも信じられないくらい鮮明に浮かんできたんです」(稲木さん)
 お金を貯めて、再びニューヨークへ向かった。もちろん目的地はエッサベーグル。女性のオーナーと話をして、1年後にまた来たときに働かせてもらう、という約束を取り付けた。 
 「エッサベーグルでは、とてもよくしていただきました。皆さん、もう何十年と経験を積んでいる職人さんなのに、『ここはこうした方がいい』とか『こんなやり方でやったら、もっとうまくいった』などと、常にいろいろなことを考えています。畏敬の念が自然と沸いてきました」(稲木さん)
 自分の店を出すに当たっては、材料にこだわった。国産の小麦粉を使うことにした。それに合う酵母ということで、ホシノ酵母を採用した。
 「ニューヨークとは、水も粉も違います。日本の材料を厳選して、教わったエッセンスをベースにしながら、自分なりのベーグルを作っていこうと考えました。出店するに当たっては、色々な人に助けていただいて、本当に感謝しています」と稲木さんは振り返る。
 マルイチベーグルでは、仕込む生地は大きく分けて4種類。「プレーン」と、きびやアマランサス、ライ麦、コーンミールなど7つの穀物と、はちみつが入った「セブングレインハニー」、シナモン、レーズン、はちみつが入った「シナモンレーズン」、ブルーベリーとはちみつが入った「ブルーベリー」の4つだ。
 アイテム数は、プレーンのベーグルに岩塩をトッピングした「岩塩」(200円)や、ポピーシードをまぶした「ポピー」(200円)、セブングレインハニーの生地にイチジクを練り込んだ「セブングレインハニーイチジク」(250円)などおよそ10品目。
 「今後の抱負ですか。やりたいことはたくさんあります。それらをこの小さなスペースでどうやって実現していくかをいろいろと考えています」



人生で何をなすべきか

取材メモ オーナーの稲木さんは、ニューヨークのエッサベーグルに出向き、働かせてほしい、とオーナーに直訴したという。何度も通って、頼み続けた結果、やっと受け入れてもらえたという。「英語は?」と聞くと「できません」。自分探しの長い道のりの末に「人生で何をなすべきか」がはっきりと見えた人の底力を感じた。「ベーグル屋をずっとやっていきたい」と控えめに、ごく普通に話すオーナーのその言葉が印象的だった。



原価計算女王
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