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お店拝見/2003年10月号 |
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100年以上守り続けた味 - ウチキパン | |
1888年の創業以来、守り続けた味が横浜元町にある。ウチキパンの「イングランド」(270円)だ。
ホップ種で作る山型食パンで、「ほかのどの食パンとも違う味」として、根強い人気を誇る。打木宏社長は、創業以来の伝統に加えて、「新たな伝統」の始まりを築こうと、思いをめぐらしている。 神奈川県横浜市中区元町1-50、電話045-641-1161、営業時間 午前9時~午後7時、定休日 月曜(月曜が祭日の場合は火曜) |

1862年以来守り続けた伝統のホップ種の秘密 | |
「イングランド」の命ともいえるホップ種は、現在は高性能の機械で厳重に管理されていた。工場長の金山秀男さんは「濃縮ホップと、小麦粉、じゃがいも、モルト、ハチミツ、水などをあわせて、この機械に投入しておくと、温度を一定に保ち定期的に攪拌して、常にいい状態に保ってくれます。毎日1回、新たに小麦粉などの材料を加えて約5日で使える状態になります」と説明してくれた。
社長の打木宏さんによると、イングランドの原型は、1862年から横浜・山下町でベーカリーを営んでいたイギリス人のロバート・クラーク氏が外国人の常食用として販売していた山型食パンだという。ベーカリーの屋号は「ヨコハマベーカリー」。 当時の日本の親英政策などによって、活況を呈したという。1888年に、ヨコハマベーカリーの暖簾を引き継いだのが、クラーク氏の片腕だった、ウチキパン初代の打木彦太郎氏だったのだ。「イングランド」は1862年以来守り続けた味ということになる。 現在の「イングランド」は、工場長の金山さんが守っている。「ホップ種だけでもパンにならないことはないのですが、ベストの状態に持っていくために少量の生イーストも配合しています。しかし、量を少なくしないとホップ種の香りが死んでしまいますから、1%以下に抑えています」と説明してくれた。 現在、ホップ種は、5~6日に一度仕込み、完成したら冷蔵保存して次の種が仕上がるまでの間、使用するのだという。 |

卸から製造小売に特化、主食となりうるパンが重要 | |
ウチキパン現社長の打木宏さんは4代目だが、「パン業界の現状を製造業としてみた場合、かなりシビアな状況だと思いますね」と厳しい見方をする。「人件費が高すぎます。製造効率が悪いんですね」
打木社長によると、戦後、アメリカの製パン設備を導入してパンを大量生産するいわゆるホールセラーが出現し、競争を繰り広げた。次に、ホールセールとは違う方向性として、製造小売に活路を見出そうとする動きが現れた。ウチキパンも、一時はホールセールに力を入れ、 500人の従業員を抱えていたという。 しかし、ある時期から手作りのパンの製造小売に特化した。「パンは米に代わるものです。欧米の主食を、日本人向けにアレンジして、日本人の主食となり得るものを作らなくてはなりません」と打木社長。こうした考えのもとに販売に力を入れてきた「カイザーロール」(80円)や「シャンピニオン」(80円)、「チーズブレッド」(170円)などのハースブレッドのバラエティーが、ここ数年売れ行きが好調だという。売り場中央の平台にまとめて陳列し、PRに努めている。 |

ウチキパンの数々の人気商品、アクセントとしてのドイツパン | |
ウチキパンには、「イングランド」のほかにも数々の人気商品がある。
「桜あんパン」(5個入り300円)は、上質のこし餡がたっぷりと入っていて、多くの固定客を持つ商品だ。工場長の金山さんは「信頼できる業者に北海道産の小豆から作ってもらったあんこを使用しています。あんぱんが好きな人はあんこが好きなわけですからね」と話す。 ソフトフランスにミルククリームをサンドした「ミルクフランス」(110円)と同じくソフトフランスにピーナッツクリームをサンドした「ピーナッツクリームフランス」も人気の商品。両製品とも自家製のクリームを使っていて、一味違う。金山さんは「ピーナッツクリームは、ピーナッツのぺーストからミキサーで捏ねて作るんですよ」といった。 「プレッツェル」(90円)やロッケンミッシュ」(250円)も売れ筋商品だという。 菓子パンやペストリーなどが並ぶ陳列棚には、ドイツパンなどがポイント的にちりばめられている。金山さんによると、ドイツパンなどは、さほど売れるものではないが、「ほかではあまり売っていないパン」がポイント的にあることが重要なのだという。 「いくら人気のパンでも菓子パンやデニッシュ、食パンなんかだけでは、品揃え的に他店と差別化できませんからね」(金山さん) |
「新たな種を開発したい」
ウチキパンは、横浜の元町商店街の終点を右に曲がってすぐの場所にある。4階建てのビルにレトロな雰囲気を醸し出す書体で「ウチキパン」と書かれた看板が掲げられている。1階が店舗で、3階と4階が工場。外見のシンプルさの中に、伝統の重さを感じさせる。
打木社長は、「パン製造小売の業態が構造的に厳しい状況にある」ことを認めつつも、今後の新たな展開に心を砕いている。 「成熟社会になってくると、高付加価値商品が求められるのは当然です。人件費との葛藤はありますが、やはり、特化した商品を作り出さなくてはならないと考えています。その意味でパンの場合は『種』だと思います。ウチの看板はホップ種ですが、ほかには絶対売っていないパンを作り出す目的で、新たな種の開発に力を入れていきたいと思っています」 |
根強い人気を誇る商品。ルバン種を配合 | |
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自家製ミルククリームと自家製ピーナッツクリーム | |
ピーナッツクリームフランス
ピーナッツのペーストから作る自家製ピーナッツクリームをサンドしたソフトフランス。クリームの味が軽くてさわやかなのが、かなり好印象だ。「ウチキパン独自のピーナッツクリーム」ということが一口食べるとはっきりとわかる。ひとつ100円。 ミルクフランス ソフトフランスにバターと練乳などから作る自家製ミルククリームをサンドした商品。「フランスパンの塩味とクリームの甘さがよく合います」とPRしている。ひとつ110円。 |
ごくありふれた商品に人気商品が多い。 | |
桜あんパン
小ぶりのこしあんパンが5個入って300円。こしあんがたっぷりと入っている。あんは、業者に頼んで、北海道産の小豆から作ってもらっているそうだ。「あんパンはあんこが命です」と工場長の金山さんはいう。 アップルパイ ウチキパンの超ロングセラーのひとつ。ウチキパンでは、ごくありふれた商品にロングセラーが多い。アップルパイは、1個130円とリーズナブル。 |
ドイツパンにも定番商品が多い。 | |
プレッツェル
中までかりっとしていて、「ビールのおつまみに最適」と評判が高い。1つ90円と値段もリーズナブルだ。ウチキパンの人気商品のひとつになっている。 ロッケンミッシュ ウチキパンでは、ロッケンミッシュなどのドイツのパンが売り場のポイントに並んでいて、来店客の目をひきつける。工場長の金山さんは「アクセントとしてドイツパンなどほかではあまり売っていないようなパンが並んでいることは結構重要だと思います」と話す。ロッケンミッシュはひとつ250円。 |
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