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| いろいろ、エッセイ／2007年4月号 |
2023年11月18日から、発行から１年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| 繁盛店の条件 - 武市 多美夫(パンを売り続けてきた男)
いろいろ、エッセイ(4)
また一つ大型ショッピングセンターが横浜にオープンした。ＪＲの最寄駅からは初詣客を思わせる人の波で、予想していたよりはるかに多くの人出であった。オープン当日の来店者は三つの層に分かれる。 一つは大きな買い物バックを持った買い物客の人々。もう一つは見物を目的とした人々。あと一つは同業者と思しき背広姿に鞄を持った人々で、この人達からは店を観て「こんなものか」という見方と、「こんなものまでも」という見方をしていることが見て取れる。 三つの有名ベーカリーが出店していた。お客様は焼き上がったばかりのパンをアピールする店員の売り込みと試食につられて買っている。焼きたての香りになぜか安心感を持つ。 オープン当日の活気ある賑わいは、お祭りを思わせる雰囲気でワクワクする。いつまでも続いて欲しいと思うが、そんな日は長く続かない。月日が経って暫くすると店から賑わいはなくなり、元気だった声がどこかへ消えて跡形もなくなってしまう。まるで祭りの後の静けさと寂しさのようだ。 平日の店内は屋根付きの広い散歩道になってしまうケースを幾度か観てきた。大型ショッピングセンターのベーカリーの運営も大変らしい。営業時間が１２時間と長く、売上が土曜・日曜・祭日と、平日との差が大きくて、人員面でもパートタイマーの確保が大変らしい。 大型ショッピングセンターだから来店客数が多くて良いとは限らないようだ。来店客数が曜日に関わらず安定している方が望ましいと、ある店長から聞いたことがある。 全国展開しているベーカリーのオーナーと話をする機会があったので、繁盛店の条件を聞いた。 キーワードは店舗が『輝いていること』だと言う。具体的には「美味しい」「多品種である」「味や形にブレがなく品質が安定している」「店舗が清潔で綺麗である」「笑顔の接客がある」「立地と売る物が合っている」「価値に対して適正価格である」「品質とサービスが安心安全である」。以上八つの条件が満たされて初めて、繁盛店の入り口に差し掛かることが出来ると言う。 新規出店時は八つの条件を満たすことを念頭に置いて準備を進めるそうだ。既存店では八つの条件を一つ一つチェックして、どの条件にどんな対策を打つかを決めて実施しているとのことである。 繁盛の条件は各々の見方があるだろうが、判断基準を明確にして軸がブレないようにしていることは、繁盛を長く続ける点から必要なことだと思う。 今日オープンしたばかりの大型ショッピングセンターのすぐ近くの新横浜駅には、新たな商業施設の建設工事が進行中である。その他都内でも幾つかの大型ショッピングセンターや商業施設がオープンする予定である。オーバーストアを懸念する声を掻き消すように、新しい商業施設が次から次へ完成していく。 その中で生き残るカギは、繁盛の条件を常にチェックして、改善が必要ならすぐに手を打つスピードではないだろうか。 |
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