売り場に陳列されたパンは、どれもしっかりと焼き込んであって、焼き色が濃い - パン ド ナノシュ - ブランスリー電子版


ブランスリーアーカイブ(創刊号からの全記事)
記事の閲覧
<<戻る写真をクリックすると拡大写真が見られます。
お店拝見／2007年4月号

2023年11月18日から、発行から１年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。

売り場に陳列されたパンは、どれもしっかりと焼き込んであって、焼き色が濃い - パン ド ナノシュ

クラシックな雰囲気を醸し出す店構え
「まず、自分のライフスタイルがあって、それに従って、店を経営する」。そんな印象を受けるベーカリーが、湘南の海の近くにある。「パンが好きで好きでしようがない、というわけではありません」。オーナーのこの言葉の意味が分かったような気がした。

住所　神奈川県茅ヶ崎市共恵1-7-1伊沢ビル1階
電話　0467-86-8757
営業時間　午前９時〜午後８時
定休日　日曜日
最寄り駅　ＪＲ東海道本線・茅ヶ崎駅（徒歩約３分）
店舗面積　約１７坪（厨房約１１坪、販売スペース約６坪）
客単価　６００〜６５０円
日商　月〜木３０万円、金、土３３万円
スタッフ　販売常時３人、製造常時７人



入り口のドアに向けてオーブンを設置

看板商品の「大納言」を手にオーナーの関谷勝美さん


ほとんどが予約で売り切れてしまうという看板商品の「大納言」


いきいきと働くスタッフたちが勢揃い。中央が関谷勝美オーナー


焼き上がったパンを置いておくラックには予約のメモがたくさん貼ってあった
　ＪＲ東海道線・茅ヶ崎駅から歩いて約３分、駅前の商店街の一角に、パン ド ナノシュはある。
　観音開きの大きな木製の扉や、木製の窓枠などで、正面の外観は構成されていて、シックなイメージだ。ドアを開けると、左手の壁に沿ってパンの陳列棚があって、正面の壁沿いにＬ字型に続いている。壁は白のベースの上に特殊な塗料を塗って、独特のニュアンスが出してあった。
　オーブンは、正面がまっすぐ入り口のドアに向いた形で、厨房との境目の位置に設置されていて、まるで、売り場で顧客と共にパンを焼いているような一体感がある。
　入り口のドアに正面を向けるために、オーブンは、壁面に対して少し斜めに設置されていて、オーナーの関谷勝美さんは「スペースの効率は悪くなるのですが、それ以上にお客様に向けてオーブンを置くことが大事だと思ったんです」と話す。
　売り場に陳列されたパンは、どれもしっかりと焼き込まれていて、焼き色が濃い。それが、微妙な模様がついた薄茶色の壁や、天井に渡されたこげ茶色の梁などと絶妙に響き合う。
　まるで、アンティークショップのような雰囲気だ。　「私は、しっかりと焼き込んだパンが好きなんです。その方がよく噛んでもらえるので、パンの本当のおいしさを味わってもらえると思うんです。最初の頃は、焦げているのではないか、などとお客様から言われたこともありましたが、『うちのパンはこういうパンなんです』と説明してきました。今では、焼き込んだパンのよさを、多くのお客様にわかってもらえるようになりました」（関谷さん）



