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| 連載／2022年1月号 |
2023年11月18日から、発行から１年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| 原価を定量的に正確に知ることが、ベーカリーの経営戦略を飛躍的に変え、利益を最大化させる - 普通のパン屋さんが普通に頑張れば繁盛出来る話(55) | |||||||
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当社はベーカリーのために開発した「原価計算女王」という原価計算ソフトを販売しています。ユーザーの方々と原価管理についてお話しさせて頂く機会も多く、今回はそんな中で私がお聞きした、原価管理の観点から捉えたベーカリー経営の方法論について書かせていただきたいと思います。
よくお聞きするのは、いいパンを作りたい思いとお客さんに喜んでほしい思いの両方が強くて、いい材料を使って製品を作り、お客さんの財布に優しい価格設定をして、後で苦労をしたという話です。要するに、適正な利益を確保できていない状態で販売を続けてしまうという失敗談です。 利幅が狭くても、作る手間がそれほどかからずに販売数が多ければ、経営的にＯＫな場合もありますが、やはりリテールベーカリーという業種に最適化された原価率というものがありますので、それを大きく超えた原価率では、遅かれ早かれ立ち行かなくなることが多いと思われます。 先日本誌が取材したあるベーカリーは、原価とのバランスを欠く価格設定をしてしまったため、出店時の平均原価率が40％以上とかなり高くなってしまったといいます。しかし、原価率の平均を引き上げていると思われた全体の２割ぐらいの製品は、同店の看板商品として、顧客にその特徴を地道に伝え、宣伝して、同ベーカリーなりのブランディングを徹底的に行った製品でもあり、販売数量が徐々に増えていきました。 そして、タイミングを見ながら何回かの値上げを実施した結果、今では同ベーカリーの屋台骨になっているといいます。 これらの２割の製品は、このベーカリーで主役を演じる製品であり、その購入者のほとんどがリピーターで、熱心なファンだといいます。何回かの値上げを経た現在も、こうしたリピーターが離れることはほとんどなく、これら２割の製品で、店全体の売り上げの６割を稼ぎ出しているそうです。 このベーカリーではこのことを教訓にして、主力商品を開発する際には、製品のイメージをクリアにした上で、最初に綿密なブランディング戦略を立てて、原価率の上限が40％というルールに則って、製品開発と価格設定を行っているそうです。 これら２割の製品を大黒柱にして、店をまわしている一方で、残りの８割の製品の原価管理もきちんとしています。その際に、原価率がかなり低いものから、ほとんど原価割れと言えるぐらい原価率が高いものまでを揃え、原価率の観点から、メリハリをつけることを意識しているといいます。 こうしたことを、正確な原価管理をせずに、感覚的に行って成功しているベーカリーもあると聞きますが、やはり、原価をきちんと数字で正確に管理していないと、細かなところで、ノウハウが蓄積されませんので、危ういのではないかと思います。 パン作りの実技では、同じ動作を何回も繰り返し、感覚的に体に染み込ませていくことで、色々な製パンの技を習得するのが一般的ですが、いったん習得した技を、製パン理論に照らし合わせて、捉え直してみることで、実技の繰り返しだけでは気づくことができなかったことが見えてくるということがあると思います。 感覚的に捉えた原価率をベースに、感覚的に構築していた店のオペレーションの構図が、原価計算ソフトなどを使って、原価を定量的に把握しそれまでは気づくことができなかった様々な法則が見えてくることで、さらに進化したものになるということは多々あると思います。 例えばですが、「商品Ａと商品Ｂは、原価率がめちゃくちゃ高いけれど、客寄せ的な商品だし、これらがあることで、ほかの商品も売れると考えれば、必要な商品だ」という認識が、「商品Ａは原価率が５割で、価格自体も高く数はそれほど出ないし、話題作りの商品と考えれば今のままでいいが、商品Ｂは原価率が38％で売価もやや高いが、そこそこ数がはけているので、もし原価率を変えずに売価を少しだけ下げられれば、今の倍は売れるはずだ」という確信に変わるかも知れません。（ＲＯ） |
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