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私の開業物語/2004年9月号 |
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延期はしたけれど…収穫は大きかった! - 私の開業物語(3) BY 鈴木紀美枝 | |
前回書いたが、私は出身高校の同窓会で名簿の係をしている。5年に一度の同窓会名簿を発行する。来年がその当たり年。不明な住所の調査員としての任務を逐行するうちに、同期会を開くことになり、その幹事になった。そして苦労して迎えた当日、出席者は恩師を含めて97名。先生へのおみやげは、私の「自宅手作り」のパウンドケーキ詰め合わせであった。
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喫茶店での密談? 2月某日。ベーカリー材料卸会社の営業担当者2人と面談。商店街で唯一のパン屋、ベテラン・ベーカリーの殆どの材料を卸している会社である。
場所は、開業予定の貸店舗の向かいにある喫茶店。 コーヒーを注文すると開口一番「いやー、それにしても近い、目と鼻の先ですね」と一人が言った。場所が近すぎるので、社内的には取引は難しいかも知れないという。 それはそれとして、私が事業計画を話すと、「特徴を出して、1日7万円売れば、儲かりますよ」と言われた。卸会社2社と合うことにしていたが、そんな訳で、後日、「やはり無理でした」と返事が来た。 2社目は、系列会社に友人がいるので話を通しておいてもらった。その会社はアンテナショップを経営していて、まずその店に案内してもらうことになった。 常磐線の駅で待ち合わせて行った先は、駅から遠く、車での来客が多いとのこと。客数、坪単価も高いそうで、ベーカリー事業の一環として、店舗全般の提案をするためのモデルケースにしている。隣のファミレスで双方がプレゼンを行った。 後日、多くのベーカリーを手掛ける建築デザイン事務所の方2人と貸店舗を見に訪れた。駅から2人を連れて商店街を歩いてくると、貸店舗へ行く曲がり角の少し先にライバル(?)ベテラン・ベーカリーが見えた。 すると2人は店の中に消えていくではないか。外観・内装・商品を観察して、パンを買いがてら、店の奥さんと会話までして戻ってくると、「あれなら大丈夫ですよ」と言った(対するこちらが、どうなのかってことだが・・・)。 さらに取引卸業者もぴたりと当てた。店に並ぶパンを見れば分かるのだそうだ。 店舗の中を細かく見てもらい、どこまで大家さんに手を入れてもらえばよいかの支持を受け、今回も向かいの喫茶店で打ち合わせである。材料の見積もりと、店舗の図面を引いてもらうことを確認して散会した。 この喫茶店はご近所さんであるベテラン・ベーカリー社長もよく来ている。そのせいか、なんだかよからぬ相談でもしているような気分になったのだった。 |

フーズ系の同期生 さて、この連載がスタートする前の6月中旬に始まった同窓会の名簿係であるが、8月7日の同期会当日を過ぎて今もなお、反省会だ、HPだと、かかりっきりになっている。
発端となった名簿調査のとっかかりは、顔の広い人物に電話をすることからだった。 7年ぶりに電話をかけた相手は、20代の時にOLからケーキ職人に転身、同期生同士で結婚、出産したあとは、近所の主婦たちにケーキ作りを教えていた、という人。私がパン屋で働いていることや、あれから子供が生まれたことに驚いていたが、彼女の方はというと、オープンしたばかりの近所のカフェで働いているというのだ。 麻の実や麻油(ヘンプオイル)を使い、玄米食の今流行のオーガニック&スローフードのカフェである。 洋菓子のメニュー作りは彼女の担当で、豆腐のチーズケーキ、麻の実ガトーショコラ、おからクッキーは美味しかった。彼女個人では、ケーキの注文製造、クッキーのネット販売もしているとか(おからクッキーのレシピを聞いたら、「教えるわけないでしょ」と断られた)。 また、住所不明だったラグビー部員が、脱サラして南インド料理屋をオープンしたことをつきとめた。同じクラスになったことがない彼とは、見ず知らずなのだが、同期生が飲食店をオープンしたとあらば、見に行かない手はない。 それでも不安とワクワクが入り混じった心持で訪ねると、心配には及ばず、料理を食べながら、話は弾んだ。 