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お店拝見/2005年2月号 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
新たな業態 - Breadal one | |
ベーカリーのあり方の新しい形が登場した。昨年4月に、東京・世田谷区にオープンしたBreadal Oneだ。営業時間は、基本的に正午から午後2時までと、午後5時から午後7時までの1日合計4時間。品揃えは30品目弱。店舗面積は6・5坪(売り場1・5坪、厨房5坪)。販売方法は対面販売。製造はオーナー1人。販売は、パートもしくはオーナー夫人1人。平均日商は8万円。
住所 東京都世田谷区給田3-5-2 電話 03-3308-6599 営業時間 正午~午後2時、午後5時~午後7時 定休日月曜日、木曜日 |

感謝の気持ちが仕草に現れる。売り場1・5坪の小さな店 | |
冷たい雨が降り続くとある土曜日の午前11時30分。傘をさした女性がひとり、シャッターの閉まった店の前にたたずんでいた。その女性を横目に見ながら、店の裏にまわり、ドアをノック。中から「どうも」と元気のいい声が響いてきた。オーナーの山岸充さんは、開店を30分後に控え、忙しそうに動いていた。焼きたてのパンをのせた天板が次々とオーブンから出て来て、ラックに差されていく。それを恵子夫人が手際よく陳列台に並べていく。「今日はバターロール少ないの」(恵子夫人)。「いや、そこにもう一枚あるよ」(山岸さん)。
正午の開店時間が来て、山岸さんが厨房の裏から、店の正面に出てきた。「いらっしゃいませ。お待たせいたしました」といいながら、すでに15人ほどになっていた顧客の列の脇を通って、ドアのところに行き、ドアを開け、顧客を招き入れる。「私のパンを買いに来てくださって本当にありがとうございます」という感謝の気持ちが、仕草の端々からにじみ出ていた。 売り場が狭いので、一度に入れるのは3人まで。1人が買い終わったら、一人入って・・・という具合。 Breadal Oneは、売り場が1・5坪ほどしかない小さな店。入り口のドアを開けると、すぐに右手が平台のような陳列台になっていて、パンがぎっしりと並んでいる。その下は、ショーケースになっていて、その中にもパンが陳列されている。レジは平台のような陳列台のすぐ脇にある。恵子夫人が1人ずつ注文を聞いて、パンをとり、包装して手渡し、清算する。清算が終わるごとに恵子夫人はもちろん、厨房で仕事をしている山岸さんも、大きな声で「ありがとうございました」と声をかける。山岸さんは、窓がついた壁をはさんで、顧客から、2メートルほどの距離で仕事をしている。 |

想定外の状況にうまく適応し、現在の形に進化した。 | |
「最初は本当にすべて自分ひとりでやろうかと思っていたんです」。山岸さんはこう話した。開店時間までに1日分のパンを作ってしまって、あとは山岸さんが自ら販売しようと考えていたのだという。
だから、時間がたっても味と食感があまり変わらない種類のパンをできるだけ作るようにしていた。 「しかし、1時間で売り切れてしまいました。1時間で店を閉めるわけにもいかないと思い、また仕込んで焼き上げて、販売しました」(山岸さん)。 毎日のように試行錯誤を重ねているうちに、今の営業形態にだんだんと落ち着いていった。 現在は、正午から午後2時までに販売するパンは、午前9時ごろから焼き上がったもので、午後5時から午後7時までに販売するパンは、午後3時ごろから焼き上がったもの。 基本的に第1回目の販売時間に合わせてパンを作って売り切り、第2回目の販売時間に合わせてまたパンを作って売り切るという形だ。このことが、すべてのパンが新鮮な状態で顧客の手に渡るという結果をもたらした。 「すべてが結果オーライでした。最初に考えた営業形態と全く違ったものになりました」(山岸さん) 想定外の状況にうまく適応し、現在の形に進化したのだ。 |

ずっと夢見てきた「自分パンを売る小さな店」が実現した。 | |
山岸さんは、大手リテールチェーンのポンパドウルで、18年間、パン作りに携わった。その経験をいかして、自分が作れるだけのパンを作って販売する小さな店を持ちたいと頑張ってきた。
昨年4月、41歳で独立。ずっと夢見てきた「自分のパンを売る小さな店」が現実のものとなった。 「商店街ではなく、住宅地に出したくて、物件を探していたら、この物件に出会いました。予算的にもちょうど良かったので、ここしかないと思いました」(山岸さん) 山岸さんの兄の妻が建築会社に勤めていて、その建築会社に店の内装を頼んだ。 「無垢の木を使った建物を得意としていたので、ちょうどいいと思いました」(山岸さん)。 「今後の抱負は」の質問に山岸さんは「今は品数を絞り込んでいて、デニッシュ類を作っていません。なるべく早く、彩り豊かなデニッシュを作れるように体制を整えていきたいと思っています」と話した。 |
エリンギ、しめじ、舞茸を炒めて包む。 | ||||||||||||||||||||||||||||||
きのこフランス
きのこフィリングをフランスパン生地で包んで焼き上げる。150円。 【配合%】
【工程】
※ホイロ後、上面に小麦粉を振り、三つまたのカットを入れ(カッターが具まで届くように)、バジルバターを塗って、チェリートマトをトッピングする。 ▼きのこフィリング 【作り方】(1)エリンギ、しめじ、舞茸をオリーブオイルで炒める(塩、コショウで下味を付ける)(2)[1]が100%に対して、アーモンドスライス15%、チェダーチーズミックス50%を混ぜ合わせる |
カスタードクリームをサンドしたブリオッシュ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
シナモンブリオッシュ
カスタードクリームをサンドしたブリオッシュ。グラニュー糖などをトッピングして焼成。150円。 【配合%】
【工程】
※ホイロ後、卵を塗って、7箇所程度に指先でくぼみを作り、それぞれのくぼみにバターを少量入れる。さらにシナモンパウダーとグラニュー糖をトッピングする。 |
茹でたじゃがいもとチーズを生地に練り込む。 | ||||||||||||||||||||||||||||||
ジャガイモとチーズのパン
フランスパン生地に茹でたじゃがいもとチェダーチーズを練り込んで焼き上げる商品。独特の食感が特徴。150円。 【配合%】
【工程】
※焼き過ぎないように注意する。 ※ホイロは、生地をベーキングシートの上においてとり、ベーキングシートにのせたまま焼成。 ▼茹でたじゃがいもをつぶしたもの 【作り方】 (1)じゃがいも(メイクイーン)を茹でて皮を剥く(600グラム) (2)[1]に無塩バター100グラム、塩5グラム、コショウ適宜を加えて、じゃがいもの小さなかたまりが残る程度に混ぜ合わせる |
オートリーズで深い味と香りを引き出す。 | ||||||||||||||||||||||||||||
フランスパン
オートリーズ法のバタール。210円。 【配合%】
【工程】
※ホイロ後、小麦粉をふってクープを入れる。 ※オートリーズで生地を熟成させ、さらにイーストの配合量を少なくして発酵を長時間とることで、発酵によって作り出される味と香りを引き出す。 |
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