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お店拝見／2007年8月号

2023年11月18日から、発行から１年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。

生活の中でパンを意識してほしい - Boule Beurre

午前１１時の開店時間が近づくと、パンを求めて人が集まってくる。みんな店内を覗きこんで、目当てのパンがあるかどうかを確認。

住所：東京都八王子市八日町10-19 みずき通り商店街
電話：042-626-8806
営業時間：午前１1時～午後6時（パンがなくなるまで）
定休日：火、水曜日（月１回の月曜日の不定休あり）

借金をすると、本意でないパンも・・・

オーナーの草野武さん（左）と尚子夫人

深みのあるレッドとブルーの対比が印象的な店構え。

入り口のドアを開けるとすぐ正面に、対面販売用のショーケースがある。

牛乳と練乳を使った「ミルヒ」。原型はドイツのミルヒブロートだ。

　東京・八王子市にあるＢｏｕｌｅ　Ｂｅｕｒｒｅ（ぶーるぶーる）は、売り場面積およそ２・２坪の小さなベーカリーだ。地元のみずき通り商店街の一角に昨年２月にオープンし、もうすっかり馴染みのベーカリーになった。開店時間の午前１１時が近づいてくると、パンを求めて人が集まってくる。開店時には、いつも十数人が並んでいるという。
　品揃えはおよそ４０品目。オーナーの草野武さんが丹精こめて作ったパンを尚子夫人が、対面で販売する。
　草野さんは、もともとは広告制作会社の社員だった。フランスに行ったときに食べたパンのおいしさに感動し、ブーランジェに転身したいと思うようになった。
　パンの専門学校で学び、その後、３軒のベーカリーで修業を積んだ。そのうちの１軒は、草野さんが「自分が作るパンはこれだ」と決めていた、茨城県水海道市（現常総市）にあったパンダーチザンニコラ（現在は同守谷市に移転）だった。草野さんが現在製造販売しているパンの多くは、ここで教わったものが原型になっている。
　草野さんのモットーは、自分がおいしいと思うパンしか作らないことだ。最初は長期戦を覚悟していた。
　「町の人たちに自分のパンを気に入ってもらえるようになるまで、ある程度時間がかかると思っていたんです。だから当面の運転資金も十分キープしていました。ニコラの杉山さんから『借金をすると、返済するために、本意ではないパンも作らなければならなくなるから、無借金がいい』といわれていたので、開店費用は７００万円に抑えて、借金はしませんでした」

思ったより早く、リピーターが増えた

「リスティック」の生地にマカダミアナッツとホワイトチョコを練り込んだ「ブラン」

パン・ブリオシェの生地を使ったメロンパンは３種類あって、色鮮やかだ。

「リスティック」の生地にドライクランベリーとくるみを練り込んだ「フリュイ」

冷蔵で１２時間発酵をとり、小麦粉の味を最大限に引き出した「リスティック」

バリッとした食感が特徴の「ぶーるぶーる」

　いざ蓋を開けてみると、見る見るうちにリピーターが増え、すぐに目いっぱいの状態になってしまった。　「ここまで早く皆さんに受け入れていただけるとは正直思っていませんでした」（草野さん）
　今年３月に、空いた隣の店舗も借りて、店を大きくした。現在の平均日商はおよそ１０万円という。
　ぶーるぶーるでは、パンを対面で販売する。ショーケースには、草野さんが作ったパンが少し誇らしげに並んでいた。　「ミルヒ」（３２０円）は、牛乳と練乳を使った商品で、原型はドイツのミルヒブロートだ。水は使用しない。「外側がザクッとしていて、中がふわっとして、食感が面白いと思います」と草野さんはいう。
　「メロンパン」（レシピを１３ページに掲載）は、「はなみずき」「シナモン」「抹茶チョコ」の３種類（いずれも１２０円）。「はなみずき」は、プレーンのメロンパンで、同ベーカリーがあるみずき通り商店街に因んで名づけたもの。「シナモン」は、上生地にシナモンパウダーを、「抹茶チョコ」は、上生地に抹茶パウダーとチョコチップを練り込んだ商品だ。中のパンの部分はパン・ブリオシェの生地を使用。上生地のザクザク感と中のパンの部分のしっとり感の対比が印象的だ。
　「リスティック」（２００円）は、イーストの量をおさえて、冷蔵で約１２時間じっくりと発酵をとり、小麦粉の味を最大限に引き出した商品だ。
　「ミキシングで生地を充分作ってしまい、パンチは捏ね上げ直後と、成形前の２回しか行いません。生地に手が触れる機会を少なくするためです」と草野さん。「無塩バターを塗って食べるとおいしいですよ」と提案しているそうだ。
　「フリュイ」（２３０円）は、「リスティック」の生地に、ドライクランベリーとくるみを練り込んだ商品。クランベリーの酸味が「リスティック」と合う。
　「ブラン」（２５０円）も、「リスティック」の生地を使用。マカダミアナッツとホワイトチョコを練り込んでいる。マカダミアナッツを使ったパンのコンテストに出品して入賞した製品だ。
　「ぶーるぶーる」（１２０円）は、バリッとした食感を打ち出したクロワッサンだ。生地自体にバターを多めに練り込み、２つ折り１回３つ折り２回と、折り込みの層を少なくして、最終生地厚も４ミリと通常より厚めにすることで、バリッとした食感を出しているのが特徴だ。
　草野さんは「パンを生活の中で意識してもらえるように、提案の場として、カフェをやれたらいいなと思っています」と今後の抱負を語った。