湘南の海の近くでパンを作りたかった

レジの後ろの棚には、食パンがたくさん並んでいた。注文を受けたら、好みの厚さにスライスして、袋に入れる。


壁は白のベースの上に特殊な塗料を塗って、独特のニュアンスが出してあった


「シュガーラスク」「ガーリックラスク」などのラスク類も豊富。


売り場は、厨房との一体感を演出している。


厨房はおよそ１１坪の広さ。スタッフらがてきぱきと働いていた。
　関谷さんは、実家がベーカリーで、父親のパンを作る姿を見ながら育った。サーフィンが好きで、湘南の海の近くで、飲食業で生計をたてたいと思っていた。数軒のベーカリーで、パンの修業を重ねた。飲食店で働いたこともあったが、結局ベーカリーで身をたてようと決心した。
　ちょうどその頃、「サーフィンをしながら、パンを作りたい」という願いが実現できそうな物件が見つかり、２０００年４月にベーカリーをオープンした。
　「最初は、妻と２人でやるつもりでした」と関谷さんはいう。しかし、ふたを開けてみると、予想をはるかに超える売れ行きだった。
　「オープン前の宣伝は一切しなかったのですが、予想以上に多くのお客様に来ていただけました。急きょ応援を頼んだのですが、とにかく忙しくて、パンが焼き上がって、窯から出すと、お客様は天板から直接とっていくという状態でした。結果として、常に焼きたてを提供できるということになりました」
　オープン初日の売上は約３０万円だった。７年弱が経過した現在も日商はほぼ同じだという。
　関谷さんのパン作りのモットーは「常に基本に忠実であること」だ。すべての商品について、基本どおりに丁寧に作ることを常に心がけているという。
　それは、今もスタッフと共に出かけるサーフィンでも同じこと。
　「湘南の海の近くでベーカリーをやりたかった」
　関谷さんは取材の最後に改めてそういった。店から１０分ほど歩くと、そこはもう海だ。



どの商品も、その表情から、ていねいに作られていることが伝わってくる

看板商品「大納言」はほとんどが予約完売

フランスパンの生地を楕円形にのばして、チーズや、茅ヶ崎で獲れたたたみいわしをトッピングして焼成した「ＯＨ！茅ヶ崎」（左）。右は「桜えびのフーガス」


「クロワッサン オ バタール」は、クロワッサンとフランスパンがドッキングしたユニークな商品


ハチミツや天然酵母を使用した食パン生地を使った「田舎パン」（右）と、田舎パンの生地にりんごと紅茶の葉を練り込んだ「りんごと紅茶の田舎パン」（左）
　「パン ド ナノシュ」では、入り口のドアに向いたオーブンから次々とパンが焼き上がってくる。
　「人気商品は」との質問に、関谷さんがまっさきに口にしたのは、「大納言」（３１５円）だった。
　ワンローフ型の食パンで、濡れ甘納豆が生地に巻き込んである。
　生地自体には、油脂も折り込んである。パンのさくっとした食感と、濡れ甘納豆、トッピングされたアーモンドスライスとの相性が絶妙だ。
　ほとんどが予約で完売してしまう同ベーカリーの看板商品。
　「ベラベッカ」（２９４円、レシピを次ページに掲載）は、くるみ、カシューナッツ、ピーカンナッツ、ピスタチオ、レーズン、オレンジピールなどと、フランスパン生地とを混ぜ合わせた生地を使用した商品で、独特のかりっとした食感が特徴だ。
　パン生地にナッツ類やドライフルーツ類を練り込むというより、ナッツ類やドライフルーツ類にパン生地を混ぜ込むという感じだ。
　「クロワッサン オ バタール」（３１５円）は、クロワッサンとフランスパンがドッキングしたユニークな商品だ。５ミリ厚のクロワッサンシートをおよそ２センチ四方にカットしたもの１３０グラムを、２００グラムのフランスパン生地で包み、バタール形に成形、上面にカットを入れて焼成する。
　「ＯＨ！茅ヶ崎」（１８９円）は、フランスパンの生地を楕円形にのばして、チーズや、茅ヶ崎で獲れたたたみいわしをトッピングして焼成した商品。「酒のつまみにも最適」とＰＲしていた。
　たたみいわしの代わりに桜えびを使った「桜えびのフーガス」（１８９円）もある。
　小型の「田舎パン」（１０５円）も人気だ。ハチミツや天然酵母を使用した食パン生地を使っている。
　「りんごと紅茶の田舎パン」（１２６円）は、田舎パンの生地にりんごと紅茶の葉を練り込んだ商品で、こちらも人気商品のひとつ。
　この他にも、イチジク入りの生地に白ごまをトッピングした「パン オ フィグ」（２１０円）、ブラックオリーブとバジルを練り込んだ「パン　オ　
オリーブ」（２１０円）、ハーブとドライトマトを練り込んだ生地を馬蹄型に成形した「ハーブ＆トマト」（１３６円）、ブラックオリーブや、かぼちゃ、トマトなどが入った「シュープリーズ」（２３１円）などがあって、品揃えは全部でおよそ１３０品目だ。
　どの商品も、その表情から、ていねいに作られていることが伝わってくる。



