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| いろいろエッセイ／2007年2月号 |
2023年11月18日から、発行から１年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| 夢がなくては生きていけない - 武市 多美夫(パンを売り続けてきた男)
いろいろエッセイ(2)
２００７年を迎えた。関東では天候も比較的穏やかな新年であった。元日に近くの神社に恒例の初詣に出かけたが、例年になく人出が多い印象を受けた。今年も商売繁盛と家内安全と交通安全を祈願した。 テレビや新聞の報道によれば、今年も百貨店が年始に売り出した福袋が大盛況であった。 今や福袋は年始の風物詩となった。景気の良い話で結構なことだ。開店を待つ長い行列は開店と同時に猪突猛進、各売り場に雪崩れ込む。 年始にパンだけの福袋を発売して１００袋を３０分で完売した経験がある。確かに根強い人気はあるが、中に入れる商品を吟味する必要がある。２０００円の福袋であったが、お客様からクレームを頂戴する結果となった。 「家族３人で２０００円分のパンでは多すぎて食べきれない。商品をよく検討すべきだ」とのご意見であった。様々なお客様のご要望に対応していくのが商売。それ以降はジャムやスープも入れて工夫した。 年末に食パンが飛ぶように売れた時代があったが、現在はどうだろうか。２５年くらい前の話になるが、食パンの三斤ブロックを置いておくだけで売れたものだ。年末の２９日から店は食パン工場に変身する。製造員は夜勤で食パンを焼き、販売員はそれを冷やす為と置き場の確保のため同じく夜勤して対応した。当時は正月三が日は商売を休む店が殆どであった。よって年末に買い溜めをする。その候補の中に三斤のブロック食パンが入っていた。 何年か経ってコンビニが出現したり、大型ショッピングセンターが元日から営業したり、デパートが２日から営業し始めると、年末に買い溜めする必要がなくなった。それ以来、三斤ブロックの食パンは売れなくなった。 時代と周辺の変化によって商売のタイミングが変わり、売れ筋も変わる。新しい価値観が生まれ、それが受け入れられて定着した時に、時代が変わる。流れを読んで確実に掴み、それに対応する商売の仕方が今後ますます求められる。 話は変わるが２月になればバレンタインデーがやって来る。昨年貰ったチョコレートは２個。これで喜んでいる私。一つは女房殿から。もう一つはいつも昼飯を食べに行く定食屋のおばさんから。「心のこもった贈り物は全ての物が美しい。決して数ではない。心だ」と自らに言い聞かせてチョコを噛む。今年はせめて３個は欲しい。 バレンタインデーはチョコレート業界各社の、その年の売上を左右するほどの影響力があると聞く。花やクッキーやケーキやチョコレートは贈り物に相応しい。パンが今よりもっと当たり前に贈り物に使われたら嬉しい。そのためにはもっと夢のあるパンの物語を作る必要がある。夢だけでは生きていけないが、夢がなくては生きていけないから。 |
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