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| いろいろ、エッセイ／2007年1月号 |
2023年11月18日から、発行から１年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| 考えたこと、感じたこと‐武市 多美夫(パンを売り続けてきた男)
いろいろ、エッセイ(1)
今年から始まると言われる団塊世代の大量退職に伴い、技術継承に危機感を持つ企業の声は多い。パン業界では既に始まっている問題として、人材採用難があり、育成難があり、退職防止が課題になっている。それは製パン技術の継承に大きな影響を与えることになる。 そんなことを思っていた時に、偶然テレビで一人の若者が伝統工芸の修行をする物語の番組をみた。その中で「守」｢破｣「離」という初めて聞く言葉が強烈な印象として残り、調べてみた。 剣道や空手道や茶道では、学び始めてから一人立ちするまでに三つの段階があり、それ が「守」「破」「離」の三段階であるという。 「守」は、教えられた形を正しく守りながら身につけて、語り継がれ守り継がれた基本を大切にする段階を言う。 「破」は、「守」で学んで身につけた教しえや技が、確実に身につき、自分なりの発展を試みる段階を言う。 「離」は、形を離れて独自の新しい世界を創り出す段階を言う、とある。 先日、若い部下を持つ製造責任者から話を聞いた。その部下はセンスもそこそこあるし、他社の動きもよく勉強して、あんな製品を作りたい、こんな製品も作りたいと意欲的だが、技術が伴っていないとのことであった。その製造責任者は「どうしたらいいものか」と迷いをみせていたので、私は「守」「破」「離」の三段階の話をした。既にあれから２カ月ほど経っているが、若者がその後どうなったかは、定かではない。 このような前向きな若者は、 今時珍しいだけに大切に育てたいという製造責任者に、『今のお前は「守」｢破｣「離」のこの位置にいる』と、理解させることから始めるのが最善であると、もう一度話すつもりだ。 製パン技術にも「守」「破」「離」の段階があり、一人前の製パン技術者になるには、それらのどの段階にいるかを知ることが大事だ。その証明はベーカリーを開業した人々の中に見ることが出来る。 あるいは、画家のピカソの話をしてもいいかも知れない。女性の裸像を描いたピカソの初期のデッサン画は、信じられないくらいにまとも(晩年の絵からすれば)である。基本がしっかり出来ているからこそ、それを破り、次にまったく新しい独自の絵が出来て、多くの人々を感動させることが出来ることを教えたらいいかも知れない。 「守」「破」「離」。先達から学びとるものは大きく重い。 |
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