イメージを鮮烈に描く

取材メモ　ＪＲ中央線・八王子駅から５分ほど歩いたところにあるみずき通り商店街の入り口からすぐの場所に、Ｂｏｕｌｅ　Ｂｅｕｒｒｅはあった。立ち並ぶ多くの店の中で、そこだけが独特の雰囲気を発していて、一種の品格のようなものが、人々の心を惹きつけているように思えた。センスのいい店舗のデザイン、陳列されたパンの美しい形と色、一所懸命にパンを焼くオーナーの姿・・・。店が発するこうした好ましい要素は、「こうありたい」というイメージを鮮烈に描くことができるオーナーの強い思いから生まれてくるのに違いない。

Ｂｏｕｌｅ　Ｂｅｕｒｒｅのメロンパン

メロンパン各種（左から、「はなみずき」（プレーン）、「抹茶チョコ」「シナモン」）。

　パン・ブリオシェの生地を使用。上生地は、パータ・シュクレを使用したフレンチテイストのメロンパン。
【配合グラム】
強力粉（スーパーカメリヤ）‥‥‥‥‥‥‥‥‥１００
グラニュー糖‥‥‥‥‥２０
塩‥‥‥‥‥‥‥‥１・６
生イースト‥‥‥‥‥‥５
バター‥‥‥‥‥‥‥‥２０
水‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥４６
脱脂粉乳‥‥‥‥‥‥‥７
冷凍加糖卵黄‥‥‥‥‥２０
【工程】
ミキシング‥‥‥Ｌ３分Ｈ５分（バター投入）Ｌ３分Ｈ４分
捏ね上げ温度‥２２～２３度Ｃ
一次発酵‥‥‥‥
‥‥‥‥‥冷蔵庫でおよそ１０時
間、室温で２時間
分割‥‥‥４０グラム
ベンチタイム‥‥‥
‥‥‥‥‥１５分
成形‥‥‥‥‥
‥生地を丸め直して、円盤状に伸ばした▼上生地
（４０グラム）をかぶせる
ホイロ‥‥‥‥３２～３３度Ｃ３０分
焼成‥‥上火２２０度Ｃ下火１８０度Ｃ９分
▼上生地
【配合グラム】
薄力粉‥‥‥‥‥‥６９３
バター‥‥‥‥‥‥３００
グラニュー糖‥‥‥‥３６９
生クリーム‥‥‥‥‥‥９３
冷凍加糖卵黄‥‥‥１６２
ベーキングパウダー‥‥‥１０
【作り方】
(1)バターとグラニュー糖を白っぽくなるまですり合わせる
(2)[1]に冷凍加糖卵黄を加えて混ぜ合わせる
(3)[2]に生クリームを加えて混ぜ合わせる
(4)[3]に薄力粉とベーキングパウダーを加えてさっくり合わせる
(5)[4]を冷やす
※「抹茶チョコ」は抹茶とチョコレートチップを混ぜ合わせた上生地を使用。
※「シナモン」はシナモンパウダーを混ぜ合わせた上生地使用。

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