■自分のお店を写真撮影してみる 前回の店外診断(前編)では、お店の外観とサインについて診断をしました。
店舗診断を進めていく上で、最も注意しなければいけない点は、「お客様の視点で判断する」ということです。しかし、実感としては「簡単じゃない」が本音となります。
店長にとって自分のお店は、見なれた、働きなれた空間ですから、なかなか客観的な立場で判断しづらいのも当然といえます。
そこで、私がぜひおすすめするのが、「自分のお店を写真撮影して、それを見る」ことです。
「なぜ?」と思われるでしょう。しかし実際、不思議なことに、写真をプリントして、お店を見てみると、今まであまり意識できずに、気づかないでいた本当の「私の店」の姿がわかります。
このことは、お店の外観に限りません。「レジバックが乱雑」「陳列棚のダンボールが丸見え」「ディスプレイが古くなって陳腐」などの、問題点がわかりやすくなります。
また、ビデオカメラを使って、お店へのアプローチ(歩行、車)を撮影することも有効です。それが、お店の視認性を確認することになります。
お客様の視点でお店を判断することが、「店舗診断」では最も重要です。
その第一歩として写真撮影を心がけて下さい。
お客様にとって、入りやすいお店にする―これが売上アップに直結する大切な要素です。
■「繁盛店」は店頭に魅力がある ベーカリーに限らず「繁盛店」と呼ばれるお店は、魅力的な店頭(フロントスペース)でお客様をお迎えしています。
店舗を企画・設計する場合、予算は限られています。そのなかで、「内装よりも外装や店頭に重点を置く」という方針の店が増しています。これこそが、お店の第一印象を重視するということなのです。
お客様は、お店に一歩足を踏み入れるときの印象で、瞬時にお店のクオリティーを判断します。そのときに「おいしそうなパンがありそう」「探してみよう」と思わせたいものです。
逆に、「おいしいのかしら?」と思われたのでは、せっかくの自慢の商品を選んでいただく上で大きく不利になってしまいます。
それでも入店していただければ、まだ良いのですが、お店に入っていただけなければ、どんなにおいしいパンもお客様にアピールすることはできません。
■「思わず入りたくなるお店」の6カ条 (1)外からの店内の見せ方
開放度を高めるために、前面に大きくガラスを設置することが多くあります。
来店される方、その他の方の自転車が商品を隠しているもったいない場合もあります。自転車置き場、または自転車を置きやすい場所をつくります。
日差し対策のブラインドなどが店内への視界をさえぎることもあります。商品への影響上、それらの設置は仕方がないことです。しかし、出店の検討段階や、設計をするときには、売上の見込める「昼から夕方の時間帯」に、直接日差しの影響を受けないかチェックするのが基本です。
また、「見せ方」のほかにも、「香り」がとても効果的です。焼きたてパンの香りは、外を歩く方に大きなアピールをします。
厨房のオーブンの排気を歩道側に出すことで、店頭においしい香りをかもし出します。
(2)パンが生きるデザイン
手作りのパンの魅力をアピールするための店頭デザイン、使用素材に気をくばります。木材、レンガ、石などの天然素材や、塗り壁などで仕上げます。
予算の都合で、既製のアルミサッシなどを使う場合でも、それらしく見せることができるシートや、新しい建材などで補います。
(3)床の入りやすさと安全性
お店の出入り口には、できるだけ段差をつくらないようにします。建物の構造上、やむを得ず高低差ができてしまう場合は、スロープをつくります。
また、店内のすべりや転倒事故防止にも注意します。床のすべりによる転倒事故の多くは、「すべるはずがないと思っていた場所がすべりやすかった」という原因によります。雨の日などは、お客様の靴が店内の床を濡らして危険です。大きめの入口マットなどを置いて、水をシャットアウトします。
入口マットは、ほこりの進入も防止できるので効果的です。
マットの汚れは、定期清掃で防止し、清潔感もアピールします。
(4)どんな出入り口がよいか
出入り口の自動ドアは、入りやすさに関しては有効です。しかし、必要に応じた点検・調整を心がけます。
センサーの感度、反応角度によっては、思わぬ開閉をしてしまいます。外の歩行者、店内のお客様の移動で、過度の開閉をしては、落ち着かない空間になり逆効果も考えられます。
お店のデザインや店格を考えて、開き戸を選ぶ場合は、重くなり過ぎないようにします。
また、手動の引き戸は、出入りのあとの完全な閉めきりという動作の難点があり、お客様と店員に余分なストレスが生じるのであまりおすすめできません。
また、出入口のドアの位置は、少しセットバックします。その気くばりで、お客様がお店に入りやすくなります。(写真(1))
(5)こだわりの植物
店頭に植物を置いて、やすらぎやナチュラル感を演出します。しかしその植物にもお店のこだわりがほしいものです。手入れをしっかりして、お客様とその植物のことで会話がはずむようになればベターです。
(6)清潔で明るい入口とフロント
お客様をお迎えする店頭です。清潔をアピールするのは、販売以前の問題です。必ず開店前に、店頭やガラスの清掃を入念に行います。営業中にも点検をくり返します。
特に力を入れたいのが、ガラスの清掃です。
車の通行の多い場所では、清掃を怠ると汚れがこびりついてしまいます。プロのクリーニングに依頼する事態になることもあります。
ガラスは店内側の汚れにも目を向けます。商品に近いガラスに、クリームや粉糖がついていては、魅力あるパンが台無しです。
汚れにくくする工夫も重ねます。高いビルの1階にあるお店では、外壁に当たる雨がやっかいです。高層階の汚れが店頭部分を汚してしまいます。
その場合、壁に雨どいの働きをする造作をほどこして、店舗部分の壁を汚さないように防ぎます。
№13 フロントスペースは、立地条件により設けられない場合がある。スペースがないからといって必ずしも×ではない。出入りするお客様と通行人とが接触しやすいのは良くない。 №14 店頭から店内が見えるか。その開放度は適切か。 №15 日差しが商品に影響を及ぼしているか。その対策のためにブラインドが商品を隠していないか。 №16 店頭や通行人に向けて、焼きたての香りを演出しているか。 №17〜18 デザインは良いか。他店との差別化はあるか。 №19 傷みはないか。 №20〜21 床の段差はないか。滑りやすくないか。 №22 出入り口はお客様が入りやすい位置か。 №23〜24 扉は開けやすいか。店格にあっているか。 №25 植物にはこだわっているか。手入れをしているか。 №26〜27 店頭やガラスの清掃は開店前に必ず毎日行っているか。 №28 車の来店者が多い場合、駐車場はあるか。停めやすいか。案内はわかりやすいか。 №29 ポスターPOPは古くないか。商品や店内を隠していないか。 №30 店外に向けて、メッセージを発信しているか。 |
写真(1) セットバックして入りやすくした入口 |