店で出されたインドパンは、ペタンコの無発酵パンで、全粒粉とスパイスの風味。歯応え、水分感、もっちり感は、東洋人向きなのかなと思わされた。無発酵パンにも興味はあった。 彼は世界中を旅行し、インドでインド料理にハマッたというが、この夏休みはバイクで北海道へ。独身者で蓄えがあるので、「当分の間、店は趣味」とさらりと言ってのけた。 そんな彼と私との(貧富の)差は著しいが、同業種であるという親近感が強く、「私もガンバロー!」と決意を新たにしたのだった。(同期生は400名近くいるが、今のところ分かっている「食」業人は、私を含め3人。あれからも、2人の店には通い、宣伝も忘れない) |

見積もりお願いします 三大機械である、窯・ホイロ・ミキサー以外にも必要なものは沢山ある。それら計器・備品であるが――。
ある店で、出入りの業者の1人が「合羽橋は高いですよ」と言っていたのが耳に残っている。 その出入り業者と、合羽橋のある店に電話をすると、カタログを送ってくれることになった。一方は送料着払いとのことで、700円也。 しかし、カタログが到着してみると、両者は全く同じものだった。表紙の印刷が違うだけの、B5版で厚さ5センチ強の『業務用総合カタログ TABLEWARE KITCHENWARE』である。その中からスライサー、ラック、製パン用小物、販売グッズ、掃除用品、etc・・・計五十数点を選び、見積もり依頼書を郵送した。 そして帰ってきた見積書を比べてみると・・・。一方の店が総じて高額、というわけではなかった。商品によって高かったり安かったり。つまりどっちもどっちだった。2枚の見積書を一覧表にした。チョイスして発注するとしよう。 パン屋・洋菓子店・そば屋・天ぷら屋などに卸している粉問屋が近くにある。 私の記憶では、とあるパン屋に配達した際の納品書に、ある強力粉の一袋(25キロ)の値段が、2500円とあった。 そのことを話すと、粉屋の社長は強く否定していた。「その金額だったら、私の方が買いたいぐらいですよ」と。 |
私は国産主義 使用する材料は出来る限り国内産のものを、と思ってきた。全粒粉も含め、小麦粉は内麦。スイートコーンも国産で。レーズンやゴマも、もし安いのがあればね。
以前は種類も生産量も少なかった内麦が、このところどんどん増えている。天然酵母系のパン屋が多くなったからだろうか。 内麦はグルテンが少ないからパンには向かないと、つい最近までよく言われていた。いまだにそう思っている人が多いかも知れないが、違うと言いたい。ミキサーを使わずに手捏ねで、しかも無添加で作っても、ふわふわパンが焼けるようになった。 第二次大戦後、学校給食がオールパン食になり、欧米化とともにパン食文化は栄え、国の減反政策と相まって、稲作をはじめとする日本の農業は衰退の一途をたどった。 私の周りにも「パンが大好き」という人は多く、私にとっては喜ばしいのだが、実のところ私自身は「ごはん党」で、専らパンは好奇心で食べているのだ(パン屋での仕事中の会話の一つに、「あなたはパン党? ごはん党?」っていうのありませんか)。 そして、ポストハーベストの問題から始まって、昨今は食の安全がクローズアップされ、国産志向は急激に高まったといえよう。国産イコール安全、とは言えないだろうが、日本の農業が豊かになり、自給率が上がることが悪いわけはない。 であるがゆえに、私は国産材料を使う。内麦も、産地、銘柄ともに増えてきた。農業に従事はできないが、そのかわりに仕事でも私生活でも、日本の農業を応援しようと思っている。 |
自慢のパウンドケーキ 冒頭で触れた高校の同期会での先生へのおみやげ(パウンドケーキ)に話は戻る。
くるみ&バナナ、アールグレイ、プルーン、抹茶&大納言、くるみ&レーズン、ブラウニー、の6種を自宅のデロンギ社製の小さなオーブンで焼くのは1日仕事だった。 ベーキングパウダーは使わず、メレンゲのふくらみで、さっぱり味のパウンドケーキは、私の主力製品のひとつ。 近所の人気洋菓子店より美味しく、パン屋だから安い!ソーセージや野菜を入れた、甘くないパウンドケーキもいいナァ・・・。 自営業の知人に言わせると、開業前の、あれこれ考えている時が一番楽しい、のだそうである・・・。 (つづく) |
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