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| お店拝見／2019年11月号 |
2023年11月18日から、発行から１年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| 洗練した製品をどこよりもおいしく - ｂｏｕｌａｎｇｅｒｉｅ ＪＯＥ | |||||||||||||
「とん吉」「うお吉」「たつ吉」と、男３人兄弟に付けられたような名前。これらは東京・江戸川区のベーカリー「ｂｏｕｌａｎｇｅｒｉｅ ＪＯＥ（ブーランジェリージョー）」に並ぶコッペパンサンドの商品名だ。「とん吉」（税抜２２０円）はロースかつ、「うお吉」（税抜２４０円）は揚げたタラの切り身、「たつ吉」（税抜２２０円）は竜田揚げが、それぞれコッペパンに挟んである。 「『あしたのジョー』に出てきそうな名前を付けています」と言う店主の間々田雄一さんは、ボクシングが題材の漫画「あしたのジョー」に憧れ、プロボクサーとして活躍した経験の持ち主。店名の「ＪＯＥ」は言うまでもなく、「あしたのジョー」に因んで名付けた商品名は、ほかにもある。 「今は販売していませんが『白木家のラスク』や、『葉子のシフォンケーキ』もそうです。気付いてくれたお客様と、話ができるときは嬉しいです。ファンの方がわざわざ来てくださることもあります」（間々田さん） 作者のちばてつやさんからは直々に手紙をもらった。 「嬉しかったですね。いつかお会いできたらと思っています。商品名については喜んでいただき、承諾も得ています」（間々田さん） プロボクサーからパン職人に転向したのは24歳のとき。ホテルに就職し５年働いた。その後個人店でも修業した。 「働いたホテルベーカリーで当時作っていたのは、レストランの食事に出すためのパンが主でした。それらは焼きたてはおいしいけど、冷めるとそうでもないのもあって。だけど、街のベーカリーでは、時間が経ってもおいしくないといけません。修業先で学びたいことは変わってきますよね。開業前に知人の店で働かせてもらったときは、パンの作り方というよりも、個人店経営の仕方について学ばせてもらいました」（間々田さん） 店内に入ると、入り口のすぐ横にオーブンで焼き上げる場所があり、その前の台に「めろんぱん」「くりーむぱん」「あんぱん」が並ぶ。目に入りやすい場所に並び、税抜１５０円の均一価格で揃う点などから、３アイテムの定番のゆるぎなさが感じられる。 「変わったものではなくて、どこにもある同じもので勝負したいんです。メロンパンが食べたいと思えば、ＪＯＥのメロンパンが買いたいなと思ってもらえるような」（間々田さん） 特にメロンパンが好きという間々田さんは、「見た目はおいしそうなのに、食べてみるとパサついていることが結構ある」と言い、同店の「めろんぱん」は、中はかなりリッチな配合の生地でしっとりさせ、皮はクッキー生地でさくっとした食感になるよう作っている。メロンパン好きだからこそ、メロンパンの特徴を活かしておいしく作る。「中にクリームを入れたりはしない」（間々田さん）そうで、創作しておいしくするようなことはしないのだ。これらの菓子パンは、平日４回、土日は５〜６回焼く。 「焼きたてにこだわっている訳ではないのですが、いい状態で食べてもらいたいと思っています。乾燥しないように冷めたら袋に入れるのも大事ですね」（間々田さん） | |||||||||||||
平日は約50品目並ぶ。土日は、平日は並ばない「カヌレ」（税抜２６０円）やサワー種を使ったドイツパンなどが加わるため、約60品目になる。 「増やしたくないんです。開業するときから、メロンパンなど定番の菓子パン、ハード系、食パン、クロワッサンやブリオッシュ、あとは昔ながらのコッペパンといった、どこにでもあるもので勝負したいと思っていましたから」（間々田さん） バゲットは、先端が尖った形の「バゲットＪＯＥ」（税抜２８０円）と、尖っていない「バゲットミュール」（税抜２６０円）の２種類が、２００８年の開業当時からある。10年以上作り続けてきた中で、外麦から国産小麦４種類のブレンドに使用する粉が変わった。また、当初は一日10本程度だった製造量が、朝と昼と昼過ぎの３回、週末は計36本に増えた。 「パンを食べる側から作る側に変わってやってきた中で、形によって全然味わいが違うということを思いましたね。その違いをお客様にも楽しんでいただきたくて、バゲットを成形を変えて２種類、作っています」（間々田さん） 先の形だけでなく、クープの入れ方も異なる。「バゲットＪＯＥ」は全体に大きく一本入れることで、太い部分の食感が軽くなる。「バゲットミュール」は全体に均等に７本入れることで、甘みとうま味が噛み締めるごとに味わえるような特徴が出るという。 「『バゲットＪＯＥ』は場所ごとに食感が違うので玄人向けで、『バゲットミュール』はどこを食べても同じような食感なので、カナッペに最適だと思います。食べ比べで２本購入してくださる方もいますよ」（間々田さん） 食パンは、「ミルキーな食パンが好き」（間々田さん）で、乳製品をたっぷり使った「北海道ミルク食パン」（税抜３００円）と、北海道産小麦「キタノカオリ」を使用した「キタノカオリ湯種山食」（税抜３００円）がそれぞれ山型と角型２種類あり、合計４種類が主力となっている。そのほかに、「マロン」「シトロン」「黒糖」などと、日替わりの菓子パン風に楽しめる食パンがある。 北海道産小麦「キタノカオリ」を使用した食パンは、４年前から販売している。だが、今年収量不足で入手困難となり、全粒粉なら入ってくるという事態になった。そのため、「キタノカオリ」全粒粉に、北海道産小麦「ゆめちから」をブレンドして使うこととなり、レシピも変えた。 「できるだけ以前と同じ味に近づけるために、製法を全く変える必要がありました。湯種製法に行き着き、もちもち感と粉の風味を引き出せるように作っています」（間々田さん） 今後の展望としては、「イートインスペースをつくりたい」と間々田さん。 「自分が客としてベーカリーに行ったときに、イートインがあるといいなと思います。遠くから来てくださった方にも、すぐに食べていただきたいですし、おいしければ帰りにまた買っていただけますから」（間々田さん） SHOP DATA 店名：ｂｏｕｌａｎｇｅｒｉｅ ＪＯＥ 住所：〒１３４‐００８５ 東京都江戸川区南葛西２‐２３‐１０ カーサデエスペランサ１Ｆ 電話：０３‐５６６７‐５４９０ 営業時間：午前８時〜午後６時（売切れ次第閉店） 定休日：月曜、火曜 品揃え：約５０品目（土日は約６０品目） スタッフ：製造常時４〜５人、販売常時１〜３人 店舗面積：売り場約５・５坪、厨房約１２坪 日商：平日約２０万円、土日約４０万円 | |||||||||||||||||||
| この記事の読みどころ
●「あしたのジョー」に因んだ店名と商品名で、店を印象付ける。
●あんパン、クリームパンなど、どのベーカリーにもある馴染みの深い製品を大切にする。 ●パン職人として、パンを作る中で発見した様々なことを、実際の製品やＰＯＰを通してわかりやすく表現し、それを顧客と分かち合う。 ※あくまで編集部からの提案です。このほかにも様々な読みどころがあると思いますので、読者の皆様の視点で、エッセンスを抽出してください。 |
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