デザイナーの経験を活かして、店舗の各所にさまざまな「癒し」ツール。 - ゆめ酵母 ひげのぱん屋 - ブランスリー電子版


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お店拝見/2006年9月号

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デザイナーの経験を活かして、店舗の各所にさまざまな「癒し」ツール。 - ゆめ酵母 ひげのぱん屋

馴染み客でにぎわう店内。右側が入り口で、左側がレジ。右上方にかかっている布は、屋根から直接差し込む光を、やわらかな光に変える役割を果たす。
和のテイストと洋のテイストが不思議な感じでマッチした店構えのベーカリーが、神奈川県横浜市港北区にある。その名を「ゆめ酵母 ひげのぱん屋」。モットーは「常に焼きたてを提供すること」。

住所 神奈川県横浜市港北区新吉田東5-47-16
電話 045-540-1722
営業時間 午前7時~午後7時
定休日 月曜日、第2、第3火曜日
最寄り駅 東急東横線・綱島駅(バスで約10分)
店舗面積 約30坪(製造スペース約18坪、販売スペース約9坪)
品揃え 約60品目
客単価 750円
日商 40万円
スタッフ 9人(製造6人、販売常時平均3人)



少量、多頻度生産。「焼きたて」を徹底

レジの斜め後ろには、3段のオーブンが設置されている。


入り口のドアを開けてすぐの場所に、動物たちが戯れる牧場のミニチュアがある。


売り場の一角に横澤さんが好きな、宮沢賢治の絵本が飾られていた。


外には、来店客が、購入したパンなどを飲食できるスペースが設けられている
 「ゆめ酵母 ひげのぱん屋」のオーナー、横澤公さんは、元デザイナーだけあって、店舗のデザインにはかなりこだわった。
 売り場は約9坪。売り場の天井のほぼ半分が、斜めに傾斜したガラス張りの屋根の部分まで吹き抜けになっていて、途中に麻布がはってある。
 屋根から差し込んでくる光が、その麻布によってやわらかな光に変えられ、売り場のパンを包み込む。
 入り口のドアを開けてすぐの場所には、牛やアヒルなどの動物たちが戯れる牧場のミニチュアが飾られていて、子供たちに大人気だ。 
 さらにもうひとつドアがあって、そこを開けると、パンが並ぶ売り場だ。中央にある平台には、「ごまだれメンチ」(189円)や「ミニ・チリドッグ」(147円)などの調理パンや、人気商品の「カレーパン」(126円)、一味違ったラウンド食パンの「シソ・カマボコ・チーズ巻き」(682円)などが並んでいた。
 レジの斜め後ろには、3段のオーブンが設置されていて、パンの窯入れや窯出しが売り場から見えるようになっ
ている。
 同ベーカリーは、「焼きたて」「揚げたて」「できたて」を徹底して実践している。ほとんどの商品が、1回に焼いたり揚げたりする数量が10個前後だという。人気商品のカレーパンは1日平均25回以上は揚げ、食パン類もほとんどの品目について1日3回程度は焼くという。
 「うちは、すべての棚にパンが満たされるという瞬間がないんですよ。『少量ずつ焼いて、売り場に運んで、すぐに売れて、また焼く』という繰り返しなんです」と横澤さんは話す。
 天候や気温、季節などさまざまな条件を加味し、製造量を決めて、しかも予定外の追加にも対応できるような体制作りをきちんとしている、という印象だった。
 横澤さんは3年前に現在の店をオープンしたが、それまでには長い苦難の日々があった。
 1991年に初めて持った自分の店が1年足らずで廃業に追い込まれた。
 それ以来、売り場のない小さなパン工場でパンを作り、移動販売などを地道に行ってきた。
 あるとき、売上を伸ばそうと、デパートに体当たり営業を行った。
 あるデパートでOKが出て、催事からスタート。
 実績を重ね、固定の売り場を得た。長い間、寝る間も惜しんで、パンを作り続けてきた。



「自分でやるしかない」。最初の店が1年で廃業

売り場の天井のほぼ半分が、斜めに傾斜したガラス張りの屋根の部分まで吹き抜けになっていて、麻の布がかけられている(右上)。屋根からの光が、やわらかな光となって店内に差し込む。