ベラベッカのレシピ

くるみ、カシューナッツ、ピーカンナッツ、ピスタチオ、レーズン、オレンジピールなどと、フランスパン生地とを混ぜ合わせた生地を使用した「ベラベッカ」
　【材料グラム】
ラム酒漬けドライフルーツ（レーズン、レモンピール、オレンジピールをラム酒に漬け込んだもの）
‥‥‥‥‥‥‥‥‥２４０
アーモンド（ホール）‥１５０
くるみ‥‥‥‥‥‥３７０
ピスタチオ‥‥‥‥‥‥６０
カシューナッツ‥‥‥２２５
ザラメ糖‥‥‥‥‥１００
インスタントコーヒー‥‥１０
ナツメグ‥‥‥‥‥‥０・９
▼フランスパン生地‥５００
　【作り方】
(1)全材料をボウルに入れて、手で混ぜる（ドライフルーツ、
ナッツ類がフランスパン生地に対して多いので、まとまりづらいが、全体がまとまるまでよく混ぜる）
(2)全体がひとまとまりになったら、１時間程度休ませ、１２０グラムに分割し、厚さ２センチ程度の短冊状に成形する（ばんじゅうの内側のＬ字の部分に生地を押し付けて、スケッパーで形を作るようにするとうまくいく）
(3)[2]を２０分程度休ませ、シロップを塗る
(4)[3]を上火１７０度Ｃ下火１５０度Ｃのオーブンで約２０分間焼成する
(5)[4]をいったん窯から出して再びシロップを塗り、再度同じ温度で２０分間焼成する
(6)[5]を窯から出して再びシロップを塗り、同じ温度でさらに２０分間焼成する
▼フランスパン生地
　【配合％】
スワッソン（フランス産小麦の粉）‥‥‥‥‥‥‥‥‥７０
オーベルジュ（フランスパン用粉）‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥３０
モルト‥‥‥‥‥‥‥０・３
自然発酵種‥‥‥‥‥１５
インスタントドライイースト‥‥‥‥‥‥‥‥‥０・６
ゲランドの塩‥‥‥‥２・２
　【工程】
ミキシング‥‥‥‥‥‥（粉、モルト、水を投入）Ｌ２分（オートリーズ３０分）（自然発酵種投入）Ｌ１分（インスタントドライイースト投入）Ｌ２分ＭＬ１分（塩投入）ＭＬ３分
フロアタイム‥‥‥‥‥‥１時間２０分（パンチ）４０分
　※フロアタイム終了後、冷やしておく。




「お茶あんぱん」（１２６円、左）と「あんぱん小倉」（１０５円、右）
イチジク入りの生地に白ごまをトッピングした「パン オ フィグ」（右）とブラックオリーブとバジルを練り込んだ「パン　オ　オリーブ」（左）

ハーブとドライトマトを練り込んだ生地を馬蹄型に成形した「ハーブ＆トマト」（右）とブラックオリーブや、かぼちゃなどが入った「シュープリーズ」（左）		 -

原価計算女王
原価計算女王

2023年11月18日から、発行から１年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
月極購読のすすめ

今月の公開記事

  1. コロナ禍後のベーカリー - 消費者アンケート
  2. 調理スペースを充実させ、パンの具材を自家製造に - パンの家 あ・ら・もーど
  3. これまで半日かけていた仕事がChatGPTで30分でできたならばどうだろうか？ - 普通のパン屋さんが普通に頑張れば繁盛出来る話(90)
    4. 掲載から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文を公開しています。
    ブランスリーアーカイブ
ブラ立ち読み
(記事の無料メール配信)
詳細はこちら
記事のテーマ募集