記事の閲覧
| <<戻る | 写真をクリックすると拡大写真が見られます。 |
| 連載／2022年9月号 |
2023年11月18日から、発行から１年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| パンの原材料の値上げラッシュに、あれよこれよと知恵を絞るリテールベーカリー - 普通のパン屋さんが普通に頑張れば繁盛出来る話(63) | |||||||
|
|||||||
|
本誌の先月号と今月号で、パンの原材料の値上げの状況についての取材を行いました。２カ月にわたって、８軒のベーカリーに６つの同じ質問をぶつけてみました。
「ありとあらゆるものが値上がりしていて、かつてないほどに深刻な状況だ」との認識で取材したすべてのベーカリーが一致し、特に小麦粉、油脂、外国産のドライフルーツやナッツなどの値上がりが激しいとの回答が目立ちました。多くの店では、今年すでに値上げを１回実施し、年内にさらにもう１回値上げを考えていました。 東京・三鷹市の「トーホーべ―カリー」は、今年１月に商品全体の７、８割を３％〜10％値上げしました。今年２回目の値上げも予定していますが、今回は一斉に行うのではなく、まず食パンやブレッド系など金額的に値上げ幅の大きいものを先に上げて、菓子パンや焼き込み調理パンなどを後回しにしていく流れだそうです。値上げする商品は、例えば、強力粉を、原価がほぼ変わらない範囲でグレードを上げるなどして、付加価値を高める努力をしているそうです。 奈良県香芝市の「ｐａｎｙａ ｊｕｎｙａ」も、値上げをすると同時に、商品の価値を上げる努力をしていきたいといいます。具体的には、地元農家産の小麦を使った商品を作るなどして、商品の付加価値を増やす努力をしています。 東京・大田区の「ベーカリーカルテット」は、今年春に食パン類の５、６品目を５％位値上げしましたが、販売個数も売上も減ったので、一旦値上げは中止することにしたそうです。一部の商品だけ値上げすると、それらの商品が敬遠されてしまうのでしょうか。残りの商品は、秋から冬にかけて、物価の状態と実質賃金の伸びを見てから値上げする予定だそうです。 埼玉県川越市の「川越ベーカリー楽楽」も、今年の１月に一度値上げし、さらに今年中にもう一度値上げを予定していますが、売り上げに影響が出るのではないかと心配しています。ただ、今であれば、社会情勢についての報道もあるし、消費者の値上げについての理解を得やすいのではないかと考えているといいます。 神奈川県横浜市の「ボンヴィボン」は今年に入り４月頃に一律５％程度の全商品対象の値上げを実施しました。その際に値上げ率を各商品によって変えず、店全体の利益率を考えた上で一律の上げ率にしました。レジの混乱を防ぐためだそうです。10月には今年２回目の値上げを考えていて、今度は各原材料の市場価格を考慮した上で商品ごとに値上げ率を変え、さらに先を見据えて若干高めに上げるといいます。根底には、今こそが適正価格を浸透させるためのいい機会だという考えがあります。 千葉県我孫子市の「水辺のサフラン 我孫子店」は、昨年９月に千葉県柏市から移転してオープンしましたが、その際に移転前の店で売っていた商品のほぼ全てを平均で10％程度値上げして新店に持ってきました。新商品に関しては、原材料価格に見合った売価で値付けをしました。 東京・国立市の「プチ・アンジュ」は、昨年に２回値上げし、今年も３月と７月に値上げしています。７月の値上げは、全商品の４割程度のみで、残りの６割を今年中に値上げするかどうかは、これ以上上げると、いよいよ売上に影響が出るのではないかと、迷っているといいます。 埼玉県入間市の「パンジャ」は今年に入って５月に、３分の１位の主に定番商品の値上げを実施しました。値上げ幅は一律ではなく品目ごとに変えました。食パン、カレーパンなど販売数の多い定番商品の価格を使用材料の上げ幅に合わせて変えました。 店によって状況は様々ですが、皆知恵を絞って戦いを続けています。（ＲＯ） |
|||||||
2023年11月18日から、発行から１年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