中央にある平台には、「ごまだれメンチ」(189円)や「ミニ・チリドッグ」(147円)などの調理パンや、人気商品の「カレーパン」(126円)などが並んでいた。


店内には心地よい音楽が流れ、来店客をほっとさせる。
 横澤さんは、もともとデザイン事務所を営んでいた。専
門は店舗デザインと広告デザイン。しかし、「魂を注ぎ込んだデザイン」(横澤さん)に対する依頼主らの態度に極度のストレスを感じていた。下請けの辛さを嫌というほど味わった。
 横澤さんは「自分でやるしかない」と決心。パンが好きだったことから、1991年1月、スタッフを雇い、神奈川県の某所にベーカリーを開いた。念願の自分の店だった。
 しかし、スタッフたちと意見が合わず、たびたびぶつかるようになった。オープンから半年後、スタッフたちが一斉に一人残らず去っていった。横澤さんは、自分ではパンを作っていなかった。パンができなければ店は続けられない。横澤さんは、パンの本を見ながら自分でパンを作って売り場に並べた。
 しかし、甘くはなかった。売上は急激に落ち込み、その年の暮れに閉店に追い込まれた。明けて、正月、こたつに入って、天井を仰ぎ呆然とする横澤さんの元に、店舗の大家が訪ねてきた。「パン屋を続ける気はあるのか」と言った。横澤さんは「はい」とうなずいた。
 大家は、パンが作れる9坪の工場を「ある時払い」で貸してくれた。2003年に現在の店をオープンするまでの長い苦闘の日々が始まった。



こだわりの商品が店内に並ぶ

本格的なニューヨークベーグルを再現した「ベーグル」(147円)


取材に応じてくれた横澤公さん


食パンの「胚芽パン」(1斤294円)食パン類はほとんど予約で売れてしまい、店頭に並ぶことはあまりない。


個性あふれる店構えの「ゆめ酵母 ひげのぱん屋」


ほうれん草入りの食パン生地を田舎パンの形に成形して焼いた「ほうれん草の田舎パン」
 「ゆめ酵母 ひげのぱん屋」には、個性豊かなパンがたくさん並んでいる。
 「牧場のクリームパン」(157円)は、小岩井牧場から直接取り寄せている卵と牛乳を使って作るカスタードクリームを使用した商品。
 「ベーグル」(147円)は、本格的なニューヨークベーグルを忠実に再現した商品で、人気を集めている。
 「ぶどうの田舎パン」(294円)は、レーズン入りのカンパーニュだが、生地は食パンに近い。
 「いきなり本格的なカンパーニュを出しても、なかなか買ってもらえません。お客様には、段階的に慣れていってもらいたいと考えているんです」と横澤さんはいう。
 このほかにも、「ほうれん草の田舎パン」(315円)や「オリーブカンパーニュ」(840円)など、ハード系の形をした比較的口溶けのいいパンがたくさんあって、どれも人気を博しているという。
 「深谷 de フランス」(レシピを11ページに掲載、231円)は、深谷ねぎと西京味噌を使ったユニークな商品だ。
 「シソ・カマボコ・チーズ巻き」(682円)は、その名の通り、しそ、かまぼこ、チーズを巻き込んだラウンド食パンで、「私は、かまぼこがとっても好きなんですよ」と横澤さんは笑った。
 「カレーパン」(126円)は人気ナンバー1の商品で、牛肉を入れた自家製カレーフィリングを使用している。

自分のパンを求める客と出会った

レーズン入りの食パン生地を田舎パンの形に成形して焼いた「ぶどうの田舎パン」


「赤ちゃんのげんこつ」と名づけた黒糖ドーナツは子供に人気だ。ひとつ73円。


小岩井牧場から直接取り寄せている卵と牛乳を使って作るカスタードクリームを使用した「牧場のクリームパン」。
 横澤さんは、現在の店を開く前の、売り場を持たないベーカリーを営んでいた時代に、作ったパンを車に積んで、スーパーで販売していたことがある。売上が思うように伸びずに悩んでいたときに、ある人から、「あなたのパンはスーパーではなく、デパートで売るパンだ」といわれた。このひと言がその後の横澤さんの方向を決定付けた。
 デパートの催事に参加し、実績を積み重ね、固定の売り場を持つようになり、安定した売上を得るようになった。
 「自分のパンに合ったお客様と出会うことが大事だと思うんです。商品を買うかどうかを判断する基準は決して価格だけではないということを実感しています」(横澤さん)

深谷 de フランス
 【配合%】
スワッソン(フランス産小麦の粉)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥50
リスドォル(フランスパン用粉)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥50
パニサーブ(改良剤)‥0・2
水‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥66
モルト水‥‥‥‥‥‥0・4
ルヴァン種‥‥‥‥‥‥10
インスタントイースト‥0・6
天然塩‥‥‥‥‥‥2・1
 【工程】
ミキシング‥‥L1分(イースト投入)L5分30秒M2分
捏ね上げ温度‥‥‥24度C
フロアタイム‥‥1時間~1時間20分(パンチ)30~40分
分割‥‥‥‥‥‥100グラム
ベンチタイム‥‥‥‥‥30分
成形‥‥‥(1)手のひらで軽く長方形にのばす(2)[1]の上に西京味噌を塗る(3)[2]の上に長ねぎ(約12センチの長さに切り、縦2等分にして芯の部分をとったもの)をのせる(4)生地を手前から奥に向けて折りたたみ、とじ目をしっかりと押さえ、転がしてプチフランスのような形に成形する
ホイロ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥26度C72%30分(布取り、ホイロ後白ごまをトッピング)
焼成‥上火240度C下火250度C約20分(スチーム注入)

原価計算女王
原価計算女王

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