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| いろいろ、エッセイ／2007年7月号 |
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| 分かり易くてイメージが良いのがいい - 武市 多美夫(パンを売り続けてきた男)
いろいろ、エッセイ(7)
年金記録漏れ問題が起きている。年金を正当に受給する権利が損なわれるような大変な問題である。不明数は５０００万件以上とも報道されているが、この数の多さにも驚くばかりである。 ６０歳を過ぎた先輩から聞いた話によると、確認のために社会保険事務所で調べたら名前と住所が違っていたとのことである。先輩の名前は草川肇というが年金番号で照合した結果は早川肇という名前で登録されていた。草冠が外れて草が早になったのだ。 先輩曰く、もう一人の自分は早川肇という名前で小田原に住んでいると、呆れ顔で話していた。騒がれている入力ミスというやつらしい。あってはならないことが身近な人に起こっている。 名前を持つことは、この世に存在する証である。この問題は存在を抹殺されるのに等しいことであり、間違いを直しただけで済まされる問題ではない。人間が最も尊重しなければならない信頼の問題である。無責任な行動に憤りを覚え呆れ果てる。 こんなことも影響してか、ネーミングについて考えてみた。ネーミングとは商品に名前をつけることである。名前は多くある商品の中から選んで貰うために識別するためのものである。 新製品が決定するとネーミングを決めるが、一晩二晩かけてあれやこれや考えても何も出ない時があったり、その逆でインスピレーションで瞬時に決まったりするケースがある。 名前を聞いたらどんなパンかと想像出来るようなのが良いと思う。分かり易いことが大切だ。あまりイメージに偏って考えると何がなんだか分からなくなる。作り手、売り手が混乱するような名前のパンをお客様が支持して下さるとは到底思えない。単純明快なのがいい。あんぱん、クリームパン、カレーパンはいつの時代も人気製品であるが、分かり易いことと何か関係がありそうな気がする。 お取り置きの注文時にお客様がパンの名前で指定するケースは極めて少ない。｢ほら、柔らかくて上に白いのがかかって、値段が１００円じゃないや１２０円かな。甘くて私の好きなやつ｣と、こんなケースが殆どである。お客様の記憶を聞きながら、あの製品ではないか、 この製品ではないかと、こちらも混沌とした世界に入り込む。 店の名前も分かり難いのが多い。私が店を持つとしたら分かり易い名前にしたいと思う。二度繰り返し言っても言い切れる名前がいい。誰でも一目一言接しただけで分かる名前がいい。 アルファベット文字の表示が多く、これも分かり難い。分かったような顔をしながら買い物して、レジで販売員に「この店なんていうの」とそっと聞いたりする。 因みに今の店はカタカナで表示しているが、「ほら、駅前商店街のあのパン屋」と呼ばれている。未だに店名で呼ばれない。 とにかく店や製品の名前は分かり易くてイメージが良いのがいい。 |
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